第8話 エピローグ
穏やかな陽の光が差し込む庭で、金木犀がオレンジ色の花を咲かせている。
縁側に腰掛けて、昨夜の古條さんとのやり取りを、そして五十年前を生きたあの子のことを思い出していた。
すると、着信メールがあった。昨日連絡先を交換した樫原さんからだった。
早速何だろうと思って開封すると、「これ見て!」という文面とともにURLが添付されていた。クリックすると、地元新聞の電子版に繋がった。見出しを読むと、どうやら人身事故についての記事らしい。
え、……。
人身事故の被害者の名前を見て、言葉を失った。
古條
何度見ても同じだった。年齢からしても間違いない。被害者は古條さんだった。
そして、記事を読み返す中で私はあることに気づき、背筋を凍らせた。
記事では人身事故の発生時刻が十八時三十三分で、その後病院に担ぎ込まれ、二十時過ぎに死亡が確認されたと記されている。
しかし、昨日の同窓会は十九時頃から始まって、途中私は古條さんと……。
私は返信画面を開いて樫原さんに昨日の同窓会に古條さんが来たかを尋ねた。
来ていないとの返信だった。
続けて私は昨日途中で外の空気を吸いに出かけたときに連れ添いがいなかったかを訊いたみたが、私一人だけだったとの返信だった。
手から携帯が滑り落ちる。
庭では金木犀の小さな花がゆらゆらと揺れていた。
罪の記憶 まにゅあ @novel_no_bell
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