国民の総意に基く異世界戦争とその結末
@HasumiChouji
国民の総意に基く異世界戦争とその結末
○○国両院議会の総意として、今回の軍事裁判において、我が国の政治・軍事指導者を裁こうとする2つの世界の各国に対して強く抗議する事を決議いたします。
2つの世界の大半の国が、法の支配に基く政治・社会体制をとっている以上、あらかじめ犯罪として規定されていたもののみが、裁判において犯罪と認定され処罰されるべきと考えますが、今回の戦争裁判は、この原則に反しています。
2つの世界の各国が、我が国を裁く事そのものが、後世、歴史と云う法廷において、人類史上に残る誤ちとして裁かれる事になるのは確実であります。
そもそも、戦争における国際法やそれに準ずる国際慣習は、どちらの世界においても、異世界の存在など想定していません。
つまり、異世界間戦争におけるルールなど無いに等しく、
たしかに、我が国が「異世界の門の先に有るのは、向こう側の世界を征服し、更にこちら側への侵略を狙う恐るべき軍事独裁国家だ」と云う
これが罪にとわれない事に納得がいかない愚民は両世界に数多居ると思われます。
しかし、そのような意見は感情論に過ぎません。
2つの世界の各国には、感情的な判断ではなく、理性と法の支配に基いた判断をお願いする限りです。
どうしても感情論で我が国を裁くのであれば、我が国が行なった行為が、感情的にやむを得ざるものであった事も考慮いただけねば公平とは呼べません。
そもそも、我が国は
もう1つの我が国は、挑発の意図など無かった筈だ、との意見も有りますが、
もう1つの我が国の存在が我が国に大きな社会不安をもたらしかねないものであり、我が国はいかなる手段をもってしても、もう1つの我が国を滅ぼすしかなかったのです。
そうです、あの戦争は、自国の社会体制を護る為の自衛戦争だったのです。
平行世界のもう1つの我が国は、この数十年で、あちら側の世界を政治・経済・科学・思想のあらゆる面で先導し、様々な社会問題・環境問題を解決し、平行世界のもう1つの地球とそこに住む人類の未来を明るいものにしていました。
ここ数十年間、
もう1つの我が国が行い続けた選択は、こちら側の我が国の良識的で理性的な国民ならば非現実的な理想論だと嘲笑うような愚かしいものです。しかし、なぜか、
しかし、こちら側の我が国は、ここ数十年間、理性的で現実的な選択を行ない続けたにも関わらず、先進国の座から転がり堕ちつつありました。
そのような状況で、あちら側の我が国の科学者達は、平行世界への門を開く実験を行ない……そうです、たった数十年間で、こちら側とあちら側の我が国の科学技術には、こちら側の基準では一〇〇年以上かかっても追い付けないほどの差が出来ていたのです。
このような状況で正気を保てる国民と政府が、2つの世界の……いや、数多有るらしい平行世界のどこに存在すると言うのでしょうか?
自分達は自分達自身の想像さえ及ばぬほどに偉大なる存在になり得たと云う誇り。
しかし、自分達は自身でその可能性を潰してしまったのではないか? と云う疑念と自虐。
その2つを常に意識し続けなければならなかった我が国の国民の心情と、その結果行なった選択がやむを得ざるものだった事を、どうか御考慮いただきたいと考える次第です。
そして、我が国は、我が国が行なってきた選択が理性的で現実的であった事を証明するに至りました。
科学技術で遥かに勝りながら愚かしい感情的な理想論に取り憑かれた忌むべきもう1つの我が国の国土を焦土と化し、その国民を皆殺しにする事によって。
国民の総意に基く異世界戦争とその結末 @HasumiChouji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます