初雪のヒト

ウーピン

── 初雪のヒト ──

以前、テレビで幻の初冠雪と言うニュースをやっていた。


なんでも初冠雪と言うのは ─── その年の最高気温を観測した日を過ぎた後初めて山頂に雪が積もって白くなること ─── をそう言うのだそうだ。


そして、初雪と言えば私がまだ学生だった頃に面白い体験をした事がある。


当時わたしは高校生で運動系の部活をしていた。

毎日放課後と土日に冬休みも朝から夕方までと忙しく部活をこなしそれに加え夜も個人で練習をしていた。


当然、家へ帰る頃にはヘトヘトである。


冬のある寒い日私はいつものごとく疲れきって帰宅し食事と入浴を済ませ自室に入った。

押入れから引っ張り出した布団にもぐ込み眠りに就いた。


眠りについてどれ位の時間が過ぎただろうか・・・。

気が付くと誰かに私の肩をトントンと小気味よく叩かれる感覚を覚えた。


─── ??


ふと顔を上げると足元に立っていたのはおそらくは自分と同じ位の年齢と思われる男性だった。


そのヒトはカーテンの隙間から漏れる外の明かりに照らされ暗闇の中に静かに立っていた。

それはまるで暗い影だけがソコに佇んでいるかの様である。

そして、静かに。ただただ静かに私の事を見つめているのである。


はじめはいつも深夜に仕事から帰る父かと思ったがどうやら違うようだ。


少しすると私が顔を上げた事に気付いたのか窓の外を見るようにと優しく促してくる。

しかし、私は連日の疲れもあり「分かった。明日見るよ」窓の外を見る事無くまた眠りについてしまったのである。


翌日の朝、昨夜の出来事を思い出した私は一体何があったのだろうとカーテンを開け外をみるとソコには庭一面に広がる銀世界があった。


地元では希にみる大雪の日だったのである。

しかもその年初めての雪だった。

きっとカレはこの景色を見せたかったのだろう。


あの影の正体を思う時、私には一つだけ思い当たる事がある。


実は、私には生まれて来る事が出来なかったが弟がいたそうだ。


だから、もしかするとあの影の正体は・・・と、そう思えて仕方がない。


私は雪を見るたびに思い出す。

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