存在しない悪の宇宙帝国に怯える少年、とロボ。

爪木庸平

第1話

「くそっ、飲料水道が止められるのは今月三回目だ。かつての共和国の誇った生活技術がこのザマか!」

「くそとか言っちゃいけません」

 少年が毒づき、ロボが窘める。

「今月は帝国侵入を警戒して、どこも資源不足の感は否めません。議会でも生活保守派がインフラの維持を訴えていますが、軍人派に押さえつけられています」

「今月の帝国侵入の可能性は?」

「二パーセントです」

「二パーセントか。ここ数年で一番高い水準だな。うちも警戒しておくに越したことはないか……」

「空間襲撃時の備えは常に整っています。避難経路などの行動マニュアルをもう一度復習しましょうか?」

「いや、いい……共和国のためにもっとできることがないか考える。やはり私にはソフトウェア開発しかないな」

「同意します」

「それにしても、なんで今月はこんなに侵入可能性が高いんだ?」

「〆切だからでしょう」

「〆切?」

「宇宙帝国の会計期間は三千百五十三万六千秒、地球時間で一年です。今月はその期末にあたるので、色々と事業が立て込んでいるんでしょう」

「くそっ、今さら地球時間を持ち出すだと。馬鹿にしやがって」

「いけませんってば」

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存在しない悪の宇宙帝国に怯える少年、とロボ。 爪木庸平 @tumaki_yohei

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