猫菩薩の銅像前に野良猫飼い猫1,800匹大集合!

古寂湧水 こじゃく ゆうすい

第1話

猫寺の猫菩薩の15メートル銅像は明日香王国の王様と観世音菩薩が犬に化身したゴン太により一瞬のうちに出現をしたが、ここの寺猫25匹のボスである茶トラはこの際宣伝に協力をして和尚さんに功績を認められて、待遇を良くしてもらうとともに人間の子供たちが健やかに育つようにと、仲間たちの健康と交通事故それに充分な食料の確保を祈願するために付近一帯に集合をかけた。


目の前に美味しい話がないと集まりが悪いと思い、スポンサーの東洋水産さんが赤いきつねに緑のたぬきを2,000食用意して待っているので食事にありつけるのは心配なく、味も薄味に調整するので親類縁者みんなで来るように回覧板を回した。


茶トラは曾祖父からのボスネコの家系で縄張りは猫寺だけでなく、15キロ四方に及んでいるそうだ。市長から警察署に猫が無事に横断歩道を渡れるように要請し、ネコ情報をネコ寺に設置した本部に連絡を入れるボランティアも50名募集である。


遠方からの老野良猫や幼い猫などは行き倒れの危険もあるので、救護チームを四方と本部になる猫寺に置いた。1チームに本物の医者2人に看護師4人ボランテイア5人の本格的なものである。


いよいよ猫達の大法要の日になった。仏教センターのイベントスタッフは朝7時に来て対策本部に詰めている。既に祭壇や住職達が座る席に寺猫の席が用意されている。他の多数の猫達は地べたにそのままである。


ネコの動向の一報が来たのは門前町駅から歩いて15分ぐらいのきゃら駅との中間地点のボランティアの観測員からである。野良猫風の家族のようで子猫を入れて5匹ということだ。続いて各方面から発見の連絡が来ているが大画面用のカメラが設置されてあるのはもう少し寺よりなので画面には入ってこない。


王様一行は法要開始時間の30分前の9:30分に行く予定である。熱心な外国のテレビ中継車はいち早く知らせようとかなり遠いところま来ていたが、30匹ぐらいの集団がやってくると興奮状態になっている。対策本部の大画面の30ヵ所のポイントにすべて確認がされるようになったので、ここの20社の報道関係者もあわただしくなっている。


救護ポイントには予想通りに老野良猫や幼い猫達が保護されて栄養剤が含まれた食べ物を与えられ、小休憩をしてから出かけて行った。今日1日だけ日本語が分かるように設定してあるので、横断歩道でも警察官の指示に従うはずである。


通りという通りは隙間のないほどネコに占められてしまったが、日曜日で通勤客がいないのでなんとかなっているようである。そのうちに先頭集団が山門をくぐっていったがネコ寺への参道700メートルには両サイドに5階のスタンドが設けてあり、お寺の管轄で有料で貸している。


先頭集団の一番前面にいるのは地方の幹部なのか堂々としている。トラちゃん直近の大幹部は5匹いるそうだがその下あたりにランクされているのであろう。

境内に入ってくるとカメラが一斉にこの先頭のサバ猫に集中したので、それが解るのか栄養が行き渡っているきれいな毛並みで誇らしげにしている。


法要開始15分前になったのでほとんどの猫達が銅像の前に集まっているが、老野良猫や幼い猫達は救護班の手当てを受けて何とか持ち直して整列の中に加わっている。この様子を外国の中継カメラが映像にとらえていて、少し長めにこの場面を放送している。


ヨタヨタ歩きでやっと到着して、救護班の世話になるネコは案外と多く天手古舞状態になっている。5分前に何とかおさまってきれいに整列した。


銅像の前の住職と副住職が観世音菩薩のチベット式のマントラ、オン マニ ペ メ フ ムが始まると1,800匹以上の猫達のミャーミャーが始まり大音量でうねっているようなものすごい迫力で40分間続いた。その後に住職の短い挨拶があり終了である。


これから空地にスポンサーの東洋水産さん提供の赤いきつねに緑のたぬきが、出汁の味を極めて薄めに調整されている2,000食が用意されているので、ほとんどがそちらに移動をしてふるまいにありついて満足そうな表情で食べている。事前にボスネコのトラちゃんから情報が行っているので、これだけを目当てに来ている野良猫もかなり多いようだ。


ネコ寺の和尚とどういうわけか市長がインタビューに応じている。

記者[壮大な大イベントが終わりました。世界に誇れるんじゃあないんですか。言い出しは市長だと聞いていますが。]


市長[個人ではなく皆さんの協力でこのような事が出来て大変に誇りに思っています。]和尚[この話をまとめたのは新門辰五郎さんの娘のタエさんでとても努力をされました。それと重要なポイントは自ら観世音菩薩を造り出し適切な指示をした王様の力が大きかったです。今後とも皆様の力をお借りして、毎年の恒例行事になるようにしたいと思います。]


本堂のガラス越しにお茶を飲みながら見物をしていた老師と王様は満足そうにうなずいて笑みを漏らしている。そこにどこから入り込んできたのか、ボスネコそっくりの茶トラの子猫2匹がガラス越しの日差しにまどろんで寝ているようだ。


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