第13話:兄と妹の朝
「兄貴!起きなさい!朝だってば!! 」
「う、うるへー……」
朝。ご飯の匂い。そして、妹。
悲しいかな、妹が居座ってしまった1日目の朝である。
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「ったく大学で怠けすぎてるんじゃ無いの?こんな時間に布団から出てすら無いなんて」
「ああもううるさいなあ……あと5分……」
「駄・目!! 」
夏休みが始まって、だらりと怠けていたのだ。高校が夏休みに入ってばかりの若人リズムに着いていける筈もない。ないのだが、妹の猛攻は続く。
「あーあーもー駄目人間!!童貞!!泥棒猫のごはん!! 」
「何だ最後の!? 」
言って、思わず起き上がってから気が付いた。あ、負けたと。案の定、作戦勝ちしたつむぎがふふん、と得意げに鼻を鳴らす。
「兄貴、敗れたり!さ、ご飯作ってあげたんだから、あったかいうちに食べてよね」
「おう。……」
「何よ? 」
「ありがとうな、ご飯。嬉しいよ」
「は……はあああああ!?バッッッカじゃないの!? 」
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少し遅めだろう朝ごはんを食べて、一息。今日はどうしても譜さんに会っておきたかった俺は、スマホを早速取り出した。無論、約束を取り付けるためだ。
『逢いたいです。今日は時間ありますか? 』
他に何か打とうと思いつつも捻れど唸れど浮かんでこなかったので、送信。そうこうしていると、俺のスマホ画面を覗き込んでいたらしいつむぎがむすりと言葉を紡いだ。
「何よ、今日も泥棒猫のとこ? 」
「そりゃあ、プールの事件が昨日の今日だろ?様子を見ておきたいんだよ。無理してないか心配でさ」
「へーえ……」
「? 」
会話して、スマホに向き直る。
「お、『譜も逢いたいな』か……!! 」
「顔、緩んでるわよ童貞兄貴」
「そりゃ緩むわ悪いか!!さて、どこで会うかな……外、は疲れそうだしウチかな」
「泥棒猫んちは? 」
「いきなり行くのは迷惑だろ、準備もあるし。それに」
「それに? 」
「つむぎが1人になるだろ? 」
「!! 」
「つむぎも怖い思いしたろ。1人になんて出来るかよ。譜さんも同意見!ほら」
言い終わって、画面を見せる。プール事件に巻き込まれたのはつむぎだって同じなのだ。譜さんを気にするのは当然だがだからと言ってつむぎを今1人にしたくない。
それを譜さんも気にしてくれていたので、渡りに船だった訳だ。
その証拠をほら、と更にプッシュすると。つむぎがにゆ、と笑いを堪えるような何とも言えない表情になった。ははあん、これは。
「素直じゃないなあ。譜さんに気にしてもらえて嬉しいなら我慢しなくていいんだぞ? 」
「そうじゃないわよこの鈍感!! 」
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