　叔父さんがタバコを揉み消して口を開く。

「彼女が話した通りだけど、君を候補生にする前に確認したいことがある」

　候補生にエントリーしていませんけど？

「彼女が話した、投稿しているＳＦのことだけど」

　あの小説？いくらでも聞いてください、作者ですから。

「これからのあらすじとか？」

「違う違う、読ませてもらったけど長く書いているね。手を替え品を替えて。主人公たちはそのままで」

　叔父さんも小説を読んでくれた様で嬉しいけど『手を替え品を替えて』とは？

「アレ全部、君が書いたの？」

　どう言うこと？『小説家になろう』にゴーストライターを使って投稿する人とかいるの？

「はい、自分で考えてスマホやパソコンで打ち込んで投稿しています」

「そう？主人公の会社や街の様子が詳しいよね？　地方の高校生がよく書けるなと思ってさ」

　ハハーッ、叔父さんは小説に元ネタがあると勘ぐっているな？

「東京で働いている従姉妹（いとこ）から聞いた話を元にしています」

「フーン、海外の話もあるよね？『ミッション』だっけ？　上海やオアフ島へ行く話。現地の街並みとか詳しいけど行ったことあるの？」

　やっぱり疑われてる。取材力を舐めないで欲しいなぁ身内限定だけど。

「海外経験はありません。上海は父の海外出張の話を聞きました。オアフ島は姉が何回も行った話を聞かされています」

　説明を聞いていた叔父さんは、納得してくれたのかどうか分からないまま、目を閉じて天井を向いてジッとしている。

　返事が何かおかしかったのかな？

「叔父さん、起きてる？」

　彼女は飲み掛けのペットボトルを叔父さんの口に注ぎ込む、彼女は意外に大胆。

「ブフェ！　何するんだ！　お母さんに言いつけるぞ」

「言ったら、私だって叔父さんのこと言っちゃうもの」

　彼女は叔父さんの弱みを握っているようだ。

　叔父さんはソファに座り直した。

「高校生で長く書いていることは確かのようだな。そこそこ読者もいるみたいだし。書く気はあるみたいだから候補生にしよう。彼女の推薦もあるしな、ただし……」

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