憂鬱な朝に

夏のネムノキ

特別な朝に平凡な空。

 また一日が始まった。憂鬱な朝だ。目覚まし時計が鳴る直前に起きた僕はアラームを止め再びベッドへと身をうずめる。さらに今日は日曜日。一見、日曜日とは嬉しいもののように感じるが僕にとっては休息のひと時が終わる最悪の日だ。夕方にはこの悶々とした気分はピークを迎えるだろう。

 いつも通りならベッドの中でスマホをいじり続けるところだが、なぜか今日はそんな気分にはなれなかった。さらにまだ残っている学校の課題に手を付けようとしている。僕は生まれ変わったのか?本気でそう思っているわけではないが変に納得している自分がいる。

 窓からの光を得るためにカーテンを開けた。僕はこの時何を期待したのだろう。美しい朝日で憂鬱な僕を励ましてくれてもいいだろう。そんなことを思っていた。生まれ変わった僕に対しての褒美として、贅沢すぎることはないだろう、と。

 外は期待していた美しい風景とは違っていた。結局空は平凡なもので、入り組んでいる雲に少しピンクがかった空が画用紙の下地のようにあるだけだ。

 僕は机に向かい課題を始めた。平凡的な空の光を浴びながら。

 僕はこの空を忘れないだろう。特別な朝に見た平凡な空を。

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憂鬱な朝に 夏のネムノキ @natsunonemunoki

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