口述筆記
多賀 夢(元・みきてぃ)
口述筆記
私の一番好きな作家は太宰治である。
太宰治の作品「駆け込み訴え」は彼が一気に喋り尽くしたものを奥さんが書き写すという、実にストリーミングな作品である。
私には筆記してくれる人間はいないが、スマートフォンを使えばこの方法ができるのではと思った。そういうわけで、実はこの文章スマホに向かってただ話しかけているだけである。
むろん、句読点は自分で打たねばならない。だけどただ語ったことをそのまま書いてもらえるというのは実に楽な道具だ。
ここの数日 Twitter や他の SNS サイトに書き込むときス、マホに向かって話しかけることが多い。古い OS であるタブレットの方でやるとうまくいかないが、新しいスマホでやると AI の性能が良いのかとてもサクサクと書いてもらえる。自分の話したことがそのまま文章になるというのは、かなり面白い。
ただ悲しいかな、筆記してくれる人間のように忖度をしてくれるわけではないので、話し間違えたこと……たとえば繰り返し言ってしまったことは、そのままだ。ほんの少しの間違いも、あちこちに見受けられる。
だけど少々滑舌が悪くとも、前後を見て一つの文章にきちんと正して頂けるのは実にありがたい。
最近は画面を見ると頭痛がして長く書き続けることが難しくなってきた。それは私の職業がコンピューターに向かって行動を書くというシステムエンジニアというのも大きいと思う。小説家と同じく文章を書く仕事だ。やはりコンピューターと目というのは相性が悪すぎる。
その点音声入力という名の口述筆記は、非常に便利である。頭にあらかたの文章があれば、あとは目を閉じて話していれば勝手に書いてくれる。最後に手直しの為に目を開けて、ほんの少し句読点を付け体裁を整えれば、それでもう入力は完成だ。
ただこのやり方の問題は、誰か他人がいると非常に恥ずかしいということ。他人どころか家族がいても恥ずかしい。私は今出張中のホテルでたった一人でいるのでこんな実験ができるのだけれど、これを家のベッドでやろうと思ったら、隣には例の彼氏が寝ている。……まず無理である。
しかし、目を疲れさせずに書き込めるというのは、非常に便利だ。今後も一人の時などを狙って、まるで音声のメモを取るかのようにこの「口述筆記」を続けていければなと思っている。
口述筆記 多賀 夢(元・みきてぃ) @Nico_kusunoki
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