金と灰
雨野河童
プロローグ
目が覚めると部屋の電気はつけっぱなしだった。昨日の夜はそのまま寝落ちしてしまったようだ。テレビでは朝のニュース番組が流れている。時間は8時を回っていた。
バラエティ寄りのニュース番組は誕生日占いが流れている。今日は仕事場に行かなければならない日だ。準備...と言っても特に必要な物はない。床に乱雑に置かれた服の中からヨレヨレになった黒のシャツとジーパンを取り出して着替え、テーブルに置いてある財布をジーパンのポケットにしまう。
家を出る時間にはまだ少しある。ソファーに座りテレビのニュースをぼーっと眺めていた。ニュースの内容は青葉銀行の頭取が死去したというものだった。死因は脳卒中とキャスターは語った。なんでも総裁は入退院を繰り返していたそうだ。
「まあ、俺には関係のない話か。」
そう呟くと携帯に電話が入った。テーブルの上に置いてある携帯を手に取り電話に出る。
「もしもし、何のようだ。店長。」
「もしもし朝早く悪いなアメ、緊急で仕事だ。早めに仕事場に来てくれ。」
「緊急...ね。了解だ。すぐ行く。」
緊急の仕事なんていつ以来だ。まあ、金が入ればいいか。電話を切り携帯をポケットに入れる。玄関に向かい靴箱の上にある車の鍵を手にして家を出る。
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