ふたりの兵衛&上月氏 👘

上月くるを

ふたりの兵衛&上月氏 👘



 黒田官兵衛。

 竹中半兵衛。


 ひとりは、信長から遣わされた秀吉に自らの姫路城を「差し上げます」と言った。

 ひとりは、自らを阿呆呼ばわりした稲葉城主を討ったのち「城を返す」と言った。


 無欲恬淡、その心は水のごとく平らかに澄み、なにより、人としての含羞はにかみを知るふたつの大器は、揃って秀吉の参謀に抜擢され、「両兵衛」「二兵衛」と称された。


 反旗を翻した荒木村重の伊丹有岡城を訪ねたまま牢に幽閉された黒田官兵衛の謀反を疑った信長は、人質として留め置いた子・松寿丸の殺害を命じたが、竹中半兵衛がひそかに美濃菩提山城に匿ったため、のち、信長は己の浅慮を悔やまずに済んだ。


 生来、病弱な半兵衛は、伊丹有岡城の陥落で官兵衛が救出される5か月前に没した(享年35)。のち、そのことを知らされた官兵衛は、長い期間、劣悪な環境に閉じこめられていたため骨と皮に瘦せ衰えた身体をふたつに折って「自分に似た者がこの世にひとりはいてくれることが支えだったが、これからは……」と言って号泣した。


       *


 歴史に興味が薄かった若いころ、読み始めては頓挫していた司馬遼太郎さんの著書によって、たいへん遅ればせながら尊い事実を知ることになった上月くるをは「われこそ、わが家こそ」と行動の規範をエゴに置きがちな人界にあって、同時代・同年代に出現した類いまれな傑物へのリスペクトに、うちふるえているもようにてござ候。


 そのうえ、両兵衛ゆかりの城の名称がまた、なんという奇縁でござろうか。🏯


 ――播州佐用郡上月城ばんしゅうさよごおりこうづきじょう(城主・上月蔵人政範こうづきくらんどまさのり)。


 と申しても、その弱きことなんの自慢にもならない城にて……同じく播磨国はりまのくに同郡の佐用城(城主・福原主膳助就ふくはらしゅぜんすけなり)と組んで天下取りを狙う織田信長に反旗を翻し、五感と第六感が度はずれて鋭敏な信長に篤い信を置かれていた(そのように仕向けた?(笑))秀吉麾下ひでよしきかの両兵衛に討たれる(播州上月の陣)のではござるが……。


 さような不都合な事実をつゆ知らぬ浅学の哀れさ、本姓&亡き犬の名繋がりにて「宝塚の男役の如き」と評さるるチャラい筆名をば、自らに付した次第にてござ候。


      *


 だからなに……? と仰せられても、それがし、いささか返答に窮するのでござる。

 元旦のお屠蘇とその酒肴に、拙筆名に尾鰭おひれをつけてみたかっただけのことにて……。



      ****



 さてさて、あらためまして、2022年、あけましておめでとうございまする~。

 

 ――1月やきれいに生きてゆきたけり


 当月生まれの上月くるを、新年を言祝ぎ拙い句を掲げ、カクヨムご朋輩方のご健勝ならびに、ますますのご健筆をば、心よりご祈念申し上げる次第にてござ候。🙇🎍

 

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ふたりの兵衛&上月氏 👘 上月くるを @kurutan

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