第14話:昼の嵐
「こんにちは、ヨル君!つむぎちゃん! 」
「譜さん!こんにちは。さあ、どうぞ中へ」
「何よこれ」
「お昼ご飯!みんなで食べられたらなと思ってヨル君に連絡してたんだけど……」
「聞いてないわよ!? 」
「見せたろ画面」
「ぐぬぬ……!! 」
朝を食べて、数時間。俺の家に譜さんが降り立ったことで、(主につむぎが)何とも賑やかになった室内へと譜さんを案内する。
譜さんの持っているバスケットには手料理が入っているらしく、先程から良い香りを存分に振りまいていた。これは、腹に効く。
「良い匂い……!譜さん、ありがとうございます!大変だったんじゃないですか? 」
「ううん!丁度暇だったから」
「譜さん……! 」
譜さんの手料理、手料理かあ……。これは何度もご馳走になっているのだが、自分の語彙のなさが申し訳なくなるほどに美味しいのだ。ハンバーグ、ムニエル、グラタン、唐揚げ……あとお洒落で美味しいやつ……。
譜さんのこれまでの美味しい手料理を反芻してニヤついていると、バスケットを覗き込んだつむぎがふーん、と口にして言葉を続けた。
「鉄分たっぷり、って感じね。……吸う気でしょ、兄貴の血」
「ぶへ!? 」
「そ、それは……!!メニューを考える時の癖というか! 」
「兄貴、めちゃくちゃ狙われてるじゃない!!いいわけ? 」
「いいけど」
「! 」
つむぎの落とした爆弾に、譜さんがあわあわと慌てる。かくいう俺も取り乱したのだが、つむぎのお陰で事なきを得た。代わりに俺の言葉何故かにショックを受けたらしいつむぎが、譜さんにがっついた。
「何よ何よ!兄貴をすっかり丸め込んじゃって!私だって、私だって……! 」
「どうしたんだよつむぎ?何もそんなに……」
これは兄の彼女への嫉妬?にしては随分キツくはなかろうか。そう思って割って入ろうをした俺を、譜さんがそっと止める。
「?譜さん……? 」
「……つむぎちゃん、もしかして」
「ヨル君が、好きなの? 」
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え?好き?誰が、誰を?まさか、そんな。譜さんの言葉にそう思おうとするも、腑に落ちてしまう点が今までにいくつかあったような気がしないでもない。いや、あった。
「つむぎ……」
俺の、妹。といっても血は繋がっていない。とんでもなツンデレで、でも可愛いところもあって。兄としては目に入れても痛くない。そんな妹のつむぎが、俺を?
先程とは打って変わって混乱してしまった頭で、妹の名を呼ぶ。それに対してか、譜さんに対してか。つむぎが、徐に口を開いた。
「――」
完璧彼女の危険な秘密〜憧れの先輩が交際早々吸血してきた件〜 樹 慧一 @keiichi_itsuki
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