第14話 選ぶ道
「おい聞いたか?セイがモリテに選ばれたんだとよっ、あの名家だぜ!
草爺を助けたのが目に留まったってよ!」
話は瞬く間に広がっていった。
遠くからフリートさんが歩いてくる。
まだ直接伝えていない。
「フリートさん、あのっ……」
「寮の屋上。待ってるぞ」
静かな声だった。目を合わせてはくれなかった。
屋上に着くと、フリートさんが稽古場を眺めていた。そして振り返って、
「さぁ、最後の稽古……
いや最初で最後の勝負だ。
俺が勝ったらセイ。
ルーファス家のモリテを辞退しろ」
「えっ、」
「セイが勝ったら、自分で歩む道を、セイが選んだ道を行け。
俺は背中を押してやる。どんな最後でも、見届けてやる。
さあ、勝負だ、一発くらわせた方の勝ちだ」
突然勝負が始まる。
「そんなっ、どうしてですかっ、フリートさんっ、なんでっ……」
木刀を振り下ろすフリート。何も答えない。
本気の稽古は初めてだ。
美しい太刀筋
洗練された動き
重い剣撃
ひりついた空気
撃ち合いが続く。持久戦になれば、敵わない。
「行くんだ」
セイがフリートの前に飛び出し、鍔迫り合う2人。
「どうしてそんなにこだわる!
主が欲しいか、家族が欲しいか!」
違う。
「父と母の真実を知ってどうする。
辛くなるだけだろ!」
違う。
「必要とされたいか!
使い捨てにされて死にたいのか!」
「違うっ!」
フリートの剣を力任せに振り払う。
「そんなんじゃないっ!
私は、
父の誰かを守る姿に憧れてっ!
母の人を助ける姿に憧れてっ!モリテになったんだ!
守って、助けて、私はそう生きていきたいっ!」
セイが剣を打ち下ろす。
受け止めるフリート。
フリートの力が抜けていく。
「やっぱ、かっこいいなセイは」
木刀持った腕を下ろした。
「一発もらった。おまえの気持ち本音が聞けてよかった。
参ったなぁ。
俺よりモリテらしい。一人前だ。もう娘のようにはいかないか」
「えっ……」
フリートにぎゅっと抱きしめられるセイ
「苦しいです。フリートさ、ん」
「ごめんな、最後だと思ったら名残惜しい、愛おしいんだ。
勝手に娘のように思っていた。
思っていたより、ずっと早くおまえは成長して巣だっていくんだな」
そう言われて実感する。
「最後なんだ」
眼頭が熱くなる。
「忘れるなよ、ここを出てもどこにいても、お前の家はここにある。
挫けたときには戻ってこい。みんなで笑って迎えてやる。
おまえの家族はここにいる。
だから笑って行ってこい!」
「うっ、はいぃぃ」
涙でぐしゃぐしゃになりながらフリートさんの腕の中で泣き続けた。
フリートさんの服についた汗と土とタバコの匂いをグッと吸い込んだ。
モリテ 痛み分け回復師 @takahoshi
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