第4話

・・・か の じ ょ の 有 無 !


ヤバいヤバい忘れてた。聞いてないよ。

私はスマホを取り出すとショートメールを柚原さんに送った。

『私とご飯行ったら彼女に怒られませんか?』と。


暫く美雨と話をしてお昼に会う約束をしてそれぞれ講義へと向かった。


そして、お昼にカフェテラスでカレーを食べていたら丁度良くショートメールを受信したので恐る恐る私は開いた。


『恥ずかしながら2年位彼女は居ないので怒られる心配はないですね(笑)』


「やったぁ!彼女居ないって!」

「そーかい、良かったね。」

私は嬉しくて笑顔だが、美雨は面倒くさそうな顔をしていた。


「まずはご飯行って距離縮めていきなさい。間違ってもホテルなんて行っちゃ駄目だよ?」

「……はぁーい。」


いつ行けるかわからない食事の約束にウキウキしながら『良かった、安心しました。食事行けるの楽しみにしてますね♪』と返しておいた。



ーーーーーーーーーーーー



それから定期的にショートメールをやり取りして、ラインのIDを教え合い連絡手段が簡単になった。

柚原さんから『彼氏に怒られない?』と来たため、ちゃんとフリーである事は伝えてある。


たまに朝に会えるとバス停まで一緒に歩くようになって仲良くなったと私は思っていた。


そして食事の約束の当日。

時刻は午後六時半過ぎ。

少し前に残業で1時間遅れると連絡があった為、私はコーヒーショップで時間を潰していた。

(約束は七時だから八時になるって事だよね)

ホットカフェラテを飲みながら持っていた本を読む。


本に夢中になっていたらふと人影が有ったので顔を上げると目の前に奏汰が座っていた。


「久しぶり、なぁ、俺達やっぱりやり直さねぇ?」

「いきなり何?やり直しません。そもそも始まっても無かったじゃん。セフレ扱いした癖に。」

「悪かったって、だからちゃんと付き合わねぇ?」


今何時だろう?冷めてしまったカフェラテを一口飲んで腕時計を見ると七時半を回っていた。

多分、彼女に振られたのだろう。

だから私に言い寄ってるのだ、勿論好きだからじゃなくて身体目当てだろう。


「何度も言うけど奏汰とは付き合わない。もう好きじゃない。私これから人と会うから、さよなら。」


本を片付けて半分ほど入っていたカフェラテを飲み干して返却口に片付け店を出る。

慌てた様に奏汰が追いかけて来た。


「なぁ、待てよ。俺の事好きって前に言ってただろ?!」

スタスタ歩いていた私を追いかけて腕を力強く掴んでくる。

「痛っ…、前はね!それにもう、私好きな人いるから!!」


腕を振りほどいて前を向いて走ろうとしたら人にぶつかった。

慌ててその人を見たら……柚原さんだった……。

奏汰と居る所を見られて誤解されると思うとサーッと血の気が引いた。


「俺の彼女に何か用ですか?困ってるみたいですけど?」

「っ!!柚原さん!」

守る様に後ろに隠してくれて奏汰と私の間に立ってくれた。


「彼氏出来たならそう言えよ!もう会いに来ねぇよ。」

そう言って奏汰は柚原さんを一睨みしてから去って行った。


「柚原さん……今のは」「咄嗟に彼女って言ってごめん、元彼とトラブってるように見えたから」

奏汰の事を説明しようとした私を遮り柚原さんがそう告げて来た。


(そっか、同じアパートだから奏汰が出入りしてたの見た事あるんだ。)


納得して話を合わせておく。

「元彼です、ちゃんと復縁断りました。私、好きな人いるって奏汰に言いました、誰だか分かりますか?」


恐る恐る上目遣いで見上げれば少し驚いた様な困った様な顔で柚原さんに見つめられる。


「ご飯の後、俺から言うつもりだったんだけど……」

そう前置きして柚原さんが優しく抱き締めてきた。

「聖華ちゃんの事が好きです、付き合って下さい。」

「はい!よろしくおねがいします。」


そろそろと抱き締め返して返事をする。

幸せに浸りたいと顔の位置を変えるためモゾモゾと動いていたら柚原さんの耳が赤いのが見えた。

目を閉じて数秒間抱き合った後、柚原さんから離れた。


照れ隠しの様に少し笑い「ご飯行こうか?」と手を差し出してくれる。

その手に自分の手を重ねて初めて手を繋ぎながら隣を歩いた。


「いつから私の事好きなんですか?」

ケホッと慌てた様に柚原さんが咳して「……ご飯食べてからにしよう?」

と言うのでファミレスまでの道中を仲良く手を繋いで歩いた。

「柚原さん大好き!」

私は笑顔で言い切った。





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彼女として好きになってくれますか? 遊真野 蜜柑(ゆまの みかん) @yukiusa09

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