人々が常に強化外骨格〈シェル〉を身に着け、家族や恋人と一緒にいる時も裸になることは許されない管理社会。
これがこの作品の核となっているのですが、そこに馴染み、優しい恋人もいて、自分の生活を送る主人公ですが、静かな渇望が徐々に浮き彫りになっていきます。
私たちは現在、「マスク」という外殻をすでに身につけています。それに違和も感じなくなってきました。でも、今後どういう暮らしが訪れたとしても、自分たちが地球という生々しい自然から生まれてきたこと、「裸の自分」という姿を持っていることは、簡単には脱ぎ捨てられない事柄ではないでしょうか。
主人公はそのふつふつと沸き立つ思いをどのように形にしていくのか──。
登場人物たちが自分たちが親しんでいる世界を活き活きと見せてくれ、スムーズにエスコートしてくれる語り口が大変心地よく、最後まで惹き込まれて一気に読むことができました。
「ほとばしる体」は今も私たちの中心でもがき続けているのかもしれませんね。