トーレムの調査報告書 奇妙な冒険者とギルドについて

04 お頭、そのつもりで

お頭様

　とりあえず送ってきた資料は一式返送しましたので確認ください。うんざりした顔の配送担当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。どうして私が申し訳ない気持ちにならなければならいのでしょうか。どうしてなのでしょうか。お頭様、ぜひともお教えください。

　それと配送から手紙を受け取りましたが、これはなんですか？　こんな言葉を気軽にお頭様が使ってはいけません。私が受け取ったのでなければ左遷、出世街道から外されたと絶望してしまいますよ。

　冒険者を連れて帰るまで帰ってくるな。ギルドをなんとかしろ。

　どうしてあなたさまはそこまで言葉が足りないのでしょうか。なんですか、私にそれほどまでの信頼をおいているということですか？　だったらもっと無茶を要求するのではなく、のんびりとした仕事を用意してください。それとちゃんと言葉を使ってください。お頭様の立場を考えてください。

　ところで、あのギルドは、というかあのパーティは豪遊している様子です。久々にギルドに顔を出してみると気持ち職員の着飾りが派手になっていました。パーティとはあまり関わりたくないのでなるべく遠巻きに眺めるのですが、少し肉がついたような気がします。ボタン周りが悲鳴を上げている様子でした。

　ちなみにトーレムの雇うのには相変わらずお金がかかっています。金貨十二枚です。ちょっと頬がふくよかになった彼に交渉するのは気が引けたので職員に頼むようにしたらこの様です。この期に及んで直接やり取りするのは嫌なのでこの額で経費請求しますのであしからず。

　要求したいのは経費だけではありません。人もよこしてください。田舎のギルドに顔が割れていない、それでいてギルドの業務を理解している人がよいです。私は顔が割れているしあまりよい印象を持たれていないので、ギルド内部の実情に切り込める人が必要なのです。そもそも、私はギルドの現場を知らないですから。

　誤解しないでもらいたいのですが、私としてはお頭の要求には乗り気ですよ。彼、トーレムには個人的にも関心がありますし、この環境から彼を離すことができるのであれば力になってもよいかなと。純粋な気持ちで冒険者を志す気持ちをまだ保っていてほしいですから。

　というわけで、経費と要員の件、よろしくおねがいします。閣下の願い、この私が実現いたしましょう。