第3話 ふゃ~ん

あたまだけ~、で飛んで行ける、そんな場所に、長く居た。


場所というか、心だけれども。


それが想像力の成せるワザだと、知るよりも、すでに、そのなかで、もがいてたんだ。


記憶というものはー、まったくもって、不可解だよね。


じぶんが、そうだと思っていたことでも、実のところ、そうではなかった、ということだって、よくある話。


じぶんが、感じた、もろもろのことを、統合できずに、あらゆる角度で、違うこと思ってる。


おんなじ「じぶん」という、なにか見えない枠のようなもののなかの、出来事なんだ。


ぎゅーー・・・・・・。


さらに、つよく、彼を抱く。


この、彼だって、いろんな表情を見せる、人間。


ぬくもりのある人間。


さまざまな想念が、うごめく心を、持つ、人間。


ふぃー。


だめだぁ。なんだか。


表情筋が、真顔を、つくっていくのが、わかる。


「ねーねー、」


って、彼の声。


真顔のまま、目だけで彼を覗う。


「あれさー、さっきの犬、」


うん?


こんどは、顔を、彼のほうを向けて見つめるよ。


「チャウチャウだったよねぇ」


え?


「そーなのー?」


「うん、たぶん。あの種の顔の犬を、チャウチャウって呼ぶんじゃなかったかな。大きさも、あんな感じ」


ふー・・・・・・、そうか。


「チャウチャウだったかぁ。残念」


「残念って、なにが?」


「ううん。なんでもない」


はー。


びっくり。




<了>

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『ネタ』 ぽふ、 @a-piece-of-harmony

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