眠れる乙女……本当に眠っているわけではないけれど、主人公……ヒロインはまさに眠れる乙女。
優秀な魔法使いの家系に生まれ、魔力は持っているにもかかわらず、それがまったく使えない。
だれかの役に立ちたいと思いつつ、その「役に立つこと」が自分や周りにどんな影響を及ぼすのか、そこには思い至らない。
「無能だから、世間知らずだから」とまぶたを閉じて居竦まっている……まさにスリーピング・ビューティー。
そんな彼女が人と出会い、目覚めるまでの物語。
強欲な王や百戦錬磨の戦略家の王子、彼女を利用しようとする勢力……目を見開いた彼女が見るのは、大好きな人と、ちいさな家、そんな優しい世界だけではないようですが、今はただ、花開いた彼女の成長を見守ろう、そんな温かい気持ちになるお話です。
ネヴィレッタは魔法騎士として有名な家に生まれたというのに、まったく魔法が使えない。
家族どころか、召使たちにも虐げられて過ごす彼女は、「自分にもなにかできないだろうか」と考えた末、王子に頼まれるまま、最強の魔法使いと言われるエルドを騎士団に引き戻すため、説得に向かうのですが……。
とにかく、冒頭から、ネヴィレッタを応援したくてならない!
あんた、もう少し自信を持ちなさい、と励ましたくなると同時に、彼女を傷つけるやつらに腹が立ってならない。
家庭って、閉鎖されているので、外に出ない限りは、「これが普通」って思っちゃうところがあるんですよね。家族の言うことを、信じちゃう。
「その家庭、その家族、変だよ! あなたにとって有害でしかないよ!」と、言ってやりたいけど、本人が外に目を向けない限りは、気づかない。
そんな彼女が初めてなんとか触れ合おうとしたのが、この国最強の魔法使いエルドでした。
彼、良い人なんですよー。もう、めちゃくちゃいい人。
出会いは最悪だけど(笑)
そして、最悪と言えば。
主人公ネヴィレッタの妹ヴィオレッタ!
この小娘……っ。この小娘が……っ!!
めちゃくちゃ腹立つんですよ!!
第10話なんて、私、物語の中に入って、どつきに行こうかと思った。
こんな性格の悪い女、みたことない!
だからこそ、ざまあ展開になったとき、すかっとしましたよ、ええ。
作品は十万字を超えていますが、とても読みやすく、文字数を感じさせません。
ぜひぜひ、ご一読を。