6  エリアボス直前のオアシス

フリーズが解けた時にはディアブルはどこに消えたか姿がない。哄笑を聞いてないよ、と思ったが、データが飛ばなかっただけましだと、エットォは思う事にした。


その時、私のデータってどこに保存されているんだ、と疑問が浮かんだ。が気にしないことにした。どうせ誰かさん、何も思いつかない。


ディアブルに会えないまま冒険を続けるうち、エットォは念願のパーティーを結成した。


一人はエルフで魔法使いのウソデショ、もう一人はケンタウルスで弓使いのハズレター、なんだか奇妙な名前で嫌な予感がしたが、エルフは綺麗だし、ケンタウルスは背中に乗っていいというので、手を打った。


思ったよりも二人は役に立った。


ウソデショは無制限で回復術が使えたし、他にも何かありそうだった。


ハズレターは矢がなくなると、どこに隠し持っているのかメールを飛ばして、敵ににせの情報を送って攪乱した。


お陰でエットォはネームドを二体、立て続けに倒し、とうとうエリアボスの直前に進んでいた。


そして、エリアボスに挑む前に休憩しようと入ったオアシスでディアブルに遭遇する。


「やぁ、三段腹、久しいな」


「おや、ディアブルさん」

「はい」


「そう言えば、オアシスでもその姿、バグってますよね?」

「存在自体がバグのおまえが言うか」


ケラケラとディアブルが笑う。


「っていうか、今日は何しているんですか?」


ディアブルは水辺にしゃがみ込んで、棒で何か突いている。


「見て判らぬか? 説明したら判るのか?」

「説明を聞いてみなくちゃ判断できません」


「うぬ。バグのくせに生意気にも、まともなことを言うヤツだ」

「そこが可愛いんでしょ?」


「そうなのか?」

「違いますか?」


ディアブルとエットォが顔を見合わせ

「へへへ」

「フフフ」

と、いつものように照れ笑いする。


「掘ればひょっとしたら温泉が出ないかと思っただけだ」


「それで、棒で地面 つついて? 出る訳ないじゃん。てか、棒、凍らないんですね」


「凍った棒で突いている。折れそうで折れない。が、棒じゃダメそうだ、おまえで突いてみるか?」


「私はどうせなら突かれる方がいいです」


「棒で突いていいのか?」

「ピーピーピーピーピー」


おおやけにできないセリフしか、考えつかなかったようだな」

ディアブルがニンマリ笑う。


「お陰で三段腹が何を言ったか判らない。よって堂々と無視できる」


この路線は無理そうだ、とエットォが話題を変える。


「そうそう、私、三段目からレベルアップしました」


「きたか! 今度は何だ?」

ワクワクながらディアブルが聞く。


「見て判らぬか! この黒帯が、よもや見えぬとは言わせぬぞ!」


「おぉおぉ、空手か柔道か、しかも何段か判らないが、確かに腰に巻きついているのは黒い帯。衣装が自動で変わるとは、バグのくせに芸が細かい」


ディアブルの言葉にエットォが済まなさそうな顔をする。

「あ、この帯、さっき立ち寄った村で買いました」


一瞬、なにっ? と言う顔をしたが

「ふん、どうせそんなところだと思ったわ」

とディアブルが強がりを言う。


そしてエットォの後ろに控えている二人を見る。


「おまえの従者はフリーズしているようだ」

「えっ?」


慌ててエットォが自分のパーティーメンバーを見る。


「ウソデショ? ハズレター?」

「嘘でもないし、外れてもいない」


「そうじゃない!」

「相変わらず訳の判らないヤツだ」


「名前よ、名前! エルフがウソデショ、ケンタウルスがハズレター」


「名前のセンスが半端なく外れている。まともな名は私だけだと、マジ思う」


「考えるの、大変なんだよっ!」

「誰をかばっているのだ?」

「誰でしょね?」


へへへ、とエットォが照れ笑いすると、つられてディアブルも、フフフ、と照れ笑いする。どうもお約束になってしまったようだ。


「文字数を稼ぎたいだけじゃ?」

「何の話だ?」

ディアブルが知らんふりをする。


「で、何で、その二人を登場させた?」

「思い付きでしょ?」


「思い付きで出すな。せめて一度くらいは台詞を言わせてやれ」

「私に言われてもぉ・・・」

と、困り顔のエットォの前でディアブルがブラックコーンに乗る。


「もう行っちゃうの?」

「ピー音にガッカリした。もう遊んでやらない」


「そんな事言わないでよぉ。私のせいじゃないし」

涙ぐむエットォの耳に


「従者のセリフを思いついたら、また遊んでやる」


ディアブルの哄笑が響いた。

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魔王ディアブルは本日休業 寄賀あける @akeru_yoga

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