わらしべハウス⑫
「なるほどぉ。 面白そうですねぇ!」
数日が経ち、わらしべハウスに新たな入居者がやってきていた。 金髪碧眼、絵に描いたように見事な西洋人であるが、まさにその西洋人である。
―――まさか西洋から召喚してしまうことになるとは。
―――想像もしていなかったが、吸血鬼の一族ではないよな・・・?
―――日本語が喋れるし、なるべく空き室を作っておきたくなかったから許可したけど。
鋲斗としてはちょっとした思い付きで始めたわらしべプレゼント交換だったが、それを前面に出すことでSNSなどで注目され興味を持つ人が増えたらしい。
もっともそれはいいことばかりではなく、わらしべ交換があるため入居したくないといった評価も出されてしまったが。
―――まぁ、他にないシェアハウスみたいになってよかったのかもしれない。
―――これで新しい盟友がまた増える。
―――既に今も何件か内見が入っている。
―――これからはもっと騒がしくなるぞ。
ただわらしべサイクルは毎回リセットすることになった。 一回目の交換の時のように二周するだけで最終プレゼントが高額になり過ぎてしまったためだ。
「というか、個性的な皆さんですねぇ!」
更に入居者たちは秘密を隠さない方向になった。 紺之介はマザコン、瑠璃子はギャル、壮弥は女装癖、そして鋲斗は、中二病を少しずつ卒業しようと考えていた。
―――紺之介さんは被害者だけど、瑠璃子さんが自ら秘密を告白してくれてよかった。
―――正直僕もあの一日だけでも隠すのがやっとだったんだ。
―――通常の僕でない気がして落ち着かなかった。
―――だけど、ずっとこのままではいられない。
―――天国へ行ったお母さんとお父さんに恥じないよう、しっかり一人で生きていかないといけないんだ。
―――といっても、好みは好み。
―――ファッションやその他もろもろにそれがある程度影響するのは仕方がない。
―――言動や思考を少しずつ普通にすればいいんだ。
―――そうすればこの家は僕にとっても居心地のいいものになる。
―――こんな僕をみんなは受け入れてくれるんだから。
鋲斗は今でも眼帯に左腕全体を仰々しい包帯で包んでいるし、紺之介は全身手編みの服を着ている。 瑠璃子はギャルギャルしているし、壮也は完全に女子の格好だった。
「はは、色々とあったんですよ。 オウジャファーさんも何か秘密にしていることがあればぶっちゃけてもいいですよ?」
「・・・なるほどぉ」
「別に強制ではないですけどね」
「ワクワク!」
瑠璃子は目を輝かせている。 今は五人リビングに集まっている。 少し考え込んだ後ジャファーは言った。
「じゃあ、ぶっちゃけますねぇ。 実は僕、小国の王子なんです!!」
「「「・・・えぇぇッ!?!?」」」
四人とはスケールの違う衝撃的な告白に三人は驚いた。
「日本と関係を作るために一般の視点から日本を感じてこいという・・・」
「本当に王子様なの!?」
瑠璃子が食い付いた。 ちなみに瑠璃子は紺之介は元々好みでなく、鋲斗は中二病だったということで恋愛対象から外したようだ。
「結局金かよ・・・」
「あらいいじゃない。 私はギャルなんだからこういう時は素直でいいでしょ?」
「まぁ、確かに分かりやすいけど・・・」
紺之介がそれを見て不満そうに言う。 紺之介も瑠璃子は派手好きということで好みから外れたらしい。
「というか、わらしべをする時に王子様が間に入ったら色々とマズくないですか・・・?」
「あー、確かにそうですね。 かくかくしかじかで・・・」
壮也にそう言われジャファーに説明した。 あまり高額過ぎるものは選ばないようにしてもらった。
「ではジャファーさんにはこれを渡すので、それよりも少しだけいいものを隣の部屋の人に渡してあげてください」
そう言って鋲斗が手渡したのは中二病全開の模造刀である。 既に三人の間を巡りなかなか高額なものになっていた。
「OK! これは素晴らしくいいものでーす!」
そんな言葉を言い残したことに一抹の不安を一同は覚え、そしてジャファーが選んだものはやはりその不安が的中するものだった。
「き、金塊・・・!? この人全然分かっていないじゃないッ!!」
「安いものでーす!」
そんな感じで今後のわらしべハウスはなかなかに大変になりそうだった。 更にもう一つ大変になりそうなのが、先程から鋲斗が手を繋いでいる相手、壮弥とのカップル成立である。
-END-
わらしべハウス ゆーり。 @koigokoro
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