海月と亡霊
この海の底は思っていたより喧しい
乳白色に輝く海老たちがどこもかしこも
忙しなく喋り走り回っている
ああなんて気味の悪い
ぼくがここに落ち着いたのは数年前のこと
その頃まだぼくは人間で
空気は酸素に満ち満ちていた
すれ違う人々の無関心に
ぼくの体毛はちょうどピッタリと適合していた
災いはわざわざやってくるんだ、
不幸のどん底にいる人の元へと
年老いた鯨の長老からそんなことを聞いた
左から右へと通り抜けるにも、
もう耳が退化してしまったから
言葉の響きは随分と長く
ぼくの内臓を揺らしていた
胃の内容物を吐こうにもこんなに暗くうるさい海底だもの
もどした分だけ、海水がぼくの身体に入り込んでくるだけなんだ
水圧と浸透圧のおかげで、
ぼくに残されたのは
すっかり海月のようになった魂だけだ
うらやましいかい
ここは、人間の来る場所じゃぁなかったみたいだ
ミッドナイト・ブルー @kakashi_miyabina
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