未経験のまま、中学校から水泳部に入った主人公と、先輩の霊愛模様を描いた短編は、ちょっと色々な事を思い出さされました。
カテゴリーの霊愛、タグにある青春…それらから、まず想像するのは、神様からある程度の寵愛でももらった男女でなければ回せない雰囲気ですが、この物語が凡百の物語でないところは、それら寵愛――ルックス、経済状態などへの過度な言及はないに等しい点だと感じました。
描写は部活の様子に比重が置かれ、それ故に、どこで二人が惹かれ合ったのかも明確に記されている訳ではないのですが、そこに私は最も強く魅力を感じさせられました。拙い経験しかないですが、私も好きだった人を思い出して見たら、「どこから好きでしたか? ハッキリと意識したエピソードは?」と質問されても「わかりません」としか答えられないからです。
その点に、青春の一コマとしての恋愛というリアリティを強くしている…また、多くの人にとっても、自分の経験にある等身大の恋になっているのではないでしょうか?
誰もが経験していく、また経験してきた思い出を刺激してくれる短編です。