第13話 セイの巣立ち

あれから数日。セイはいつも通りの元の生活に戻っていた。


「セイ、会長が呼んでる、応接間に来いとさ」


応接間に着いたセイ。書斎机の前に会長が座っている。


「セイ、きてくれたか。

突然で悪いがセイをモリテとして雇いたいという申し出があった。

先日ここへきたルーファス家からだ。

雇い主は当主のルーファス・ブレンダン。

護衛対象はその養子息子ハル。歳は19。劇場や貴族の集会で歌を披露する歌子をしている。

この養子息子の歌には特別な魔力が宿るという。


先日の草爺を救ったセイの姿を見たそうだ。冷静な対応、周りのモリテたちとの信頼関係を見て何か感じたらしい。

モリテの役目というよりは、このハルの監視役としての任務になる。

強さや回復師としての力量より、歳の近い誰かを監視役に欲しいというところだろう。

そして一つの条件が出ている。

男として振る舞い監視すること。

女であることがバレた場合、やめてもらうそうだ。


正直わからない点が多い。どう見ても使い捨ての、依頼だ。

あまりおすすめはできない。

それに、おまえをちゃんとモリテとして扱う主を待つこともできる。

一応パトリアに来て初めての仕事だ。

断るも、受けるも、セイの自由だ。

急がせて悪いが明日セイの返事きかせて欲しい。頼んだぞ」




自室に戻って考え込むセイ。

前の自分なら二つ返事で受けただろう。使い捨てでもいい。

目的がないだけの死に場を求めていた。


でも今は変わってしまった。このパトリアのみんなが好きだ。ずっといたいとも思っている。

モリテとして生きたい。

父や母親のことも知りたい。

あの歌をもう一度聞きたい。



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