6
ゆきはそのまま校庭の上を歩いて移動して、小学校の校舎の一階にある美術室のところまでやってきた。
ゆきは白いカーテンの閉じている美術室の中に(一応、靴だけ脱いで)一度校舎の中に入ってから、廊下側から入り口のドアを開けて入った。
午前中の美術室には生徒の姿はない。しん、と静まっている。
薄暗い美術室の中にはたくさんの動物たちの姿をした、彫りかけの木彫りの置物が置いてあった。
それらは全部、ゆきの同級生である六年生の友達たちの作った卒業制作の作品である。
たくさんの木彫りの動物たちがいる(ゴリラとか、ライオンとか、サイとか、ワニとかだ)美術室の中はまるで遠い異国のジャングルの中のようだった。(ゆきは子犬を。ひかりちゃんはお猿さんを彫った)
そんな動物たちの中にいる一体の木彫りの鳥の前にゆきは移動する。
その小さな木彫りの鳥は、……ゆきと同じ六年一組の教室にいる高浜あめくんの作品だった。(そのことをゆきはちゃんと知っていた)
ゆきはその木彫りの鳥をそっと触った。
それから、ちょうど薄暗くて隠れるにはいい場所だから、ゆきはこのままこの美術室の中で少し居眠りをすることにした。(なんだかとても眠かったし、眠るのにもちょうどよかった)
「おやすみなさい」
誰にいうでもなく(あえて言えば、木彫りの鳥に向かってだけど……)そう言ってから、ゆきはごろんと床の上に転がって眠りについた。
夢の中で眠るというのも変だと思ったし、疲れていたわけではないのだけど、ゆきはそのまますぐに、深い眠りの中にたった一人で落ちていった。
ゆきとかぜとあめ 雨世界 @amesekai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ゆきとかぜとあめの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます