ぼくのおとうと

@mikanlemon

第1話 たんじょう

『起きて!生まれたから!』

父の声で目を覚ます、

夏も終わりに近づいていたがまだ暑く

とても寝苦しい日だった事を今でも思い出す


3歳の妹は眠い目を擦り、ボーとしていた


『お母さんの所行くから支度して』

慌てる父の車で病院までいく


『弟?妹?』私の問いに父は


『弟だ!』運転中の父は嬉しそうに答える


『⋅⋅⋅⋅おとうと』妹はまだ寝ボケているようだ


病院に着き母の元に行くと 生まれたばかりの弟がそこにいた 静かに寝ている


妹の生まれた時、私は3歳で

余り覚えていないが

母に抱かれている妹を見てかなり嫉妬し

妹を病院に置いて帰ろうと

提案していたらしい


弟の時、私は6歳になり 今回はそのような事はなかった


『お疲れさま、ありがとう』父がなんとなく

涙ぐんでいるのが見えた


『仲良くしてね、二人とも』母の嬉しそうな

言葉に二人してうなずく


『元気な男の子ですよ!』いつの時代も

看護師の方はこういう言い方をする

確かに無難だし言いやすいのだろう


こうして我が家は1人増え

父、母、私、妹、弟、の5人家族となった


ごくありふれたどこにでもある

小さな幸せ、、当事者達からすれば世界中が祝福しているように感じるのだろう

私もおそらくそう感じていたのだと思う


この時はまだ誰しもが明るい未来を

描いていたと思う

幸せの絶頂に悪いことを考える人など

いないのだから

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