依頼者
近くにあるパーキングに車を止めて仕事場に向かう。駅の東口を出て通りを真っ直ぐ進む。時間は13時を過ぎた頃、人通りは少ない。少し歩きビルとビルの間に入ると扉に丸窓が付いただけの殺風景な建物が立っている。扉には準備中と書かれた看板が吊り下がっていた。
その扉から店内に入るとカランカランと扉に付いている鈴が人が来た知らせを店内に響かせた。
店内に入ると少女が1人店内のカウンターに座っていた。鈴の音で此方に気が付いて声を掛けてきた。
「おはようございます。アメさん。」
「おはようアオ。店長は?」
「店長ならコンビニへ出掛けましたよ。」
「そうか、そんな急ぎの用事では無かったのか。」
アオは立ち上がりキッチンに入って行った。キッチンの方から「コーヒーで良いですか?」と聴こえてきた。
カウンターに座り、「ありがとう。頼むわ」と返事をしす。暫くするとコーヒーの匂いが店内を包み始め、キッチンからカウンターの内側に出て来たアメが前からコーヒーを出した。
カウンターにある砂糖の入った瓶を手に取り、スプーン三杯分の砂糖をコーヒーの中に入れると、それを見ていたアオが「甘党...」と呟く声が聴こえた。それを無視してコーヒーに口を付けた。
自分で使っていたであろうグラスを洗っているアオに「バイトは慣れたか?始めてから2ヶ月は経っただろ?」と聞くとアオはため息をつきながら呆れた様子で「アメさん、ここ週末しか営業してないんですよ?バイト始めて2ヶ月経ちますけど数える程しか働いてないですよ。なんで平日も営業しないんですか?」と答えた。まあ、ここの本業はバーじゃないからなと思いつつ「色々あるんだよ。」と返事を返した。
アオはキッチンに仕事をする為に戻り、俺はカウンターに座りコーヒを飲んでいた。30分程が経った頃扉の鈴がカランカランと鳴った。店長が帰って来たのだ。店長はカウンターに座り「待たせて悪いな。ちょっと煙草を切らしていてね。」と煙草に火を付けながら悪びれる様子もなく謝った。呼び出したのなら待たせるなよと思いつつ「それで要件は?緊急って言ってたけど」と聞くと店長は「まあ、緊急といえば緊急だ。」というと店長はキッチンにいるアオを呼んだ。
「アメ、今回の依頼者だ。」
金と灰 雨野河童 @amenokappa
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