第3話「停止の七支刀」(後編)(終)




――飛んでくる分銅も、嘲笑う不死も、弄ばれる死体も。


 今の俺には関係がない。どうでもいい。

神に祈ることだって、必要ない。


 自らの策の失敗の懸念など、一切ない。

自分の打つ手は、必ず上手くいく。そう信じるだけ。


 もし。いや、たとえ。

例え上手くいかなかったとしたら、"死ぬだけだ"。


 死ねばそれでおしまい。

死ねばしがらみも苦しみも一切ない。


 だから、俺が生きているなら。生きてさえいられるなら。

俺の作戦がうまくいかない可能性など、存在しない。



 不死は掠れた大声で喚きながら、

必死で切れた糸を手繰っている。


「な…なんで?

なんで心臓を操る糸が切れてるンダ!?

そんな馬鹿な!突然心臓が無くなるはずないゼ!!」


「…やっと、か。ふう~。焦ったぜ。」


「おっ!お前!俺の大事な死体に何したンダ!?」


――"遺物"(レリック)。

 改造系特化や創造系特化で変質した物体の通称。

特化で作られているので一般人にも使える。


 この弾丸型遺物に込められた特化は、"撃ち込まれた人間の心臓破壊"。

発動条件は不明、さらに極めて効果発動まで時間がかかるが、

何とかギリギリ間に合ってよかった。


「こんなものがゴロゴロ手に入る第三大陸…

絶対に行きたくない…な。」


 血を吐く。もう限界だ。あの二人の特化が消えたとはいえ、

これ以上歩くことも、戦うこともできない。

 肉体の疲労が頂点に達している。

加えて下腹部の狙撃、軽い脳震盪、肋骨骨折、病気による各部位のダメージ。

今、目を開けているのが精いっぱいだ。


 投げ込まれたコートの中に仕込んであったアドレナリンを注射し、

なんとか立ち上がろうとする。


 不死は叫ぶ。

「面倒な!だが、まだ司教の死体は残ってる!

お前はその肉体で、武器はもう持てない!

俺には狙撃銃がある!損害は大きいがこれで俺の勝ちだ!」


――俺のできることは、ただ一つ。


 不死は、あきれた様子で口を開いた。

「…オイオイ。お前…諦めるのか?」


 俺はただ、投げ込まれたコートを羽織っただけだった。


「この司教の特化ってあくまで認識阻害だぞ?

ちゃんと銃を見つければ持ち上げられるし撃てるだろ。

ま。持っても見えないし、触った感触や重みすらないんだがネ」


…俺のすることは、もうない。


「はあ。残念だ。同じ弱い特化を持つ者同士

仲良くしようと思ったのニネ。実にザンネン!

まー別にどうだっていいが。俺生き物に興味ねンだわ」


 左腕の手の平を見る。

…やはり、手に持っているのがわかる。


「止めだヨ黒森。割と楽しかったゼ!

(仮に銃を持ってたとしても、意味ないけどネ。

俺は脊椎と頭部しか本体がない。

首から下がいくら傷ついても替えが効く。

いやはや実に便利!美少女受肉サイコー!)」


 これさえあれば、大丈夫だ。

四肢の枷も、肉体に染み付いた病も、もうない。


「残念だったネ黒森ィ!死体ははく製にしてやるヨ!!」


 狙撃の態勢に移った。

狙撃銃自体は見えないが、持っているのはわかる。そして…


――その態勢では、これは躱せない。


 不死は余裕をもって俺の"切り札"を避けた。


「はぁ…随分へろへろな投球フォームだネ。

簡単に躱せたよ。じゃあ死ぬといい…」


 そう。この切り札は"直撃しなくてもいい"。

むしろ、"簡単に躱され"てからが本番なんだ。



「オイ待て、この瓶は何が入って…」



――瞬く間に、奴は炎に包まれた。


「アッ…アアアアア!!コレは!!」


「衝撃で発火する、特製の火炎瓶さ。赤尽の時も役に立った。

コートの中に仕込んだ"火炎瓶"…割れていなかったのは幸運だな」


 赤尽を包囲するためにも使った火炎瓶は、

発火の直前に周囲にガソリンをまき散らし、瞬く間に揮発する。

直撃せずとも、半径2mほどなら、当然誤差の範囲内だ。


 不死は必死に騒ぎ立てる。

「や、焼ける!!俺の本体は頭蓋骨と脊椎だけダ!

少しでも焼け落ちてしまったら致命傷にナル!!」


 

「割と小型だから、かなり持てるんでね!

コイツも俺からのサービスだ!!」


 先ずは司教の死体に向けて思いっきり一発。

不死がひるんでいる隙に追加で二発。

司教の心臓が腐り落ちて、銃が見えるようになった。


 機関銃は、想像以上に近くに落ちていた。

残弾は20発ほど。十分すぎるほどある。


「さて…殺しあおうか?お互い弱いもん同士よぉ。」


 不死は、その姿を露わにしていた。

不気味な蛇のような姿で、のろのろと這い回る。


「ヒィーッ!!ニ、逃ゲナクテハ!!」


「逃がすか…!」


 追跡の意志は固い。

これで必ず終わらせる。

頼りの武器と、確固たる信念をもって、

今、歩を進めようとした。



 だが、肉体の限界はいつも唐突で、

本人の意思とは関係なく訪れるものだ。


「うッ!!ごふ…!!」


 血が噴き出る。血を吐き出す。

肉体の限界はとうに迎えている。

もう一歩も動けない。


「そんな…バカ、な」


 どんどん、敵の影が遠ざかって、小さくなっていく。

刻一刻と目標は遠ざかるのに、何もできない。


 "このまま、逃げられてしまう。"

意識はあるのに、体は一切動かない。


「…クソ…ッ!待…てえええ!!」

――――――――――――――――――――――――――――――

 待テ、ダト?

馬鹿カ!待テト言ワレテ素直ニ待ツ奴ハイネーヨ!


 クソッ!死体サエアレバ!

ドッカニ都合ヨク特化持チノ死体ガ転ガッテレバイインダ!

ンナーンテ、都合ノイイ話ハネーヨナー!!


――待テ。

ナントイウ奇跡ダ!


 死体ガイル。

特化ヲ持ッタ死体が!

コンナ裏路地ニチョウド良ク!


 ヤハリ俺ハツイテイル!

今!殺シテヤルゾ黒森ィ!!


「縋リ憑ケェェエエエ!!

『死者ノ行進』(アンダーグレイブ)!!」


 俺ノ脊椎カラ延ビル神経ノ糸ガ死体ノ心臓ニ取リ付ク!


「ン~。ソレニシテモ、芸術的ナ少女ノ死体ダ。

死体トハカクアルベシ、イトヲカシ。

身ニ着ケタボロ布モ最高ダ!」


今後ハコノ肉体ニ入レ替ワルトスルカ。


「…ダガ。ソノ前ニ。」


「コノ女ヲ操作シテ動ケナイ黒森ヲ狙撃シテヤル!!」


 サアサア、今スグニ…

――アレッ?


「ねえちょっと。やめてくれる?」


「――エッ?」


 心臓ガ、動カナイ。

万力デ固定サレテイルミタイニ、動カナイ!!


「胸の奥がぞわぞわするから、やめてほしい」


 ガシッ、と、俺は脊椎を掴まれた。

――――――――――――――――――――――――――――――

「ア…!?テメェ…!?死体!?エッ!?

デモ…生キテル!!ナゼユエ!?」


 メイ。ダメだ。それはダメだ。


「シ…死体ガ!意志ヲ持ッテハナラネェンダ!!

オ前ハ物言ワヌ美シイ死体ガ相応シインダ!!

死ネ!!今スグ死ネエエエエエ!!!!」


「違う。私は、確かに生きてる。

私は今日から、生きることができるようになった。

たった今、確かに自分の意志で立っている」


 声が出ない。なにも、できない。


「あの人の、助けになる。

与えられた恩は、きっと返す。

その為に、私は今、自分の意志で貴方を殺す」


 君は、人を殺しちゃ、ダメだ。

「や…やめ…」


 凍っていく。メイが触れたところからどんどんと、

脊椎から頭蓋骨まで、霜が静かに昇っていく。


「ヤメロ…チ…チカラ…ガ…ヌケ…」

「それに」


 そして、それは。

 迫りくる死のように、冷淡に言い放たれた。


「私より先に、死体が相応しいのは。貴方だから」



「蒼白の騎士(ペイル・ナイト)」



 直後、ガラスの割れるような音が鳴り始めた。


「アア…最悪ダ…体ガ…凍ル…

セッカク最高ノ死体ニ会エタノニ…

酷エ…詐欺ジャ…ネエカ…ヨ」


 醜い骨の蛇は、全身が凍った後、

氷塊が砕ける音とともに、塵のように消えて無くなった。


――ああ。

これは、ひどい気分だ。


 父さんは、だから俺が、初めて殺しをしたときに。

あんな、辛そうな顔をしていたのか。



 メイはすぐに、こちらに近寄ってきた。


「…裂さん。歩ける?」


「…そこの、ロープを、取ってくれ…

僕の体に結びつけて引っ張ってくれ…動けない」


「…」


「…」


「言いたいことがあるなら言って」


「言う必要はない」


「そう。なら運ばない」


「お前なぁ…」


「わかった。わかったよ。はぁ…

君に、殺しをしてほしくなかっただけだ」


「それじゃ、私は貴方の力になれない。

それにあの時、私が動いてなければ…」


「分かってる。分かってるんだ。

僕は間違ってるよ。僕の我儘だとも!」


「裂さん…ううん、裂。それは違う。

貴方の力になる、っていうのは私の我儘でもあるから」


「…そうか。それも、そうだな」

「君は…メイは何だと思う?家族ってさ」


「…今はまだ、明確に答えは出せないけど、

防弾コートを投げ込んだ時、少し思ったことがある」


「家族は、いつもそばにいることは出来ないから


――たとえ離れていても助け合う関係のこと、だと思う」


「ふん。そうか。

…明日からは、お前に、殺しの技を教える。

厳しく行くから、覚悟しろ、よ…」


「…裂。ありがとう」


「…」


「裂。…裂?

あの、裂…悪い、けど」


「運んでる最中に気絶されると、重い」

――――――――――――――――――――――――――――――

 気絶した裂を、ゆっくり運ぶ。

この体格からは想像もできないほど、重い。

筋肉量の問題でもあるのだろう。


「…それはそうとして、」


 目の前に聳え立つのは、路地裏の出口に、

"メルトダウン"で熔けて出来た壁。


「これ、壊すの時間かかりそうだなぁ…」


 途方に暮れていると、向こうのほうから声がする。

優しい青年のような、耳当たりのいい声が聞こえる。


「家族とは、助け合うモノ、ですか。

ええ、ええ。正にその通りですとも、お嬢さん」


「少し後ろに離れたほうがよろしいか、とッ…!」


 突如、壁に光が差し込む。

左と右、両方同時に縦方向の光が走ったのち、

今度は6本の光の筋が、右から左に駆け抜けた。


 所作が早すぎて、得物は分からなかった。

瞬く間に壁が崩れる…と思ったが、壁はまだ崩れない。

 すると、その青年はブロック状に区切られた壁を

1つずつ取って、壁に道を開けた。


「大丈夫ですか?こんなところで…

むっ!その青年の傷は一体…!?まさか君たちも…」


 外はいつの間にか日が昇っていた。

眩しさに目が慣れて、青年の姿を見ると…。


「君たちも、特化を持っているのですか?」


 どこかおどけた狸の面を被り、使い込まれた笠も頭に被って、

ボロボロの蓑を着た、(言っては悪いが)貧しそうな旅人だった。


「わぁっ!そうなんですか、私特化持ちの

人と知り合いになるのは初めてなんですよ~、ええ、ええ!」


 お世辞にも…強そうには見えない。


「…ともかく、助けてくれて有難うございます」


 信用に足りる人物かどうかはわからないけれど、

敵意のようなものは一切感じない。感謝は伝えておこう。


「いえいえこちらこそ、っと。そんな場合じゃなかった。」


 狸面の男は、気絶して引きずられている裂のほうに目をやった。


「青年のその傷、気絶するのも無理はないでしょう。

まずは街で適切に治療を受けましょう、今すぐに。

後遺症が起きるかもしれません。応急手当はしておきましょうか」


 そういうと男は、手際よく医療用の包帯を取り出した。

あの蓑の中には色々スペースがあるようだ。


…信用云々は置いておいて、

今は裂を一緒に助けるべきだ、と考え直す。


「私も、手伝います…応急手当。

以前、本で読んだことがあるんです」


「そうですか。いい妹さんを持ちましたね、君? 聞こえてないと思いますが」


「…こっちにも、包帯を渡してください」

「ええ、ええ。分かりました。ふふふ」


 妹ではないのだが、そういうことにしておこう。

ふと、後ろの潰れた路地裏を振り返って見る。


 …空中に浮かんでいたブロックは、やっと音を立てて崩れ落ちた。

――――――――――――――――――――――――――――――

「…そろそろ、意識が回復しそうですね」


「ん…」


「裂、起きた?」


「…俺は、また気絶してたのか。

…ッ!?誰だ!」


 見知らぬ男の姿に臨戦態勢に入りかけた…が、

自分の今の状態を静観し、押しとどめた。


 何だこれ…妙に綺麗な包帯が巻いてある。

どうやら俺は誰かに治療を受けたようだ。


「アンタが俺に応急手当を…?」


「私はただの旅人です。応急手当はほとんど彼女がやりました。

いやはや、私ですら知らないような治療法を持ってて驚いた!

手際のほうは…まあ、初めてだったから仕方ないですが」


 体に巻かれた包帯のほとんどは、

妙に折れ曲がっていたりしわくちゃだったりした


「…ごめんなさい、その…」


 だが、きっちり包帯が巻かれているよりも、

こちらのほうが治りが早そうな気すらした。


「いや、ありがとう。うれしいよ」


「旅人さんもありがとうございます。貴方が俺たちを裏路地から

出してくれて、運んでさえくれたとは感謝の限りです」


 なぜか少し遅れて、メイが口をはさむ。


「…裂、なんで私が運んでないってわかったの」


「メイ、お前の肉体は、治りが早いだけで

出せる力は虚弱体質の人とほぼ同じだからだ。

それを知っていて、無茶をさせて悪かった。

そこの人も、さっきは誤解してすまない。」


「いえいえ、こちらこそ分かりづらくて申し訳ないですとも!

ほら、私こんな怪しい仮面被った貧しい農民っぽいですし。

まあそれはさておき、今から君達を街に届けるつもりですが、いかがです?」


「えっ?そこまでしてもらわなくても…と言いたいのですが、

生憎俺もまだ動けません。願ってもないです、重ね重ね恩に着ます」


「私も感謝します、狸面の人。この恩は必ず返します。

それで、乗り物はどこにあるんですか…?」


 確かに、この辺りは廃墟どころか荒野だ。

見渡す限りの大地はひび割れて、近くに乗り物など、どこにも…



「乗り物?ははは。そんな遅いものには乗りませんよ。

第一大陸製のミサイルじゃあるまいし。ふふふ」


「「えっ?」」


「街まで52km、ですか。うん、じゃあ近場まで約12.6秒ですね。」


「「待ってください、今なんて?」」


「あ~。そっか、説明を忘れてました。

『摂理武術』っていう武術がありましてね?

私はそれの"方"だけ多少使えるんですよ、はい説明終わりです」


「というわけで、暴れないように先に気絶させますねー」


 首筋あたりに強い衝撃を感じ、

そこで俺の記憶は一時寸断された。

――――――――――――――――――――――――――――――

「うーん、12.4秒でしたか。成長を感じますね!

皆さん!着きましたよ!降ろしますね~!」


――ふと。

鐘の音が鳴り響いた、かのように感じた。


「僕…もう十分…頑張ったよね…」


 やっとのことで正気に戻る。


「あれ?なんで僕生きてるの…そうだった!!

すみません!!!その移動案は却下…って、あれ?

もう着いてる???これ夢????」


 辺りを見回すと、まだ荒野だったが、

前方2km程度のところに、街が見える。


 ふと、旅人に降ろされたその場で、

まるで生まれたての小ジカのように

脚をプルプルさせているメイが見えた。


「れ…れれれ…裂…私…

私、気絶、しなかった。その…その…

視界が、一気に、白黒になって…

本当に、死ぬかと、思った」


 旅人の男はびっくりした様子で言った。


「それ本当!?ごめんなさい!

これ以上やると脊椎に後遺症が残りそうでして…」


「と、とにかく。もうやらないでください、さっきの」

「同感だ…もっとゆっくりで頼みます…」


 何はともあれ、これでもう大丈夫だ。

残り2kmなら、歩くのにも問題はなさそうなくらい体調が戻ってきた。


「とにかく、見知らぬ俺たちにここまでしてくれて、

本当に、感謝してもしきれない。何か礼をさせてください」


 すると、男は困ったような顔で笑って言った。


「困っている人は、助けずにいられない性分なのです。礼は不要です」


 そうは言われたが、流石にここまでしてもらって

何も返さないというのは、俺のポリシーに反することだ。


「そうですか…じゃあ、こういうのはどうでしょう。

俺を運んでくれた礼としてではなく、

旅人同士として、俺のできることをさせてください」


「私も、借りた恩は返したい。

私たちも好きだから、人助け」


 メイも続けて、俺の言いたいことを言ってくれた。


 それを聞いて、旅人は一瞬驚いたあと、

とても優しく、どこか悲しいそうに笑って言った。


「…ふふふ。そうですか。

貴方達は優しいんですね」


「…っ。とにかく。貴方も旅人でしょう?

何であんな廃墟まで来てたんです?

この大陸は、ほぼ全域が危険区域ですよ」


 第八大陸は、30年前に起きた"大災害"により、

まるで大陸の中心で隕石が衝突したかのように、

海岸の町以外の全ての地表が文字通り「ひび割れた」。


 この見渡す限りの荒野はその時にできたものであり、

第八大陸の街は、海岸以外すべてほぼ廃墟同然だ。

しかも、その海岸の街が発展している理由だって、

「いつでもこんな大陸から逃げられるように」以外はない。


 こんなところに、しかもその内陸部に。

わざわざ来る必要はないように思えた。


「ええ。それというのも、人探しでして。

私は…弟を、探しているのです」


「…"家族"、貴方も、そう言ってましたね」


 メイはそう返した。

俺が気を失っている間に、少し話をしたようだな。


 少し言いよどんでから、旅人は言った。


「私は弟がいました。

とても元気で優しく、少々甘えがちな弟が。

ですが…第四大陸で、はぐれてしまった」


 "第四大陸"、か。


「第四大陸出身だったのですか。

あの大陸は比較的穏やかだと聞いた事がありますが」


 メイが情報の追加をする。

彼女は図書室によくいたため、俺よりずっと博識だ。


「第四大陸…。以前、本で読んだことがある。

常夏の島。地上の楽園。星の平穏とまで呼ばれる場所。

それ以外の大陸があまりにも酷いから…」


 それを聞くと、旅人は複雑そうな声色で。


「ふふふ、そうですか。…実は、そうでもないのですよ。

私たち兄弟は、第四大陸で武術の師範に支持していたのですが」


「ある日突然、両親は街ごと消え去ったのです。

透明な何かが、我々と縁もゆかりもない何かが。

街を全て覆いつくし、住民を彫刻のように変えてしまった。

そして…今でもそこに、大勢の人たちと取り残されています」


「透明な塊は恐ろしい速度で師範の道場にも迫っていました。

師範は、私たちの一人だけは背負って絶対に逃がすと約束してくれました。

ですが、もう一人は、どうあっても逃げられない」


「…そこで貴方が代わりになった、という訳ですね」


「…」


 つらかっただろう。

彼もそうだが、彼の弟もまたそうだ。

俺は、独り取り残された彼の弟の気持ちが、手に取るようにわかる。

"他人事だ"という気は、既にしなくなっていた。


「その通りです。私の弟の名前は「神崎 進」。

狐の面を被った小柄な少年。もうすぐ14歳になります。

この名前に聞き覚えはないですか?」


「…名前は聞いたことがない」


「…裂、どうするの?

私たちが今できることは、なさそうだけど」


 今できることは、ないかもしれないけど。


「…俺は"何でも屋"をやっています。

きっとそれは特化に関連する事件でしょう?なら、きっと力になれる」


 男は驚いたようで、固まって動かない。

それこそ、"急に神様にでも会ったかのように"固まって動かなくなった。


「それに狐面ときたか。これは分かりやすい目印だ。

人探しは職業柄得意だとも。地の果てまで探してみせる。

料金はお礼価格でタダにしますよ」


 メイのほうを見る。

彼女はどこか、優しく笑ったかのように見えた。

それで納得してくれたようで何よりだ。



――すると。

妙な緊張が、走った。


 先ほどまでの異様な沈黙を破り、旅人が口を開く。


「…何でも屋…って 言いまし

言った ので すか 今」


「貴方の名前 黒森 裂 です ね ?」


 声色が、恐ろしく機械的な声に変わっている。

そこには優しさも、醜さも。あらゆる余分が微塵もなかった。


「随分有名だな、俺は。そんなに知られて…

ッ!!」


 俺はこの時まで。

さっきまでの"人当たりのいい青年"は、

既にもういなくなっていたことに、気づけなかった。


「依頼 1 件 確認 依頼 1 件

貴方 への 神の 我が主の」


 狸面の男の首が、明らかに異常な方向へ捻じ曲がる。

それはまるで、さっきの"操り人形"のような――――


「現像体照合 個体識別 照合完了」


 刹那にして、仮面の下から殺気が溢れ出す。

体中を鋭い剣で切り裂かれ続けているかのような、

鋭敏で、それでいて死の淵をさ迷う様な。


「…裂。私の、特化で…!」

「やめろ。下手に、動くな」


 声が出ない。声すら出せない。

明らかに、存在としての強さから違う。

そこにいるだけで、体が塵になりそうだ。


 彼女も。メイもそうだ。

先ほどまで震えていた恐怖と同じ。

いや、それ以上に恐ろしく身に迫る恐怖に、

体の震えを抑えられずにいた。



「黒森裂 並列対象 黒森メイ

当端末は 前者 2 名に 猶予を与えます」



「 10 秒以内に 生命の 終了を提案します」

「残り10」


 銃声が鳴り響く。撃ったのは俺だ。

昔映画で見たことがある。早撃ちというヤツだ。

自分でも信じられないほど、咄嗟に反応できた。


 1発の弾丸は的確に仮面の下の脳天を捉え、

甲高い音とともに仮面が砕け散った。


「裂…!!」


「まだ近づくな!!蘇生する可能性もある!

念のために、五体を切り分けた後に燃やしておこう。

…しかしこれはどういうことだ…!?

ほんの少し前まで、コイツは優しい青年だったのに…!!」


 真っ先に思い付いたのは、傀儡系特化の介入。

どこからか操作が突然始まったのだろう。


――優しい彼を守れなかった無力感は、今は後だ。

とにかく一刻も早く、ここを離れなければ…!


「裂…違う!そうじゃない!

その人…そいつ…"生きてる"!!!」


「…えっ?」


 後ろを振り返ると、信じられない光景が見えた。

旅人の男は、撃たれてなお"立ったまま"だったのだ。

男が纏っていたボロボロの蓑は、跡形もなく消えている。


 そして、内側に纏っていた…黒一色の布地に、

深紅に艶めく軍制服のような服が、露わになった。


「…馬鹿な、そんな馬鹿な」

「…ああ…これじゃ…もう…」


――これを信じろというのか。脳を撃ち抜いたんだぞ。

再生するのはまだ理解できる。だが、"早すぎる"。



「伝達事項欠落:小 補完開始」



 後ろに撫で付けられた髪は少し乱れ、

一切の感情を捨てた両瞳と共にこちらを睨みつけていた。

 頭の銃痕は、"ふさがっている"。


――"脳を軽く吹っ飛ばしたのに、

それとほぼ同時に修復が完了していた"、なんて。

おとぎ話じみた奇跡を、理不尽を。

ちっぽけな俺たちは、否応なしに認めさせられたんだ。



 ゆっくりと、おとぎ話を読む母親のように。

無慈悲な慈悲のもとに、声が放たれた。


「当端末の 個体名 および 所在名:


――――――――――――――――――――――――――


――楽園再帰の声を聴け。


 其は天上。其は大地。

だが、其は決して「人間」に非ず。


 人間よ。選ばれし強き人間よ。

貴様らは我が使徒。

貴様らは我が尖兵。

貴様らは我が触覚。


 命じる。

慈悲をもってその名を歓呼せよ。

愛情をもってその命を徴収せよ。

運命をもってその鎖を解析せよ。


その力をもって。

人間を、"支配"せよ。


 其の名を告げるがいい。

神の名の下において、赦す。

――――――――――――――――――――――――――

「当端末の 個体名 および 所在名:


 "復楽園" 特記執行組織

"神の指" 第三位 左中指


         神崎 止(トドム)」


「"創造系" 特化等級;"Ex" 抵抗は 推奨されません


即座に 生命の 終了を 推奨します

;繰り返し

即座に 生命の 終了を 推奨します」


「カウント 再開 します」

「残り 10 」


――創造系の、特化能力者。


 創造系、特化能力者。

同じ創造系の富士は、かつてない強敵だった。



 そもそも、等級Exって、なんだよ?

本気を出せば俺を一瞬で殺せた赤尽が、Aで。

その赤尽や富士を同時操作できるアイツが、A+で。


 それでさえ強さの範疇が収まらない、規格外。


 勝てない。勝てるわけがない。


「裂…れ、れつ…早、く。

逃げ、なきゃ…!今すぐ…!!」

「…ッ!!」


「残り 9 」


 メイのほうを振り向き、辛うじて返答する。


「…どこに、逃げられるんだ…?」


 アイツはマッハ10以上の速度で走る。

たとえ10秒全力で走っても、一瞬で殺される…!!

が、すぐに、ふと思う。


――ああ、そうか。

メイはそんなこと分かっていたんだ。

"分かっていたけど、言わざるを得なかった"んだ。


「残り 8 」


 軍服の男はまだ武器すら出していない。

一歩一歩、ゆっくり着実に俺たちのほうに歩いてくる。


 今すぐにでも逃げ出したい。

 今すぐにでも放り出したい。

 今すぐにでも首を出したい。


 こんな絶望的な状況で、戦うだけ無駄だ。


 諦めるのが、道理なのだろう。


「残り 7 」


「ふざけんじゃ、ねえええええ!!!!」


 守るべきものがあって、

生きるべき理由があるなら、

死ぬための努力なんて、死んでもするか!!


 少しでも動きを止める。

脳髄を撃ち抜けば回復まで動作は止まる。

その間に打開策をどうにかして考えるんだ…!!


 持っていたマシンガン。

残り弾丸20発の機関銃を、構えた。


「残り 6 」


 武器を出さない限り、この銃撃は防げない。

武器を出せ。せめてお前の間合いだけでも把握してやる…!!


 薬莢の巻き取られる音がする。

耳をつんざく音とともに、弾丸が発射された。


 着弾の瞬間。

男は左手をおもむろに体の前に出し…


「残り 5 」


「…うそ、でしょ」

「…ここまでとはな…恐れ入るぜ」


 撃った弾丸が切り払われるでもなく。

跳ね返るでもなく、ただ落ちる訳でもなく。


――弾丸が、空中で完全に停止している。

20発の弾丸は、近代芸術のように空間に固定されている。


「だが!!これでわかったぜ!!

お前の特化は"切ったものを停止させる刀剣を作る"ことだ!

お前の武器!お前の特化は"刀"だ!!」


「残り 4 」


 二振りの刀。

左腕に両手剣と、右腕に短刀。

左腕の剣は両刃で、片手剣にしては異常に大きい。

さっきの振り抜き方から、利き腕は左。


「二刀流…!!」


 二刀流は、極めて防御に長けた剣術だ。

短刀で相手の一撃を抑え、その隙を長刀で突く「守りの技」。


 達人で特化持ちならば、銃弾を防ぐぐらいわけない。

重要なのは。全ての弾丸が"切断されていない"ところだ。

あくまで"突き"による傷が入っただけである、ということ。


 つまり"あの一瞬に、20発もの弾丸を1つづつ丁寧に突いた"ということ。

それほどの精密性なら、例え炎だろうと確実に止められてしまう。


…ならば、残る手段は一つしかない。

この手でも、賭けとしては三流に尽きるが。


「残り 3 」


「メイ。近づくぞ」

「分かりました。裂さん、合わせます」


 もう手段は残されていない。

一瞬で決着をつける。


「残り 2 」


 一歩一歩、向かってくる剣士。

それに合わせ、間合いを詰める殺し屋二人。


 読み上げろ。

最後の一秒、最初の刹那を。

一瞬で、永久に終わらせてやる。


「残り 1 」


――点火。


 腹部に仕込んだ爆薬が、剣士の目と鼻の先で炸裂する。


 黒森 裂は思った。

例え肉体が再生できるとしても、一瞬のスキは生まれる。

爆発に伴う衝撃波と、仕込んだ破片の全てを防ぐことは出来ない。

脳を撃ち貫けば、一瞬のスキが出来るはずだ、と。


 黒森 メイも思った。 

この人なら必ず隙を作れる。必ず作ってくれる。

だから、その一瞬で、男の肉体が砕けた一瞬で。


「絶対に…凍らせてやる…!!」



――だが。違った。

根本的なところが、間違っていた。


"爆発の衝撃波と破片を、止められない"という前提が。



――刹那。

その刹那において、精神を研ぎ澄まさず、

集中しない余裕のあった者は、誰一人としていなかった。


 故に、その場の誰もが見ていた。

先ほどまで、両刃の剣だと思われていた

剣士の利き腕の刀。その真実を。




「摘み取れ 『神錆』」


「"止揚抹節"」

――――――――――――――――――――――――――

 七支刀。

儀式、祭礼に使われる鉄製の刀。

この世界には存在しない刀剣。


 一本の大きな鉄の刀身から枝分かれして、

六本の小さな刀身が付けられているモノ。


 その脆弱性により、

実際の戦闘で運用することはできない。


 だが、神崎 止の刀剣は違う。

この刀剣に重要なのは"触れること"だけ。

触れてさえしまえば、その物体は否応なしに停止する。


 そして、通常の七支刀との最大の違い。

それは――――

――――――――――――――――――――――――――

 見えた。

見えて、しまった。


 あの刀剣。

"一振りだけですべて止めた"。


 衝撃波は、長剣による居合の一閃で止め。


 止まらない破片は…

"振ると同時に枝分かれした六本の小型剣が、

破片を自動追尾し、切り裂いて止めていた"。


 そして、それとほぼ同時に。

俺たちの打つ手は、完全に尽きた。



「執行 開始」


 終わりはすぐそばまで来ている。

遂に、始まってしまったのだ。


――死ぬときに、恐怖はないという話を聞いた事がある。

その理由が今分かった。


"恐怖すら、行う時間が与えられないから"。




「執行 終了。直ちに任務 第二段階に移行」


 …?

なにも起きていない…?

剣を振る動作すら、見えなかった。


 彼は少しずつ遠ざかっていく。


「皮膚データ確保 第二段階終了

入力された任務 全て遂行 帰還する」


 …助かった、のか。


「はあ。何かあるかと思ったが、思い過ごしか。」


 ふう、とため息をついて。


「…メイは。

メイは、どこだ?」


 メイはどこだ。メイは大丈夫だろうか。

僕も無事なんだから、メイは当然無事に決まってる。



「…裂」


 ああ。良かった。

本当に、よかった。

神様はいるんだ。

信じられなかったけど、きっと。


「私、伝えたいことがある」


 君が生きていれば、それでいい。

 僕はいつ死んでも仕方ない。


「私、ほんの少ししか、生きられなかったけど」


 出会いは、一つ一つが奇跡なんだ。

そんな奇跡が、こんな簡単に踏みにじられるわけない。


「もっとたくさんあなたと生きたかったけど」


 嘘だ。嘘だろう?

 約束したのに。「幸せにする」って。あれだけ言ったのに?

あの出会いが、こんな簡単に消え去るなんて。

僕は。ぼくは…

 

「貴方が私を救ってくれて、うれしかった。

このきもち は、ぜっ たいに なくなら ない」


 どうか。おねがいだから。

きみさえ、いきていればいいのに。


「私。生 きて てよ か っ た。

貴方 は、本 当に私 を幸せ にし てく れた。」


 ぜんぜん、できてない。

こんなちっぽけじゃ、しあわせになんて。

なのに、なんで、それだけでいいんだい?


 こんなちっぽけなしあわせなのに、

こんなちっぽけなきせきなのに、

なくなるのが、こんなに。


「やくそ く、う れし かった。

ほ んとうに あ り がと う  。


 そういいのこして、

めいは、ばらばらになった。


「あ… っ」


「あ あ …あ あ あ」


「 うああ あぁ ぁっ… …! ! !」


 しらなかった。

 い ままで、し らなか った。

 しぬこ とが、こん なにつらくて くる しいこと なんて。


 "死ねばそれでおしまい。

死ねばしがらみも苦しみも一切ない。"


 うそ だ。

 そん なこと、なか った。

くるし いし、い たい し、つ らい。

じ ぶん をつく るな にかが、どんどん、どんど んなく なって いく。


 なにも、できなかった。

"自分なら何かできる"って、おもいこんでた。


「ああ。そっか。」


「自分は何もできないんだ。

ただ生かされていただけだったんだ」


「…みんな」



「ご め ん







――――――――――――――――――――――――――


「聞こえるかい」


「聞こえてなくても言うよ」


「私は神崎 止。君を殺した張本人」


「だが、君を殺したのは私の意志ではない」


「私は、神に負けてしまった」


「私の力のほとんどは、神の力によるものだ」


「私の力は、七支刀を操作する特化だけだ」


「頭を一瞬で治したあの特化は、神の力だ」


「この右手の短刀…"神禊"は、神の力の源だ」


「この力を使えば使うほど、私の魂は擦り切れる」



「私は、最後の力を使って君たちを生き返らせるつもりだ」


「だが、この世界で生きるということは、辛く厳しい」


「君たちが選ぶといい」



「…。これは奇妙な解答だ」


「黒森 裂。君は、"生きたい"と願うのかい?」


「正気かい?君の人生は余りに過酷で残酷だ」


「彼女は君の決定に全てを委ねている」


「立ち止まってしまうには絶好の機会だと思うけど」



「…ああ。そうか。」


「"やくそく"、か」


「確かに、それじゃあ、ダメだな。私もそうするよ」


「彼女は、とってもいい兄を…」



「…ん?"もう一つ"…?」



「…っ」


「そうか。その"やくそく"も、か。」


「君は、本当に優しいんだな」


「ああそうだとも。私は正直、君たちを生き返らせたくなかった」


「だって私も、弟が大切だからね」


「自分が消えてしまったら、"自分"から弟を守れない」


「でも。君なら、安心だな」



「私は、君たちを生き返ら て消える」


「君た が私に会 て以降の記憶 一部消し おいた」


「さ うなら黒  裂。██の親愛 る友よ」


「次会っ 時 は、"██"を倒せるほ 強くなっ い くれ」



「弟を、"進"を頼んだよ」







――――――――――――――――――――――――――

 空は晴れている。

第五大陸の朝は、清々しいものだ。


 荒野の風が、荒っぽく肌を撫で付ける。


「…っ。いってて…」


「裂を、運ばなきゃ…って、あれ?」


 不思議なところで、意識を失っていたようだ。

辺りを見回す。知らない荒野と、街が見える。


「裂!立ったら傷が開く…!

あれ?傷が治ってる…?」


「うぉっ!本当だ!なんで!??」


 不可思議なことが連続して起きたが、

特に危険はないので、しばらくして混乱も落ち着いた。


「ここは一体… ん?これは…」


 ふと、足元に仮面が落ちているのに気が付いた。

砕けた狸の面。持ち主の名前は書いていない。

ただ、名前の代わりに書いてあったのは。


"神崎 進 を見つけ出せ"


「裂…これ誰?」


「…なんとなく知ってる気がする…

物忘れ激しくなってきたか…?」


 他人のような気はしない、赤の他人。

だが、何故か僕もメイも。

"この人を守らなければ"と思えてしまうのが、一番不思議だった。


「…まあ、この男を探すことにしよう。

家が無くなって店も辞めて暇だし。

今後の拠点はあの街がいいだろう」


「…じゃあ、まず武器とお金、取ってこないとね」


「…はあ…あの街、西海岸の街だよな?」


「…多分、ね…」


「…50kmかぁ…」


 …神様は、この世にいない。

もし、神様がいるのなら。

俺はソイツを絶対に、許さない。


 でも、死ぬのは嫌だ。

約束を守るまでは、死ねない。

…なぜか、けれど不思議さは一切なく、そう納得できた。


 荒野に一筋の風が吹く。


「はぁ。ゆっくり歩こう、人生は長い」


「そうだね、裂。歩くのも悪くないね」


 風は、止まらずに力強く吹きすさぶ。

それは、彼らの行く末の暗示だったのだろう。




「走るのは、なんか嫌だな…」

「急に寒気が…」


 まあ…ちょっと止むこともあるだろう。

風はふつう、気楽に吹くものなのだから。



Trigger;UNHappy


   完

――――――――――――――――――――――――――

「只今 帰還 しました 作戦行動 終了」


「あの…君何してんの?

いや…殺すのは分かったけど、なんで蘇生させたの?」


「主の 行動を 参照しました」


「あ~…。(要らん所ばっかり真似しやがって)

そうかいそうかい。分かったよ。

今後は先に相談してね?勝手に"神禊"使っちゃダメだよ?」


「了解。 皮膚データです 受け取り作業 お願いします」


「ん。ありがとー。

…???あれあれ???」


「次の指示を待機」


「この皮膚データおかしいぞ!?

なんで全部の細胞がネクローシスしてんの!??」


「…」


「君。データ改ざんした???」


「指令 皮膚を採取 以上 目標遂行」


「…(頭に手を当てる)

…あーもう!!これ私が悪いのね!!!

はいはいごめんなさいね!!

今度は指令的確に出すから!!」


「了解 前回指示の再遂行 開始」


「…まあいいや、殺し屋二匹は放置で。

どうせお前ごときに瞬殺されるんじゃ

脅威ですらないでしょ。

第八はもっとヤバいのいるからさ」


「了解 取り消し」


「…やっぱりなんか苛ついてきたな。

よし、じゃあ指令を出すよ」


「とりあえず、第七大陸の人類。

データ採集完了したからさ」



「もういらない。全員殺しといてくれる?」


「了解 目標遂行予定時間 10 分」




暗闇にて蠢く影二つ

 秩序と混沌

 光明と暗黒

 絶望と希望

 過去と未来


そして


 "正道"と"外道"


是より来たるは過去の清算

神の指を切り落とし、

"失楽園"へと叩き落とすモノ


 全てを治める悠久の神が勝つか?

 それとも、ただの人間が勝つか?


 勝ちの決まった試合を。

 落ちの決まった喜劇を。


 どうか、どうか御笑覧あれ!



――アウト・ロード(Out/lawed) 乞うご期待。


――――――――――――――――――――――――――――

~あとがき~

 というわけで完結です!

いかがだったでしょうか?

 作品についての感想・指摘お待ちしています!


 今後は隔日更新になると思いますー。

一日3000字程度しか書けませんが気長に見守ってくださいー。


 次回の題材は「学園恋愛モノ」です。

この作品(Trigger;Unhappy)は暫く"凍結"しますね。


 というわけで、読んでくれてありがとうございました!

次回作でお会いしましょう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Trigger;UNHappy~特化のない殺し屋~ 手ノ目 甲 @Eyeballinthehand

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ