第11話 この展開は、何なの!?

 僕は候補生2人目は確定事項?

 話に彼女が割って入る。

「これで小説を書きまくっても路頭に迷わないわよ。寝る所と水があれば死なないから」


 彼女が美少女スマイルで候補生入りを歓迎してくれる。

 歓迎は嬉しいけどハードルが高くない?

 命を賭けないと小説家になれないの?


「彼女の祝福を喜んでいないだろう?」

 叔父さんがジロリとにらんでくる。


 否定はしません。

 本当に大丈夫?


「彼女の推薦で候補生にしたは間違ったかな。今の小説はどうなの?」

 どうなの? と言われても困りますが。


「長く書いていて、登場人物が少なくない?」

 それは思います。


「一応、バランスが取れているので」


「バランスねぇ、あと誰も死んでいないし、みんな居るよね。なんで?」


 聞いてくるかと思ったけど、ここは説明しないと。

「彼女たちは能力者で絶対的なチカラがあるので死なれては困ります」


「誰も居なくならないのは?」


「誰か欠けたら可哀想だから…」


「そこだよ、素人の作家気取りが良くないのは。主人公への想いは分かるけど、それは仲良しが一緒に遊んでいるだけだろう? 読者は物語にハラハラやドキドキを求めているの。バランスが崩れても変なキャラを入れたり、誰かが居なくなるの。でも何とかして話を進めるのが物書きだと思うけどな」


 初めてそんなことを言われ悔しいけど、妙に納得してしまう。


 叔父さんは新しいタバコを出して吸い始める。

 隣に座る彼女は煙に文句を言わず、叔父さんの言葉をノートにメモして書き留めてから、こちらを向く。

 やっぱり距離が近いんですけど。


「ねっ? 勉強になるでしょう? 合宿所でアドバイスを貰えるから、直ぐにデビューできるわ」


「俺はいつもいないからな、自分で考えること。考えて考えて考え抜いて脳ミソのしわひたいに浮き出てきたら、いい話が書けるの」

 そんなことしたら成人前に、お爺さんの顔になりますが?


「叔父さん、脳ミソは絞るけど、しわが増えるのはイヤよ。叔父さんがいつも言う『四六時中考えろ』でしょう? 分かっています。大学在学中に賞を取って文壇デビューするんだから」

 凄い宣言をしたけど、大丈夫?


「やる気満々だから、君も置いて行かれないように頑張りな」

『候補生を辞退します』と言えないよね?


「叔父さんから励まされたから頑張らないとね」

 いえ、励まされても。


「俺は東京に戻るから、戸締まりよろしくな」

 叔父さんはバッグを持って出て行った。


 薄暗い部屋で隣にいる彼女と二人だけ。

『ここで良い雰囲気に』と思わなくもないけど話が想定外で、気持ちの余裕がゼロ。


 彼女は立ち上がりデスクへ向かう。

「片付け手伝ってもらえる? 叔父さん、片付けないからゴミ出しとか大変なの」


「今、話したことだけど」


「素人の作家気取り? 叔父さんの十八番おはこ。言う事がまとを得ているからノートに書き足しているの。文壇デビューしなきゃだからね」

 彼女がウインクしてくる。

 愛らしい表情と抱いている野望のギャップが…


「それではなくて合宿所」


「合宿所? 叔父さんは東京郊外に住んでて、そこを合宿所にすると言うからダメ出ししたの。小説家になる刺激を受けるのなら山手線の内側に住まないとね」


 彼女はすでに場所選びの様子。

 他にも聞きたいけど、無理かな?


「広尾方面が第一候補。家具の買い出しとかあるから、よろしくね」


 デスクの上を片付けながら、満面の笑顔。

 今日は美少女スマイルのバーゲンセール?


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 こんな展開で、叔父さんと彼女と僕の不思議な共同生活が始まったんだ。


(了)

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この展開は、何なの!?(とある受験生のつぶやき) MOH @moh

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