第37話 エピローグ 永遠の思い出とずぅっと一緒


 皆人の部屋にパジャマ姿の二人が上機嫌に登場。


「いやぁ、いいお湯でしたねぇ」

「そうだな」


 退院した日の夜、急に一緒にお風呂に入りたいと言ったユイの要望に答え、今、皆人は両親が外で“さすまた”と一一〇番通報の準備をする中でユイの背中を流してあげたところだ。


「しかしながら私の体に一度もボッキしないとは、少々自信を失ってしまいますね」

「ぬはははは、日頃から武美の爆乳を見続ける俺がユイ如きの刺激を我慢できないはずがないだろう」


 ため息をつくユイに勝ち誇る皆人だが、


「我慢ということは欲情はしてたんですね?」


 皆人はヒザをつき崩れ落ちた。


「さて、今日はこれから何を……む?」


 本棚の中に以前静葉の家からお土産にもらった雑誌、週刊少年スカイを見つけて、ユイの中にある欲望が膨らむ。


「おじい様、たしかこの雑誌の前の号をお持ちですよね?」

「え? ああそれなら持ってるけど読みたいのか?」


 言いながら机の横に積んでいる雑誌類から少年スカイを引っ張りだしてユイに差し出す。


 その表紙を見るなり、一目で分かるほどユイはソワついた。


「おじい様、お願いがあるのですが」

「珍しいな、俺にできる事ならなんでもしちゃうぞ」


 頭を撫でてやると途端にユイの顔がとろけるが、すぐに顔を振って我を取り戻し、差し出された雑誌を指差す。


「こ、この雑誌を読んで聞かせてください」

「へ? 少年スカイを読んでって……あぁ」


 それで皆人は全てを悟り、ベッドの上に座ると両足の間にユイを手招きで呼んだ。


「じゃあ読むぞー」

「はい」


 小さなユイに覆いかぶさるようにして後ろから手を伸ばして少年スカイのページをめくり、皆人は一番最初に載っている漫画から順に呼んで聞かせる。


 未来の皆人がどのように読み聞かせているか、一切教えていないのに、ただ『読んで聞かせて』と言われただけで三波皆人は迫真の演技で効果音ごと漫画を読んでくれる。


「『くらえ! これが俺の新技だ!!』ズドドドーン!『ぎ、ぎゃああああ、まさかこの俺様がぁあああああ!!』」


 声こそ若いが昔と変わらない、未来と変わらない、全てのページを記憶の中にある愛する人と同じ声、同じ演技で、同じ解説付きで皆人はユイに読んで聞かせる。


「それでこの話が雑誌に載った時だから先週な、2chでご都合主義スレッドが立ってたくさん批判の書き込みがあったけどこの漫画今週表紙飾ってたろ?

実写映画化発表の巻頭カラーで盛り上がって2chでも先週のが嘘みたいにみんな褒め千切ってるぜ、そうだ、みんなで映画観に行く約束したから、そしたらユイも行こうな」


 言葉だけでは無い。


 ぽん、と頭の上にアゴを乗せて来るその人の温かみ、匂いも、全部自分の知っている通り、一〇〇年間の壁を隔てても変わらない大好きな皆人おじいちゃんに包まれて、ユイは自然と体が楽になって、皆人にもたれかかって体を預けた。


「うん♪ おじいちゃん、ユイ楽しみにしてるね♪」




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22世紀から猫耳少女が来ましたよ 鏡銀鉢 @kagamiginpachi

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