この小説は即興で作り上げたものなんだそうだ。実際、SNS上でずっと連載している様子を見てはいたからそうなんだろう。小難しい文学論って実は割と苦手なので思いつくままのことを書くんだけど、即興で書いたと作者が言う優れた小説に対して抱く感想はだいたいの場合、「これを即興で書いたなんてすごいなあ」「信じがたいなあ」というものだ。
でも『感傷的なシンセシス』は逆に、これは即興でなければ書けなかったんじゃないかという気がする。小難しい文学論は苦手なので、「なぜこれは即興でなければ書けないのか」ということを理論立てては説明できないのだが、即興小説に対するレビューはあえて即興で書いてみるのも一興だと思うので、そう述べて筆を置くことにする。