僕は勇者になんか、なりたくなかった。

 

 

 

 なりたく……なかったんだ……。







 今、世界は大混乱に陥っている。なぜなら、魔王が復活したから――。


 そしてその影響により、魔族や魔物たちが力を増大させ、各地で暴れている。


 人間は必死に抵抗しているけど、その圧倒的な力の前に大苦戦。そんな時、白羽の矢が立ったのが十四歳になったばかりの僕だった。


 というのも、今から三百年くらい前、世界は同じような状況に陥った。その際に魔王を倒して世界の危機を救った勇者こそ、僕のご先祖様なのだ。



 だけど――



 僕はご先祖様じゃないし、戦いだって嫌いだ。そもそも剣も魔法も満足に使えないし、知識に長けているわけでもない。井戸の水を汲むのでさえ息切れするくらいに体力が乏しいのに、モンスターなんかと戦えるわけがない。おそらく村で暮らす農家のお姉さんたちの方が強いと思う。


 それなのに『勇者の血を受け継いでいる』というただそれだけの理由で、僕は否応なしに勇者にさせられてしまったんだ……。



 明日の朝、僕は生まれ育ったこの山奥の村『トンモロ村』から勇者として旅立つことになっている。部屋の片隅には村長様が用意してくれた真新しい旅の装備一式が置いてあり、それを見るたびにため息が漏れてしまう。



 何もかもが怖い……。



 ここは岩山と岩山の狭間にあるわずかな平地を開墾して作られた村で、ほかの村や町との交流はあまりない。たまに交易商人さんが訪れたり、物資の売り買いで村のおじさんたちが行き来するくらいだろうか。


 当然、僕は村を出たことなんてない。せいぜい近くの森へ薬草を採りに行くくらいで、外の知識は古ぼけた本や村のみんなから聞きかじった程度だ。それなのにいきなり世界を救う旅へ出なければならないなんて……。


 一応、今日の夕方までには村長様がおカネで雇った傭兵たちが村に到着する予定になっていて、当面は彼らが僕の旅のサポートをしてくれるらしい。


 ……でもそれだって僕にとってはストレスだ。見知らぬ人たちと寝食をともにしなければならないんだから。うまくやっていける自信どころか不安しかない。


 あぁ、魔王が階段で足を滑らせて転落死するとか毒キノコを間違って食べて中毒死するとか、不慮の事故で亡くなってくれたらなぁ。



 …………。



 そんなことが起きるわけないか。世の中、そんなに都合良く出来ていない。


 だったらいっそ僕自身がなけなしの勇気を振り絞って、この運命を回避するように行動してみるか。残された時間はあと半日しかないんだし、決断するなら今しかない。



 さて、どうしようか?



●村の外へ逃げ、森の中で隠れて暮らす……→18へ

https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429435179385


●ナイフを使って自らの命を絶つ……→23へ

https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429435256014


●異世界に転生できるよう神様に祈る……→26へ

https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429435303496


●やっぱり何も出来ない……→45へ

https://kakuyomu.jp/works/16816700429434671245/episodes/16816700429435644277


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