誰がしタコとだったのか。
「心配かけちゃったな。ごめんな」
頭が包帯でぐるぐる巻きになっているおじいちゃんはちょっぴり嬉しそうに笑って言った。
あの後、避難所に行くと、なぜかもうおじいちゃんが運び込まれていた。僕たちが戻る少し前に校門のベルが鳴らされて、用務員さんが行くと、おじいちゃんが校門の前にひとり倒れていたらしい。
頭を強く打って気を失っていただけだったそうだけど、頭のことなので大事をとって、しばらく入院することになった。
「カイジューさまにも助けられちゃったな」
僕とミユはカイジューさまと聴いて、ドキッとした。カイジューさまの正体を知った今も、追いかけられたときの恐怖が忘れられない……。
おじいちゃんによると、カイジューさまは姿や住む場所は違えど、人間と同じく"知的生命体"らしい。
昔話の時代には人間と揉めることはあったのかもしれないけれど、今は人間とは関わることなく、海の底に町を作って暮らしている。そこで彼らは地球の活動を利用して、エネルギーを作っていたのだとか。
……自分の暮らしている地球が"活動"するなんて思わなかった。ただの地面だと思っていたけど、何だか生きてるみたいだ。
でも、そのエネルギー装置が現在故障してしまっているらしい。
そのせいで、地球の活動のエネルギーが《本来》の形で発散をしてしまった。それが、"台風"と"地震"という、僕たちの町をぐちゃぐちゃにした怪獣の正体。もう地球で"台風"や"地震"が起きにくくなって、何百年も経っているものだから、僕たちの町はあっという間に壊されちゃったってわけ。
そのことを予期して一部のカイジューさまたちがおじいちゃんに知らせてくれたことで、僕たちは無事避難することができた。……どうして、おじいちゃんに連絡したのかって?それは、おじいちゃんが彼らの文明について詳しい有名な研究者で、彼らとも交流があったから。
「有名って言っても、研究してる人が少ないからってだけだよ。
それに彼らはテレパシーが使えるからね。私が居なくても知らせてくれてたさ」
……すごく親しげに話すおじいちゃんの手前、僕とミユはカイジューさまが怖かったとは言えなかった。きっとカイジューさまは僕たちを怖がらせないために、おじいちゃんを通して知らせたんだと思う。
「それにしても、これからは大変だよ。
台風も地震もしばらくは頻繁に起きることになるらしいからね。装置の復旧には時間がかかるし、これまでとは違う仕組みになるかもしれないんだってさ。
家も町も災害とうまく付き合えるように作らなきゃね」
窓から潮の香りでいっぱいの風がふわっと吹いた。外の真っ青な海面から太い腕がざばぁっと突き出して、こちらに手を振っているみたいに見えた。
僕の見た霧の中には夢の跡 おくとりょう @n8osoeuta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます