第67話 深きものども
物陰から出てきたモンスターを見て僕は困惑した。ギョロっとした大きな目に低い鼻や耳の半人半魚。あまりにも外見的特徴がインスマスの住民に似すぎている。しかし、魔力の波長は明らかにモンスターのそれであり、僕たちは戦闘態勢を崩すことはない。
「深きもの……どうしてここに……」
アンが呆然としたように呟いた。このモンスターは深きものというのか。深きものには二足歩行の者もいれば四足歩行の者もおり、中には剣や槍のような武器を構えている者もいる。
「アンちゃん、このモンスターを知ってるの?」
「うん。このあたりのダンジョンでよく出現するモンスターなの。でもダンジョンの外には生息してないはずなのに……」
深きものの一匹が考え込んでいるアンを襲った。三叉の槍がアンに届く寸前、僕はその前に出て代わりに槍を受ける。槍はたやすく僕のガードした両腕を貫いた。僕の防御力を貫通するほどの攻撃力、間違いなくランクB以上のモンスターだ。
反撃に移ろうとしたところで、先に深きものの首が飛んだ。姫香が二天王刃で首をかき切ったのだ。ハンターデビューした時にゴブリンを殲滅した時からそうだが、姫香には亜人系モンスターをためらいなく斬る容赦の無さが見える。姫香の魔力のセンスは僕を遥かに上回っている。人間とモンスターの生物としての違いが魔力の観点から姫香にははっきり見えているのだろう。
命を散らした深きものが光の粒子となって拡散していくのを見てちょっとホッとする。やっぱりモンスターだよな。
深きものに注意を払いながら、後ろのアンの無事を確認する。
「大丈夫?」
「うん……。あっ、ハガネくんこそ大丈夫!?」
「問題ない」
すぐに出血は止まり、怪我も塞がっていく。敵の数は全部で八匹、いや、姫香が一匹減らしたから七匹か。残りの深きものが襲いかかってくる。姫香が叫んだ。
「ハガネさん、来ます!」
「僕と姫香ちゃんで前衛、アンちゃんと星辰天ちゃんは後ろからサポート頼む!」
一匹目の深きものが鋭い爪で僕の胸を斬り裂くが、臆すことなくさらに踏み込んでカウンターで拳を叩き込む。一撃では死なない。後ろによろけた深きものにさらに追撃の蹴りを加えて首をへし折る。光の粒子となって消えていく一匹目の後ろから、二匹目、三匹目が出てくる。
同時に二匹を相手取ろうとしたところで、後ろから黒い影が飛び出た。影はそのまま深きものに飛びかかる。悪魔のようなシルエットのモンスターは星辰天が呼び出したナイトゴーントだ。星辰天が呼び出すナイトゴーントはランクA相当の実力を持つ。ナイトゴーントはそのまま深きものの四肢を引きちぎった。深きものが断末魔を上げながら消えていく。
姫香とアンのほうも四匹の深きものを倒したようだった。討伐完了だ。このパーティならこれぐらいのモンスターはあっという間に片付けられる。問題があるとすれば、深きものはおそらくここ以外の場所にも出没しているということ。
姫香が南のほうに振り向いた。山を下ればすぐに海がある方角だ。魔力を探索しているのか、そちらをじっと見て集中している。
「姫香ちゃん、そっちに何かいるのか?」
「モンスターが集まってますね。数もとても多いです。場所は、これは海上?」
僕はすぐさま『ウォーターブロック』で足場を作ると、木々よりも高い場所に登って海のほうを見た。島から2キロほど離れた場所に黒い岩礁のようなものが見える。深きものや他のモンスターたちが島から海を渡り、岩礁に向かっているのが見えた。
下にいるみんなに情報を伝える。
「島中にいるモンスターたちが沖にある岩礁に向かってる! あそこに何があるんだ?」
「それって……悪魔の岩礁? わたしちょっと行ってくる!」
「あっちょっと!」
アンが海の方角に向かって飛び出した。『浮遊』のアクティブスキルによってスイスイと山を下っていく。僕は青ざめた。アンが悪魔の岩礁と呼んだ場所の周りはもはやモンスターの巣窟になっていて危険だ。早くアンを追いかけなくては!
「星辰天ちゃん、海を渡れるモンスターお願いできるっ?」
「もっと良いのをもう喚んでる」
星辰天のそばにはコウモリのような翼の生えた半人半獣のモンスターが現れていた。僕と姫香、星辰天の三人が同時に乗れそうなほどに大きい。ランクAモンスター、バイアキーだ。僕と星辰天が乗り込み、最後に姫香が恐る恐る乗る。
「あの、すごく怖い見た目してますけど、大丈夫なんですよね?」
「従順な良い子よ。バイアキー、あそこの岩礁まで連れてって。あっ、ハガネ、姫香、ちゃんと背中に掴まっていてね。下手したら死ぬから」
「「え?」」
僕と姫香が慌てて背中を掴んだ瞬間、凄まじい風切り音と共にバイアキーが超速で飛行した。
無限成長のカード使い~無限にスキルをゲットしてダンジョン攻略で成り上がる~ 台東クロウ @natu_0710
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。無限成長のカード使い~無限にスキルをゲットしてダンジョン攻略で成り上がる~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます