レモンティー

@samouraildog

第1話

レモンティーは美味しい。

だが欠点がある。

非常にトイレが近くなる。

なぜレモンティーはトイレが近くなるのだろうか。

そもそもなぜレモンティーを美味しいと感じるのだろうか。


俺は真っ暗な部屋の中で、紙パックのレモンティーに刺したストローを吸いながら考えていた。


本当俺はバカだ。

こんなにレモンティーを美味しく感じるのに、レモンティーの事を全然知らない。

レモンティーはレモンを使っているという事しかわからない。


尿意を感じ、座椅子から立ち上がった。

トイレに向かおうと考えたが、やっぱり面倒に感じ座りなおした。


やっぱり早田なら分かるんだろうな。

頭の良いあいつなら、レモンティーの成分や美味しく感じる理由など、論理的かつ分かりやすく説明できるに違いない。


「あー。本当俺は何でこんなにバカで何もできないのだろうか」


俺はそう呟きながら窓を開け、外の道路を見るが、誰も居やしない。

皆こんな田舎町からは出て行った。

夢や目標なんていうくだらない事を求め旅立っていったからだ。


半年程前世界中ではやりだした奇病のせいで、皆必死に生きる目標を探しだした。

奇病というのは、眠りにつくと、そのまま二度と目覚めず死ぬという症状の病気だ。

発症する条件は全く分かっておらず、どんな人間にも起こりえる可能性がある。

だから俺も今日眠りについたらそのまま目覚めないかもな。


俺は寒さを感じたため、窓を閉めて座椅子に座りなおした。


俺はこの街を出るつもりはない。

明日死ぬかもしれないなんていったて、そんなの奇病がはやる前から同じような事だったろ。

確率が少し上がっただけだ。だから生活も変えるつもりはない。


「まあ一番の理由はレモンティーだけどな」


俺はレモンティーに刺さったストローを吸った。


「やっぱりレモンティーは最高だ!」


レモンティーは今この辺りの地域でしか販売していない。

だから俺はこの街から出るつもりはない。

他のやつらからしたら、俺みたいな何も取りえが無く、ただレモンティーを飲んでいるだけのやつはクズとしか思えないだろうな。

まあそんな事はどうでもいい。

俺は真っ暗な部屋の中でレモンティーを飲んでいる時が一番幸せに感じるのだから。


俺は尿意の限界を感じ、トイレに駆け込んでいった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レモンティー @samouraildog

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る