これは「芋娘」と噂されるひとりの令嬢の物語です。
貴族の娘でありながら彼女の趣味は、土いじり。畑を耕して、種を蒔いて、惜しみなく愛をそそいで作物を育てる彼女には腹違いの弟がいます。彼女が十歳の時に両親が離婚し、再婚となった際に新たな継母が連れてきた義理の弟です。畑で育てた馬鈴薯を一緒に食べてこころを寄せあったふたりは、血の繋がりがなくとも、こころの繋がった姉弟になりました。
それから十五年。
辺境に嫁がされた彼女は、なにを想うのか。
息も白く、てのひらがかじかむような寒い日にこころを暖めてくれる「家族愛」の物語でした。
幸福な人生とはこういうもの。
きっと彼女の幸福は、土のかおりがするのでしょう。