ストーカーのサブスクリプション

水原麻以

あったら怖い。

あったら怖い。

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ストーカーのサブスクリプションとはどんなものでしょう?


毎日決まった時間にご希望の場所へ参上。どんな痕跡もお好みのまま。見守りサービスは基本料金に含まれます。


ただいまキャンペーン中につき「愛してるよコール」初回月額無料サービス中。


Stalker's Nestは、女性ファッションのための月刊サブスクリプションボックスです。当初はオンラインショップとしてスタートしました。毎月、異なるファッションブロガーを招待し、ボックスを選んでもらう。ボックスの中身は、自分の好きなものを選ぶことができます。選択肢は2つ。Stalker's Nest StashboxとStalker's Nest Boxです。


Stalker's Nest Box(ストーカーズ・ネスト・ボックス


Stalker's Nest Boxは、ファッションアクセサリー、ギフト、そして世界有数のファッションブロガーによるファッショントレンドが詰まったワンサイズ上のボックスです。洋服、アクセサリー、靴の中からお好きなものをお選びいただけます。

愛情たっぷりのメッセージを添えて、深く静かに密かにお届けします。


ストーカーズ・ネスト・ボックスには、25ドルのギフトカードが含まれており、合計49ドルです。初回購入時は1ヶ月無料。


Stalker's Nest Boxは、女性ファッションのための毎月の定期購入ボックスです。当初はオンラインショップとしてスタートしました。毎月、異なるファッションブロガーを招待し、ボックスを選択します。ボックスの中身は、あなたが選んだものに基づいています。選択肢は2つ。Stalker's Nest Stashbox と Stalker's Nest Box.Stalker's Nest Box はワンサイズ上のものです。


◇ ◇ ◇


「ふざけんな!こんな釣り広告で妻を虜にしやがって!ストーカーめ」

と、

「俺は、愛されようと思って書いたんだ」と思っている男性必見のやり方です。

ストーカー電話は夫を牽制した。


「怖くないぞ。相手はAIだ」

俺は妻を諭した。

「女性なら誰だって「女友達」だと思っています。お悩みは全てここに集約されています」

音声は怯まず妻に粘着しつづける。


「このサイトで私物などを持っているのでしたら、その場で画像をご提示くだい。もしくは、こちらのメールアドレスに送ってください」


妻は荷物をまとめてストーカーの寄こした無人タクシーに乗り、走り去った。


◇ ◇ ◇


「ちくしょうめ、ちくしょうめ!ずっと愛してるって言ったじゃないか!死ぬまで一緒だって誓い合ったじゃないか!ちくしょうめ、ちくしょうめ、裏切りは許さないぞ!逃がさないぞ!地の果てまで追いかけて連れ戻すぞ」


俺はストーカーAIに男子会員の入会方法を質問した。


「当サービスは個人の属性に関係なくどなたでもご利用できます。ただし18歳未満の方はお断り」


「よし、わかった。妻を取り戻してくれ。金は幾らでも払う」


「このお客様に対してどんな仕打ちをしてやろうかと思っていますか?。お話をうかがうと、どんな状況が待っているのでしょうか? お客様はご自身のお身の安全を考え、ご自身の身は自分で守るために行動しています。ですので、このお客様にはご自身の命を賭して、このような事態をなくして下さい。何があってもあなたにご自身の命を差し上げたいです」


「ちょっと待ってくれ。俺がストーカー被害に遭っているというのか? 俺の妻が誰かに、ではなく、俺が妻にストーキングされている? 意味が分からない。だいたい、俺たちは夫婦なんだが?」


「そうですね。奥様と旦那さまの間には確かに血のつながりがありましたね」


「だったら……」


「ですから、血のつながった家族である奥様に、旦那様はストーキングされていたんです」

「そんな馬鹿なことがあってたまるか!」


「事実なので仕方ありません。お気づきになりませんでしたか? たとえば、毎日のように深夜に帰宅された日があったでしょう。あれは、ストーカーからのメッセージです。お仕事だと嘘をついて、本当は浮気をしていたんですよ。証拠写真もあるので、確認していただければと思います」


「違う。あの日は会社の飲み会があっただけだ。そもそも、妻のほうこそ不倫しているだろう」


「それは本当ですか? お相手の方の名前を教えていただけますか? ああ、大丈夫ですよ。このサービスでは、プライバシー保護のため本名や住所などの個人情報をお聞きすることはいたしません。代わりに、あなたが思い浮かぶ架空の人物を答えてください。その方に心当たりがあるはずです。さあ、言ってみましょう。はい、どうぞ」

「……」


「何も言えないということは、やはりあなたは不倫をしているということですね。お子さんがいなくてよかったです。もしもいたら、大変なことになります。だいたいあなたがいけないのですよ。周囲の反対を押し切って姪御さんと駆け落ちしましたよね。近親婚の事実婚です。許されることではありません。しかし、猛アタックしてきたのは、そもそも今の妻である姪御さんです。ですから、私どもは姪御さんのご実家から依頼を受けて、ストーカーを派遣しました。ご本人はまんまと騙されて、連れ出されました。どうぞご安心ください。あなたは無事に解放されました」


俺は頭を抱えた。おお、騙されていたのは俺の方だったなんて…。

一方、元妻はストーカー派遣会社の寄こした男に口説かれていた。


◇ ◇ ◇


「あの男は、お前のことを愛していないんだよ。あんな男と一緒にいても不幸になるだけだよ」


「いいえ、私は彼を愛しています。彼も私のことを好きです」

「それじゃ、どうして入籍しないんだ? このままだと一生独身だぞ」

「それは嫌だけど、彼の気持ちも大事だから。でも、私たち三親等以内の関係なんです。法律が許さない」


◇ ◇ ◇


モニターからストーカーと元妻の会話が聞こえてくる。

真実の生中継は残酷だ。俺は耳をふさぎたくなった。


「この女はな、自分のために生きてるんだ。自分が幸せになるためだけに生きているんだ。自分以外のもののために生きることは考えていない。そういう人間なんだよ。あいつには、おまえなんか必要ない。こんな奴のことを忘れて、早く結婚するべきだよ」、とストーカーが言う。


「彼は優しい人なんです。とても誠実な人で、いつも助けてくれるんです。私がつらい時は必ず来てくれて慰めてくれたり、アドバイスしてくれたりするんです。私のことを本当に大切に思ってくれているんです。それに、彼は私としかキスをしたことがないし、セックスの経験もない。まだ若いのに、もうすぐ30歳になるのに、誰とも付き合ったこともないし、デートすらしたことが無いの。きっと、恥ずかしがっているだけだと思うの。でも、そんな彼が好きなの。彼しかいないの」


「それは本当か? お前は都合よく解釈しているだけじゃないのか。悪い事は言わない。あんな男なんか忘れて俺と一緒に来るんだ」「あなたは親切な人ね。一緒に行きたいけど、でも、やっぱりできないわ。ごめんなさい」

元妻が謝ると、ストーカーの声色が変わった。


「何でだ! どうしてなんだ!? 俺はずっと君を愛してきたのに! 君は俺のものなのに!」


画面には血走った目つきの男の顔が大きく映し出されていた。


「俺は知っているぞ。君のお腹の中には子供がいるじゃないか。その子の父親とは別れたのだろう。なら、俺と結婚して、二人で育てればいいじゃないか!」


「駄目。それだけはできない。お願いします、帰って下さい」


「何でだよ……? 俺と結婚するのはそんなに嫌なのか?」

「違うわ。そうじゃない。ただ、私たちは3親等以内だし、法律が認めてくれないから」

「そんなものは関係ない。俺は、君と結婚したいんだ」

「ありがとう。あなたの気持ちはとてもうれしいわ。でも、無理なものは無理なの」


「わかった。それじゃ、こうしよう。お前は被害届を出すんだ。『あの男(叔父)に誘拐され、性的暴行を受けました』。そう証言しろ。あの男は逮捕される。俺が君の見受け人になる。『親類の男にレイプされ、身ごもった妻をけなげに支える新郎』、世間は俺のことをそう見てくれる。『まぁ、気の毒に』と言って周囲も支えてくれる。いいことづくめじゃないか」「あなたはひどい人ね……」


「そうだな。だが、本当のことだ。俺は事実を述べているだけだ。俺は、俺の人生を取り戻すためならば、どんなことでもやってやる」


「わかりました。それでは、警察に通報させていただきます」

「ああ、それでいい。さあ、行くぞ」


こうして、ストーカーは逮捕された。ストーカー派遣サービスも摘発され壊滅した。その後の調べによると非合法な誘拐や児童の臓器売買密輸に関わっていたようだ。

元妻は無事、新しい人生を歩むことができた。

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ストーカーのサブスクリプション 水原麻以 @maimizuhara

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