第24話 コトダマ
★コトダマ。
そして、
ゆっくりと孤独という
カウントダウンが動き始めた。
全ては自分が招いてしまったんだろう。
僕が動けば動くほど、
マイナスに動く日々が
少しずつ動き始めた。
六月、
みんなとやり直したいと
一人一人に謝ったがもう遅かった。
ナオトは彼氏との同棲計画が
スムーズに進み、
未来を見据えて、
毎日、新居探しに精を出していた。
龍斗はゴールデンウィークの
大きな仕事を終え、久しぶりに
下北の我が家へ帰って来たと思えば、
僕のせいで少し重い空気の中、
ジュンやナオトを笑わせる為に
必死に努力していた。
ジャミーの散歩中、
龍斗が僕に言った。
もう、本当に無理かもね。
解散に向け、僕らも動こうか。
更新は八月だよね。
千尋の人生で一番の失敗かもね。
一緒に頑張ろうね。
かなり落ち込んでいた僕には
龍斗の言葉はかなりの大打撃だったが、
龍斗の一緒に頑張ろうに救われた。
こんなダメな男でも
大切に思って付いて来てくれる
龍斗に益々愛情が深まった。
ただ、あれからジュンは
僕と二人の時間を
避ける様になっていた。
あからさまではないが、
僕には分かった。
四人でリビングにいる時は、
今までの様に楽しくできたが、
ナオトや龍斗が部屋に行こうとすると、
出来るだけ僕との時間を
避けるかの様に慌てて去る。
ジュンと話したくても
ちゃんと話しができない状態が
何日も続いた。
何年か前にジュンが言っていた言葉が蘇る。
きっとあたし達、
爺さん婆さんになっても
ずっと仲良く暮らしてるよね。
ダメだよ、
ジュンはちゃんと結婚して
子供授かって幸せな家庭築かなきゃ。
じゃ、子供と旦那含めて
六人で暮らそうよ(笑)
あ、ジャミーもね。
あんた達と暮らして良かった、
この居場所を壊そうと
する奴がいたら
あたしは許さない。
やっつけてやるんだ。
ジュン、ごめんよ。
壊そうとする奴は僕だったよ。。
ナオトは彼氏との暮らし。
僕は龍斗との暮らし。
ジュンは元彼のトラウマで、
しばらく彼氏は
要らないと言ってたので、
この素晴らしい居場所が
無くなる運びは、
ジュンにとって余りにも
身勝手な仕打ちとなった。
僕が、ジュンを苦しめていた。
刻々と更新の時期が
近づくにつれて、
意外にも龍斗と僕の家が
一番早く決まった。
焦らずゆっくり行こうとした矢先、
たまたま龍斗の仕事に
付き合い国立に行く機会があった。
二人で歩いていると、
不動産屋の入り口に一軒、
物件情報が目に入った。
写真付きなので、
思わず立ち止まり魅入ってしまった。
家賃のわりには木造の
ログハウス調の室内と
ジャミーが遊べる程度の
庭に目を奪われた。
僕らが理想としている、
物件が正に目の前にあった。
リビングには壁一面に
木製の手作りのような
本棚が設置され、
ドアやトイレなどは
木目調で統一され、
軽井沢のバンガローにでも
来たのかと思うくらい
素敵な物件だった。
いろいろネットや
不動産屋で探してはいたが、
ここまでの理想との一致は無かった。
今此処で去ったら
もう二度とないだろうと
胸が高鳴った。
だが、国立市とは。。
横を見ると龍斗も
一目惚れしたのか
心を奪われたように魅入っている。
龍斗は職場まで
中央線一本で新宿まで出れるが、
僕の下北沢までは覚悟が必要だった。
が、その毎朝の通勤以上に
素晴らしい物件が
今正に目の前で導いているようで。。
その頃、
正直少し都心に疲れていた。
都下に住むのも良いかなと
思っていた矢先の物件だ。
龍斗に顔を向けると、
目を輝かせて
うん、と頷いた。
二度とない出会いかもしれない、
龍斗と二人で不動産屋の
入り口を開けた。
その日のうちに内見を済ませ、
運命に導かれるが如く、
その家に決定した。
これから先に待っている孤独を、
考えもしなかった。
契約を済ませた時、
龍斗の期待溢れる
嬉しそうな顔を未だに
よく思い出す。
千尋と一緒にたくさん思い出作って、
楽しい暮らしをしたい、
ジャミーに弟を授けるのも良いねと。
龍斗の笑顔を
もう一度
もう一度、
抱きしめてあげたい。
あの日からずっと、
龍斗は眠ったままだ。
誰に怒りを
ぶつけたら良いのかもわからない。
龍斗をこんな目に合わせた奴は
もうこの世にはいない。
ただ、
ただ僕は奴と出会い、
奴を助けた事に憤りを
感じざるえない、
墓の中まで奴を恨むだろう。
龍斗現状を知ってか知らずか、
今日も奴はインスタの中で
笑っていた。
僕は、赤が嫌いだ。 CHIHIRO @gomasiojam
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