純粋すぎるあまりに周囲と馴染めず、消え入りそうな雰囲気の少女。
彼女に生を取り戻した、言ってみれば幼馴染の産土神の少女。
この二人が出会い、導き、導かれ、そして互いを認め合う物語です。
神様との交流ではあるのですが、『願事』『ご利益』という現世利益とは無縁の、人と神との交流が中心に据えられ、このために全体を通して清涼な雰囲気を感じられました。
人間の少女は、当初自身が周囲に溶け込めないことに悩み、迷うのを、神様がその言葉で諭し、導いていく様は、昔からの神様と人間の在り様を示すかの様。
作者様が作中に散りばめられた日本神話の雰囲気が、この作品の神話的な空気を上手に醸しだされ、それが先に書いた清涼な雰囲気を更に深めていると感じます。
欲と利益を追求するお話しに少し飽いて来たら、少しリズムを変えて、ゆったりと本作のような清涼な空気を楽しんでみてはいかがでしょうか。
良作だと思いました。
主人公・実菜穂は、引っ越しをきっかけに環境になじめず、心がすり切れる寸前だった。
進学、就職、結婚。誰しもが実菜穂と同じような経験をし、疲弊や不安を感じたことがあると思います。
そんな時どうすればいいか困ったなら、この小説にその答えがあるかもしれません。
幼い頃、よくいっしょに遊んだ少女・みなもと再会し、実菜穂は少しずつ前を向けるようになっていきます。
みなもの優しさ、的確な助言、飾らず寄り添う姿。それに応えようと一生懸命になる実菜穂。ふたりを見ているうちに、読者はやがて、励まされているのは実菜穂だけではないことに気づくでしょう。
順風満帆に見えた実菜穂とみなも。
しかしみなもは、ひっそりとある決意をしていた――。
ふたりの行く末をどうぞ、確かめてみてください。