第15話 真の実力者は破れる
理由は明確で純粋な実力差だ。大和の気まぐれでもう一つの魔法が使われることになる。大和としてはAランク魔法の本気は周りの被害を考えると使いたくないが生徒会メンバーがいつの間にか各群衆に散らばっていることに気づいていた。さらに生徒会メンバーの配置から何かあった時の生徒の保護が目的なのはすぐに分かった。大和には華相手に単発では仕掛けても火花を防がれるのは目に見えているのでフェイクを入れていくことにする。
「五大元素の一つ水よ、球体となりて直進せよ。球水」
大和の周りに空気中の水素を元に魔力で生成された直径十センチ程の球体の水が四つできる。今までの球水とは違い水の純度を極限まであげている為、透明に近くなり視認がしづらくなる。剣と剣が交差する一瞬の隙を狙い、放つが躱されてしまう。
「赤城君、甘いですよ?」
「本当にこれで終わりだと思いますか?」
「水よ。蒸気として爆発しろ」
詠唱によって先程の球水四つが水蒸気爆発を起こす。物凄い音と同時に辺りを霧で覆う。この霧も高温になっており、息を吸うだけで肺が熱くなる。大和は華の後ろに空間魔法で周り込み詠唱をする。手加減はしない。手加減をすれば大和の敗北が決まるからだ。
「全て爆ぜよ、我が願い聞き届けろ!」
火花の詠唱を終え、次は自分たちを守る障壁を展開する。
「魔法陣展開、魔法術式は障壁、全てを守れ」
大和が二つの呪文を詠唱し終えると、全ての霧が華を中心として集まる。華の口が動く。だけどそれよりも早く大和の火花が発動し彼女を中心とした空気を一点に凝縮して魔力による大爆発を起こす。生徒会メンバー全員が瞬時に障壁を張り、皆を守るがBランク相当の障壁では意味をなさなかった。障壁は凄まじい爆発の衝撃波によって壊れ、そのあとすぐに高温の炎が全てを燃やす。校庭の砂の一部が溶けて溶岩みたくなり辺り一帯が沢山の炎で燃え盛る状況となる。大和の展開した魔法障壁により怪我人はいないが、華はそれでも無傷だった。トリックは簡単で障壁展開と高速回復魔法を大和が火花を打つ瞬間に発動していたからだ。華の回復魔法も火花と同じAランクで効果はある一定回復量までの自動回復となっている。回復スピードを最大速度まであげ身体がダメージを負うと同時に回復にはいった。
「まさか赤城君がAランク魔法まで使えるとは思いませんでした」
華は知っている。
大和がSランク魔法魔術を使える事を。
これはただの皮肉。
「それはどうも」
「今日は楽しかったしここまでにしませんか?」
「そうしてもらえると助かります」
「ではここまでと言うことで。失礼します。後で私の所に報告書持って来てくださいね」
そう言い残すと華はクラスの模擬戦メンバーの元に歩いて行く。
「悪いが違う校庭に移動しないか? ここは炎があちこちで燃えてて危険だと思うんだが」
「あんたがしたんでしょうが! とにかく移動することには賛成よ。明日香ちゃん達いきましょうか」
「なら先に行っててくれ。俺は火を消化してから行くことにするから」
「わかったわ」
三人が先に他の敷地の校庭に向かう。ここの蓮華学園は魔法魔術の練習用の校庭が八個ある。試合用に別で二個とかなりのお金を使って設立されている。また今回のような練習によって校庭が壊れた場合は数日以内に専属の業者が勝手に直してくれることになっている。
「赤城君もどうぞ先に行ってください。ここは生徒会メンバーで火を消しますから」
「ありがとうございます」
大和は副会長の言葉に甘えて早乙女達を追いかける。
「さてと簡単に言いましたがこの火と言うか燃え盛る炎をどうやって消しましょうかね」
「とりあえず全員で雨を降らせて鎮静化が一番かと思います」
「それもそうですね」
「はい」
「普段物事にあまり興味をもたない書記である貴女が生徒会メンバー以外の誰かの為に何かをするとは珍しい事もあるものですね」
「生徒会長が認めた男ですから多少は興味ありますよ」
少し走っていると校庭の一角に春奈達の姿を見つける。
「さっきので疲れたから隣で休憩したいんだけどいいか?」
「どうぞ。とりあえず今日は見ているだけでいいわ。私も自分の練習は明日からにして今日は明日香ちゃんと千尋ちゃんのお世話をすることにしたから」
「それであの二人は魔力を練る練習からってことか」
「そうよ」
「赤城から見て二人はどう見える?」
「心の何処かで戦いに対して怯えているように見える。それと自分に自信がないのが態度や魔法に表れている」
「やっぱりそうなるわよね。それで気になっていたんだけど最後の赤城が使った技何?」
「ん? 火花だけど。お前が俺との演習の時使ったやつな」
「私の技ってあんなに強いの?」
大和の一言に春奈が驚いた顔をする。
「そうだ。基本の五元素に関してだが、Aランクまでなら殆どの技を使える。それもほぼ最高火力でだ。お前の技は軍事魔法書に採用される程強力な魔法の一つだ。だが学生の多くは使える技の難易度だけで強さの優劣を決めてしまう。だからただ使えるだけで満足して天狗になる奴が九割だ。だが学園ランカーの基準は卒業までにしっかり能力開発した場合の技の完成形で評価している。すると当然難易度が高い技を持つ程伸びしろがあり強くなるだろうって事で学園ランカーに選抜される。学園ランカーは今だけじゃなく今後も多くの生徒の見本となる可能性が高い者を選んでいるってことだ。これは学年代表権限以上で見られる資料に書かれていた事実だ」
「なら生徒会長が赤城を学年代表に選んだ理由もただ近くにいて欲しいって気持ちとは別にちゃんとあったって事?」
「まぁそうなるな」
「ちなみに私が強くなるためにはどうしたらいいか教えてくれないかしら?」
「条件がある。今日から俺が自分の練習を本番までしなくていいなら構わない。早乙女だけでなく修行は平等にあの二人にもする。そうなると確率は低いが魔法が暴走したときにすぐに止められる状況の確保って意味で俺は基本見るだけとする。どうする?」
「考えがあるなら構わないわ」
「なら今俺が説明したことをあの二人に話してあの二人が理解したらこっちに連れてきてもらえるか。ただし俺と会長の秘密は言うなよ」
「わかったわ」
大和の考えはこうだ。
上手く伝えられるか見せてもらう。早乙女は今後クラスを導いていく立場の人間だ。だから教わるだけでなく教える事も今後を考えれば重要となってくるわけだ。
春奈が二人と一緒に大和の元に戻ってくる。
黒魔法使いは訳アリ生徒会長(美女)の告白を二度断った癖にその期待には応えようとしているみたいです 光影 @Mitukage
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