収益化記念雑談枠&凸待ち その参

「次は一期生が来るぞ!」


 親友が最後に残していった一言、それが耳に届いて暫く……儂は一瞬何を言っていたのか理解出来なかった。

 一期生が来る……つまりは、一期生の三人が凸待ちに来てくれると言うこと。


「のじゃ!?」


 ちょっと本気でまって欲しい。

 言葉が理解出来ないというか……え、いやマジなのか?

 一期生の三人、つまりは我らが総大将である奴良瓢鮎様や、狂天狗とよばれる山主法眼先輩、そして胡瓜狂いの依童神虎先輩などがやってくるということ。

 三人の誰もが儂が憧れた人達、そしてこの妖プロを形作った偉人でもある。

 そんな人達のうち誰かが来る? ――おっけーちょっと理解出来ない。


「……よしマヨイビト達よ、配信切ってよいか?」

 

 正直心の準備とか一切出来ていないので、儂からしたらもう帰りたい。

 喋りたいけど、そんな勇気は今の儂にはなく――それどころか、え? 来るの? って思いが強すぎて、正直に言えば爆発寸前だ。


[駄目に決まってるだろ]

[落ち着け大妖怪]

[……遂に俺等の鴉様が一期生とコラボか]

[感傷深いね]

[妖プロの謎技術のせいで、焦ってるのが分かってマジでおもろい]


 落ち着け、マジで落ち着け儂。

 こういうときは何じゃっけ? あ、そうだロリ化……はしなくてよくて、何をすればいいんだ? あれか、人の字を掌に書いて飲み込むんだっけ? 

 筆、何処だったかな?


 過去最大の迷走状態に陥った儂は、とりあえず配信中に筆でも探しに行こうとしたんだが、現実は非情であり、ピコンとアプリの音が儂の耳に届いた。


「来たんだけど?」

「なんだ来ちゃ駄目だったのか?」

「あ、いえ大丈夫ですよ神虎様」

「なんでロリ化してるんだ?」


[混乱極まっててロリ化してて草]

[あまりに一瞬の切り替えすぎて、配信変わったかと思った]

[石鎚山法起坊:本当にロリだな 50000円]

[弟子とは良いものだ:この鴉、何があったんだ? 5000円]


 おい二大天狗!? 

 何故儂の配信にいるのかは置いておくとして、スパチャ投げてるんじゃ!?

 ロリ化して、一瞬で目に付いたコメント。

 それは儂の古くからの知り合いである大天狗の二人のNNだった。石鎚の爺さんは絶対からかってくるし、鞍馬に関しては頭を痛めてるのが目に見える。


「いえ、ただちょっと慌てているので平静を保とうと思っただけですよ?」

「だからってロリ化はないだろ、場所間違えたかと思ったぞ?」

「だって……一期生の方と一対一とか緊張しますもん」


[何これ可愛い]

[これ、本当に男でいいんだよな?]

[性別鴉だから仕方ない]


 いや儂は今ロリだが?

 ――っとそうじゃなくて、とりあえずもうこのままで進めよう。変化してしまった以上、変わるのも疲れるしこのまま行った方が楽だ。


「あの神虎様、今回はこのままでも……よろしいですか?」

「おい後輩、こんな所で料理対決の衣装に立絵変えるな、同接増えてるからな」

「だって今ロリですし……」

「その単語が自然にでる現実が一番怪異だと思うぞ?」

「私は妖怪ですしせーふでーす」


[メスガキ……ロリ、メイド?]

[また属性増やしてるよこの鴉……]

[息をするように増やすなw]

[即堕ち系有能不憫ポンコツホラゲ苦手ヤンデレ大食いイケメン儂ショタロリメスガキ爺婆ママメイド]

[打ち込むの早すぎぃ!]

[コピペしてるんでw]


 コメント欄の加速具合がマジでヤバイ気がするが、妖怪の視力を持っている儂からしたら、何の問題もない。全部目を通せるし、気になったのは覚えてられる。

 だからこそ言うが、なんで儂の属性今こんなことになってるの? 改めて思うが、マジで頭おかしくない? 創造神もびっくりだよ? 天ちゃん辺りに言ったら多分笑い死ぬぞ?


「という訳で神虎様、私のメンタル面を考慮してささっと質問するのですが……好きな食べ物……はどうでもいいんで最近はまってるものを教えてくれませんか?」

「どうでもいいとは酷いな」

「どうせ胡瓜ですので、周知の事実かと思いまして」

「いや、そうだが……言わせてくれよ」

「常識枠の貴方が、壊れる姿見たくないです」

「何気に酷いな!?」


 いやだってねぇ。

 この人は普段は凄い常識的な人物であり、かなり優しいまともな人間だ。 

 スタジオであった限り、鶫と同じでマジの純人間。なのに、あれだぞ? 胡瓜が関わった瞬間に狂天狗もビックリな狂化に陥るんだぞ? そんなの制御出来る訳ないし、胡瓜の話題は持ってこない方が吉なのだ。


「はまってるモノならあれだな、家庭菜園だな」

「まってください神虎様?」

「ちゃんと胡瓜育てるぞ」

「これも地雷でしたか……」

「いや、今日は多く語らん。後が使えてるし、何よりお前に語ったら、後ろが怖い」

「あれ、まだ残ってる方が?」

「あぁ――いや、残ってないぞ?」


 それは無理があるのでは? 

 ……そう思ったが、誤魔化す以上なんかヤバイ相手が控えてるのだろうな。

 それこそ、奴良瓢鮎様が……それ、一番やばくないか?


「あのぉ、神虎様? 奴良様は来ませんよね?」

「来ないって、うん,来ない――俺は言ってないから何もしないでくれ」


[奴良瓢鮎:河童校舎裏]

[草]

[そういえば、サプライズで凸るって……]

[奴良瓢鮎様:義兄弟共、地獄堕ち]

[そんなぁ]

[すまんってw]


 今のコメントの流れ、それを見るに……これはマジで奴良様くるフラグでは?


「神虎様、私抜けるんで配信お願いできますか?」

「駄目に決まってるだろ!?」

「えぇ、駄目ですか……」

「いいから大人しく話せ鴉」


 その瞬間、通話から落ちていく神虎先輩。

 今のうちに心を整えようと思ったんだが、すぐにピコンと音が鳴り……。


「さぁ、オレが来たぞ! こんばんはだ浮世鴉!」


 俺の最推しである奴良瓢鮎様が通話に入ってきた。

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数百年生きる妖怪がVTuberになった件 鬼怒藍落 @tawasigurimu

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