第30話 最後まで全裸ですか?
俺は手から水の壁を作りだすと、炎を受け止める。
ジュワァアアアア‼ と派手な音を鳴らして水の壁は蒸発……しきらずに俺を防護。
俺は迂回して二人へさらに接近する。残りの距離はおよそ五〇メートルだ。
「嘘!? なんで蒸発しないのよ! このこのこの!」
不知火はヤケになって、火炎弾の乱れ撃ちだ。
俺は水の盾を作ると、その全てを防ぎきる。
「ライデンフロスト効果。熱源が高温過ぎると水蒸気の層が熱伝導を邪魔して、逆に蒸発しなくなる」
八月朔日が、らしくない荒い声を出した。
「待ちなさい! それなら知っていますが、ライデンフロスト効果が起こる限界温度は三〇〇度。それ以降はまたすぐに蒸発するはずですわ!」
「残念だけど限界温度は水の量、質、温度によって大きく変わるんだぜ!」
不知火は舌打ちをして、悔しそうに眉間にしわをよせた。
「不知火さん。貴女の最大温度で水蒸気ごと消し飛ばして下さい」
「ガッテンよ! 喰らいなさい新妻! ヴォルケーノ・バーストォ!」
かざした手からは、黄色と赤の混ざった超高熱エネルギーの塊が放たれる。
小屋ぐらいなら吞みこんでしまいそうなサイズには冷や汗が出るが、俺はあえて言わせて貰う。
「待ってました!」
俺はあえて、薄く張った水の壁を前に放って、炎にブチ当てた。
薄い水は不知火の最大温度。二二〇〇度の炎で瞬間的に沸騰。水蒸気爆発を起こした。
不知火と八月朔日が悲鳴をあげた。
予想していない爆発に白い煙。
その隙を俺は見逃さない。
靴の裏から水流を発生させると、その反作用でジェットのように飛んだ。両手からも水流をだして姿勢を調整。
大きく孤を描いて飛んだ俺は、不知火と八月朔日の真後ろに着地した。
「「ッ!?」」
二人が振り返った時はもう遅い。
俺は今日二度目で、コツを掴んだ純正水を大量に造り出す。
二人の胸元に手をかざして、激流を放った。さすがに俺の力は水圧で吹っ飛ばすことはできない。けど、不知火と八月朔日は一メートルぐらい離れた所で尻餅をついて、背中を床に打ちつけた。
この一撃だけで半喪失状態は無理だろう。
けど二人は、最大出力で力を使っていた。
その消費分も合わせれば勝て――
「~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ‼‼‼」
俺は、目の前で大の字になって倒れる二人を見て、体のある部分から大量に出血した。
ここで防護力について説明する。
防護力とはセカンドが持つ生命保護機能だ。
だから生命保護に関係ないものには働かない。
防護力の効果は、肉体、髪などの体毛、衣服や下着の順に弱くなり、手に持っている道具には効果が無い。だから、長く伸ばした髪を鉄壁の盾にする、という事はできない。
俺は二人を傷つけたくないと念じながら、女の子の命である髪の毛を溶かさないよう、首から上には水をかけなかった。
けど、でも、逆に、首から下は、皮膚以外のスベテが溶けてしまっていた。
あえて言おう。
日本の人気ナンバーワン美少女歌手と、想い人であるお嬢様が、俺に全裸を晒していた。
俺の鼻からは、とめどなく鮮血が流れ続ける。
全神経を、二人の裸体を記憶する事に集中させて、心臓が破裂しそうなぐらい暴れ回っているがどうでもいい。
限界以上に両目を開いて、俺はまたばきすらしなかった。
不知火の、程良く豊かなバストや腰にふとももが。
八月朔日の、完璧すぎるほどにバランスの取れたボディラインが。
俺の全神経を焼きつくして血液を沸騰させた。
半喪失状態で、ぐったりとする二人は、薄く眼を開けると上体を起こした。
二人の胸がやわらかく揺れる。
うつろな目で俺を見上げると、二人は首を傾げる。
「あんた……なんで鼻から血ぃ出して――!?」
「ワタクシ達が、どうかしまし――!?」
自分達の格好に気付いて、半喪失状態にも拘わらず二人の両目がばっちりと空いた。
「「イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアん‼‼」」
悲鳴を上げられても、なお俺は二人から視線を離せない。
不知火と八月朔日は片手で局部を隠すと、もう片方の手を俺にかざした。
「「見るなぁあああああああああああああああああああああ‼‼」」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼」
全身を灼熱の炎と雷に喰い尽くされて、俺は意識を失った。
うすれゆく意識の中、遠くから心愛の悲痛な声が聞こえる。
「わ、わたしだけのアドバンテージがぁ……」
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紹介文通り、ここまでです。
人気があったら、本格連載したいです。
キスから始まる異能バトル 鏡銀鉢 @kagamiginpachi
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