俺は色恋にめっちゃ敏感だからみなまで聞かなくても年上幼馴染の恋路を完璧にサポートできる

赤茄子橄

本文

「私ね、かなり前から好きな人がいるんだぁ」



 今は金曜日の夜。

 日中の学校で「相談があるから部屋に行かせてもらってもいい?」と言われて、今聞かされた相談内容は、とてもわかりやすいものだった。


 うんうん、恋愛マスターの俺に相談するなんて、さすがは夕希ゆきねぇだ。

 その判断、とても合理的だと思うよ!


「なるほど。つまり、俺は夕希ねぇのその恋が成就するようにサポートすればいいってわけだね!」


「えっ? う、うーん、サポート? まぁ、そうとも言う......のかな?」



 こんなにわかりやすい話なのに、なんとも歯切れの悪い返事を返してくれている目の前の相談主は御門夕希みかどゆきさん。

 俺の幼馴染で高校生になった今でもいつも一緒に遊んでいる男友達の御門音夜みかどおとやの姉。


 幼馴染の音夜の姉なわけだから必然的に俺の幼馴染でもある。

 年齢は俺たちの2つ上。ちなみに俺の姉さんと夕希姉さんは生まれた日も同じ。


 両親同士も幼馴染だったらしいし、俺と音夜も同じ日に生まれてるあたり、俺たちの縁の強さを物語ってるよな。


 そんな16年目の付き合いの夕希姉さんが今回珍しく俺だけ・・・に相談を持ちかけてきたと思ったら、その内容がこれだったわけだ。


 そもそもそんなに人に相談するような人じゃないんだけど、あったとしても普段なら姉さんに相談するか、姉さんと音夜と俺の3人一緒に話を聞くことになっていたところだ。


 でもまぁ、相談内容が内容だからな。夕希ねぇが俺を相談相手に選んだのは、さっきも言った通り、合理的だ。


 姉さんも音夜も、こういう色恋沙汰にはてんで疎いからなぁ。

 そりゃあ、こんな繊細なこと相談できないだろうよ。


 うーん、それにしても夕希ねぇに好きな人ねぇ。

 しかも、「かなり前から」ときたもんだ。


 激烈に鋭敏な恋愛センサーを持ってる俺ほどの達人でさえ気づけなかったくらいだ。

 これまでよっぽど器用に隠してきたんだろうなぁ。


「ちなみにその相手とはどういう距離感なの?」



 そういうことって、こういう相談を受ける上でシンプルに気になるよね。

 どれくらい難易度が高い攻略劇になるのか、楽しみだぜ!


「そぉだなぁ。それなりに仲良くしてくれているとは思うし、私的にはすっごいアプローチしてるつもりなんだけど、全然気づいてもらえないっていう感じ? かな?」


「へぇ〜。なるほどなるほど。たくさんアプローチしても気づいてもらえないなんて、さては夕希ねぇの好きなやつって相当な鈍感野郎だね?」


「うんうん、そぉなの。もうホント信じられないくらい鈍感さんでさ〜。そのくせ本人は自分はとっても恋愛に詳しくて鋭いって思い込んでたりするみたいなんだぁ〜。まったく、困っちゃうよね?」


「ふむふむ、変わったやつなんだなぁ。でもまぁ、任せてよ! 俺くらいの恋愛マスターにかかれば、そんな鈍感くんと夕希ねぇの恋を成就させることもわけないよ!」


「ワァ、ホントウニタノモシイナァ」


「え? なんか信用されてない?」


「ソンナコトナイヨ?」



 なんか最後、夕希ねぇがカタコトで雑に返してきた気がしたけど、多分想い人の話をしてたらその人のことが脳裏によぎってポ〜っとしちゃったとかだろうな。

 ふっ。たったこれだけのやり取りで夕希ねぇの想い人の特徴を看破しただけじゃなく、夕希ねぇの精神状態まで見極められてしまうなんて......。自分の才能が恐ろしいぜ!


 ともかく、長年想いを募らせて、進展のない先の見えない恋だったということらしい。

 そんな相手との関係を進めるのはきっと、相当恐いはずだ。


 相手が夕希ねぇのアプローチに気づいてないってことはもしかしたら脈がない可能性もある。

 普通、気になる相手からのアプローチに気づかない男なんていないだろうからな。


 もしかしたら、変にギクシャクしないよう、あえて気づかないフリをしてるパターンもあるか?


 どちらにしても、もし告白して振られたりすれば、いままでと同じような関係さえ続けられなくなる可能性は少なくないだろう。


 それでも今回俺に打ち明けて助けを求めてきてくれたってことは、夕希ねぇは相当真剣に、覚悟を決めて関係を進めるつもりでいるんじゃないだろうか。


 うん、きっとそうだ。

 それほど真剣だから、姉さんや音夜抜きで俺と話すことにした、と。


 ふむ、話の筋は通るね。



 これは俺も心してかからないとな!




「それで、その好きな人って、誰なの?」



 まずはこれを確認しないと始まらないからね!


「そっ、それは内緒!」


「えぇっ!? それじゃあ全然手伝えないよ!?」



 ど、どういうこと!?

 俺に手伝ってほしいわけじゃないの!?


「は、恥ずかしいから//////」



 おぉ、照れてる夕希ねぇもやっぱり可愛いねぇ〜。


「あ、えっとね? 恋治れんじくんには、何かお手伝いしてほしいとかじゃなくて、私の相談に乗ったりしてほしいなぁって」



 うぇーい、上目遣いでお願いされてしまった。

 うーん、やっぱし可愛い。夕希ねぇは可愛さ、というか女性らしさの塊みたいな人だ。


 いつもニコニコしてておしとやかで、優しい。

 身長は150cmないくらい小さい割に、バストはEで、太すぎず細すぎない柔らかそうな肌に包まれたわがままボディの持ち主。

 料理もできて勉強もできる。運動はちょっとできなくてドジなところをよく見るけど、それもまた夕希ねぇの魅力と言えるかもしれない。


 ってかよく考えたらこんな素敵な夕希ねぇなら、俺が小細工しなくても普通に告白したら絶対付き合えるだろ。


 まぁでも、関係を進めるのが恐いってのは気持ちの問題だもんな。

 さっきの上目遣いの代金分は、俺がしっかり支えてあげなければ!


 ちなみに恋治っていうのは、言うまでもないと思うけど俺、天使恋治あまつかれんじのこと。

 うーん、父さん母さんのネーミングセンスも神ってるよね。


 「恋をおさめる」なんて、恋愛マスターになるべくして生まれてきたとしか思えないわ。


 しかも名字も「天使」。

 正式な読みは「あまつか」だけど、普通に読んだら「てんし」だ。


 つまり俺の名前は「恋を司る天使キューピット」を体現してるってわけ。

 いやぁ、まさに俺にピッタリな名前。両親にはめちゃくちゃ感謝だぜ!




 さて、それじゃあ、相手が誰か、探りを入れていきますか。


 とはいっても、実はもうだいたいアタリはついてるんだけどな。


 ボーイッシュで元気いっぱいな姉さんはともかく、夕希ねぇはそんなに友達が多いわけじゃない。しかもまぁまぁな人見知り。


 話したこともないような相手を好きになる可能性はそんなにないはず。

 つまり夕希ねぇが好きな相手は、普段から一緒に過ごす時間が長いやつの可能性が高いってことだ。


 それと、さっきの夕希ねぇとの会話で得た情報から、「かなり前から」気になっていて、「鈍感」な男らしい。


 これらの条件に当てはまる人物を俺は1人、知っている。


 「自分のことを恋愛に詳しくて鋭いと思ってる」ってのはよくわからないけど......。

 俺が知らないだけで当てはまっているのだろう。



 大黒雪桜だいこくゆきはる


 姉さんと夕希ねぇ、俺と音夜はそれぞれ生まれた日も病院も一緒。住んでるところもお隣さん。

 だからこの4人は生まれたときからの純粋な幼馴染だ。


 それに対して、大黒雪桜ハルは小学校からの付き合いの、準幼馴染的な男だ。

 ハルは俺と音夜の同い年で、普段は姉のような存在の恵比寿時羽えびすときはっていう姉さんたちの同級生と一緒にいることが多い。


 姉さんたちと時ねぇは小学校1年で出会って、それから今も変わらず仲良くしている。

 姉さんとも夕希ねぇとも仲良しだから、ハルも入れて6人で遊ぶことが多い。


 そんな俺たち姉弟4人と、ハル、それからときねぇの6人は、小学校から今の高校までずっと一緒に上がってきてる。


 まぁ、時ねぇの話は置いておいて、今大事なのはハルだ。


 俺はさっきまでの話から、夕希ねぇの想い人はハルじゃないかと睨んでる。というかかなり確信してる。


 ハルは夕希ねぇともそれなり以上に仲が良いし、あいつは凄いやつなのに自分に自信があんまりない。

 だから夕希ねぇからアプローチを受けても、自分に向いた好意に気づかなくても不思議じゃない。

 あるいは気づかないと思い込もう・・・・・としているとしてもおかしくない。


 さっきは夕希ねぇの素敵さとかアプローチに気づかない男なんていないだろう、なんて思ったけど、ハルのそういうところが鈍感さに繋がってるとしたら、気づいていないという状況も納得に値する。


 しかも、夕希ねぇも時ねぇからハルの話をよく聞かされてるみたいだし、1人の男として気になるのもむりからぬことだろうさ。



「そっかそっか、確かに好きな人を教えるのって恥ずかしいよね。無理に言わなくて全然大丈夫! 相談に乗るとか、もちろんだよ! 俺に任せて! 俺、夕希ねぇの気持ち、ばっちりわかってるから!」


「そ、そぉ? ありがとっ。でも、恋治くんは多分私の気持ち、わかってないと思うんだけどな〜」



 ピクッ。

 なんですと? この恋愛マイスターを捕まえて、言うに事欠いて「気持ちがわかってない」ですと?


「絶対そんなこと無いよ! 夕希ねぇの好きな人が誰なのか、俺わかってる自信あるもん」


「ヘェ〜、さすがは恋治くんだぁ」



 ゆ、夕希ねぇ......なんちゅうナメた視線を送ってくれるんだ。


 よろしい。ならば、軽く質問してみて夕希ねぇの想い人がハルだってわかってることを匂わせておかねば。


「その人って夕希ねぇより年下でよく一緒にいる幼馴染でしょ?」


「っ!?!?!?!?!?!?!?!?」



 ふっふっふっ。驚きに満ちたその表情。

 それだけで、俺の予想が完璧にあたってることを如実に物語っているよ。


「あはは、どう? あたってるでしょ?」


「れ、恋治くん......気づいてたのっ?」



 やっぱりね!


 あぁ、なんてこった。完璧過ぎるっ!

 やはり俺の恋愛マスターとしての才能は尋常じゃねぇな!


 たったこれだけの情報源から、夕希ねぇの好きな人を特定してしまった!!!


「当然だよ!」


「い、いつから気づいてたの?」



 お、それを聞かれてしまったか。


 気づいたのはさっき夕希ねぇの話を聞いたときだけどな。

 ここは恋愛マスターっぷりを知らしめて、俺が見事夕希ねぇの相談に乗れるような有能なヤツなんだってところをみせてあげて、安心させてあげるのがいいよね。


「んー、そうだなぁ。いつからかは覚えてないけど、結構前から夕希ねぇのアプローチには気づいてたよ。っていうかあんな露骨なアプローチ気づかないほうがおかしい気もするくらいだよね」



 ちょっと盛りすぎたかな?


「そっ、そうだよ! 気づかないなんておかしいくらいだったもん!」



 おっ、耐えた。

 これは勝ったな、がっはっはっ。


「え、でも、それならさっき、私の好きな人との距離感とか聞いてきたのはなんだったの!? というか、なんで気づいてたのに言ってくれなかったの!?」


 いやー、それはなー、気づいたのさっきだからなぁ〜。

 でもここでバレるわけにはいかない! あたかも前から知ってるかのように装わねば!


「え? だって、それを俺から言うなんてデリカシーないかな〜って思っててさ、ハハッ」



 どうだ? いけるか?


「そ、そうだったんだ......。私全然気づかれてないものだと思ってたよ。恋治くんはちゃんと私のこと見ててくれたんだね」


「そんなの当たり前だよ!」



 ふっ、またしても勝ってしまった。恋の百戦錬磨、天使恋治とは俺のことだ。


「だからさっきも言ったでしょ。俺にかかれば夕希ねぇの恋を成就させることなんてわけないってさ!」


「うん、うん......! そうだね! 恋治くんはすごいね! ありがと! 大好きよ!」



 気がつくと夕希ねぇは瞳から涙を流して俺に抱きついてきた。


 おぉう、Eカップの柔らかさがダイレクトにっ!

 こんなご褒美が前払いでもらえるなんて、なんて割の良い相談なんだ!


 恋する乙女は無敵っていうけど、確かにこんなに可愛い姿みせられたら誰もかなわんよっ!

 よーし、俺も全力でサポートするぞ〜!


「あはは、夕希ねぇは可愛いねぇ」



 泣きながら俺の胸元に頬ずりする夕希ねぇがあんまりにも乙女してたから、ついつい声に出しながら頭を撫でてしまった。

 ただ相談に乗るってだけでこれだけ感謝を示してくれるなんて、夕希ねぇはほんと感情豊かだなぁ〜。




 それから夕希ねぇが落ち着くまでしばらく撫で続けた。


 涙が止まった頃に夕希ねぇが目を閉じてキスまでしようとしてきてくれたけど、それは流石に報酬としては受け取り過ぎだし、ちゃんと好きな人とするまでとっておかないとだめだろうと思って、「それはまだダメでしょ」とやんわり制止しておいた。


 ちょっと不満そうな顔してたけど、しぶしぶながらも受け入れてくれた。


 夕希ねぇってたまに暴走するんだよね。



「ふぅ、そろそろ落ち着いた?」


「うん、もう大丈夫!」



 夕希ねぇの感情の爆発が収まったのを確認して、相談の続きを始めようか。


「おっけおっけー! それじゃあ、早速夕希ねぇの恋愛相談の続きと洒落こもうか!」


「......え? 相談?」


「そう、相談。まずは2人っきりでデートとか、したほうが良いんじゃないかなって思ってさ。そういうのセッティングしなきゃいけないでしょ?」


「!!!!!」


「俺はデートしていちゃいちゃしていくべきだと思うんだけど。それとも夕希ねぇはデート、したくない?」


「そんなことない! デートしたい! たくさんいちゃいちゃしたいよ!」


「だよね!」



 おっ、夕希ねぇ、いいノリだね!

 そうだよね、ハルと・・・夕希ねぇの2人っきりって、これまであんまりなかっただろうし、いきなり告白ってのはハードルが高いだろう。


 いきなり冷や水ぶっかけるみたいな心臓に悪い攻め方するんじゃなくて、まずは2人で出掛けてみて徐々に慣れてから告白するっていう指先から水をかける冷水シャワーの浴び方みたいな攻め方をしていくのがいいよね。


 そのためにはやっぱりデートでしょ!

 好きな人と一緒にいられて、告白までのステップにもなる。

 一石二鳥だ!


 ここは俺のキューピットとしての初仕事の果たしどころだね?

 最初のミッションは、ハルの予定と夕希ねぇの予定をすり合わせて、スケジュールしてあげることだ!


 実はさっき夕希ねぇをナデナデしてる間にさりげなく携帯端末からハルに連絡をとって、直近で空いてて遊べる日を教えてもらってたんだよな。


 俺はあんまり露骨になりすぎて夕希ねぇに無駄に気を遣わせないように端末の画面をチラッと確認する。


====

『ハル、今週末か来週末で遊べる日ある?』


『んー、今週末だと明日の土曜日は大丈夫。日曜は時羽ちゃんと予定ある。来週はどっちもちょっときついかな』

====



 うんうん、ハルは即レスしてくれるし、変に要件とか聞かずに答えてくれるし、やっぱほんといいやつだな!


「それじゃあ、夕希ねぇ、明日はどうかな?」


「は、早いね! でも......うん、うん、大丈夫! いっぱいおめかししていくね!」


「うん! それじゃあ、明日、10時に駅前で待ち合わせってことでいいかな?」


「ふふっ。ちゃんとデートっぽくするためかな? いいねぇ、わかった!」



 はっはっはっ、スケジュールさえも一発で決めてしまえるなんて、あまりにも有能すぎるぜ。


「それじゃあ私、明日の準備しなきゃだから、もう帰るね! 今日もありがとね、恋治くん♡」


「うん! それじゃあ、夕希ねぇ、おやすみなさ〜い」


「おやすみ、恋治くん。大好き♡」



 おっと、可愛い『大好き』いただいちゃいました!

 相談に乗った甲斐があるというものだ!


「ははっ、俺も夕希ねぇのこと好きだよ〜」



 玄関まで見送ってバイバイしながら、夕希ねぇが「おじゃましました〜」といってバタバタとうちをでていく足音を聞きながら、ハルに『明日駅前で夕希ねぇと待ち合わせでよろしく!』とだけメッセージを送った。


 それから1分も経たない内に、『夕希さんも? なんかよくわからないけど、了解』と返事が返ってきた。


 「も」ってなんだよ「も」って。

 こうやって言われたらデートってわかるでしょ普通。俺は行かねぇよ、夕希ねぇだけだよっ。


 やっぱハルは超絶鈍感なんだな〜。

 もっと自信持って素直に人からの恋心を受け止めればいいのに。



 あぁ〜、でも俺もそろそろアツい恋愛とかしてぇなぁ〜!

 俺はキューピッドとしては恋愛マスターだけど、自分で恋愛はしたことないからなぁ〜。


 ま、いっか!

 恋人くらいそのうちできるっしょ!


 ほんじゃぁ今日はいい仕事したし、風呂入って気持ちよく寝よ!






*****




ぶーっぶーっぶーっぶーっ。


「んぁぁ?」



 なんだぁ? 電話? 朝から? 珍しいなぁ〜。


 電話で睡眠を妨害されたときってかなりきついよね。


 正直でたくないんだが。


 でもこんな寝ぼけた状態でも恋愛マスターの俺は気づいてしまうのだ。


 時計を見ると時刻は10時30分。

 多分、この電話、夕希ねぇからだな?


 ハルが遅刻するわけないから、夕希ねぇ側に問題発生かな。

 きっと、合流できたはいいけど、どうやって進めたら良いのかわからなくて俺にヘルプを求めてきているに違いない。


 しょうがない。眠いけど、天才キューピットの俺が、一肌脱いであげますかね。


「ふわぁい、もぉしもし?」



 電話出たところであくびが出てしまった。

 まぁ寝起きだししかたないよね。

 あるあるだよな〜。




「..........................................」




 電話に出たと思ったけど、何も声が聞こえてこない。


 電波でも悪いのかな?


「えーっと、もしもーし?」


「..........................................恋治くん?」



 えっ!?

 今のは多分、夕希ねぇの声。

 画面には夕希ねぇの電話番号って表示されてたし、聞き慣れた声だし、さすがに間違えるってことはないと思う。


 それなのに「多分」って思ったのは、これまでに聞いたことのない、背筋が凍るような、抑揚のない冷たくて低い声に聞こえたから。





 ま、まさか夕希ねぇ................................................。






 寝坊したのか!?

 ここまで寝起きの夕希ねぇの声が低かったかはわからないけど、起きたてってちゃんと声出ないもんな〜。


 夕希ねぇは定期的に俺の部屋で一緒に寝て起きてるから直接聞くことはあっても、電話で寝起きの声を聞いたことはないからな。

 端末越しならこんな感じに聞こえるんだろう。


 ってか、あっちゃまぁ〜。

 夕希ねぇは朝弱いもんな〜。


 しかも昨日は帰り際、めちゃくちゃ楽しみにしてそうな感じだったし、「おめかししていく」って言ってたから、夜遅くまで服とか選んでたのかも。

 それなら寝坊もしょうがないってもんだ。


 それにしても、まさかの寝坊してどうしたらいいかわからなくて俺に連絡かけてきたってところかぁ〜。

 そういうときは先にハルにかけてあげるもんだと思うんだけどなぁ。


 もしかしたらこの声をハルに聞かれるのが嫌だったとかなのかもしれない。


 それなら俺が替わりにフォローと一緒にハルに伝えてあげるのがキューピットの仕事ってもんですよね!



「ははっ、夕希ねぇ、もしかして寝坊したのー? 大丈夫だよ、俺からハルに『昨日あんまりにも楽しみにしすぎてたみたいだから眠れなくて寝坊しちゃったんだと思う』ってちゃんとフォロー入れとくからさっ」



 おそらく落ち込んでると思われる夕希ねぇを元気づける意味でも、テンション高めでそう伝えた。


 だけど、伝えてからも10秒間くらいなんの返事もない。

 「おーい」とか「夕希ねぇ〜?」とか問いかけてみても何も聞こえない。


 もしかしたら電波悪くて電話が切れたのかとも思って端末の画面を確認してみたけど、ちゃんとまだ話し中。


 さすがにこれだけ返事がないと俺も焦ってきた。

 もしかしたら何か事件とか事故とかに巻き込まれてのヘルプな可能性もある。


「えっと、どうしたの!? もしかして寝坊よりやばい状況になっちゃったり!? 何かピンチなの!? 俺が今から迎えに行こうか!?」



 俺がそう伝えると、数瞬の沈黙のあと、ようやく夕希ねぇの声が聞こえてきた。


「恋治くん......今自分のお部屋にいるの?」



 思ってたのとちょっと違う第一声に戸惑うも、質問は簡単。

 起きたばっかなので当然自分の部屋なうだ。なので素直にそう答える。


「えっ? そうだけど」


「..................私、今から行くから。ぜっっっっっっっっっったいにおうちからでないでね。........................あと、覚悟しておいてね『ブツッ』」



 夕希ねぇは言い切った瞬間電話を切ってしまった。

 相変わらず底冷えするような声だったけど。こころなしか涙声だったような気もする。



 今からうちに来る......。俺に部屋にいるように言った......。覚悟しておけ............?


 まさか....................................。












 テンション上がりすぎてハルに告白して振られたりしたのか!? 朝から!? それはきついな......。


 それで俺に慰めてもらいにくるってこと、だよな。

 めっちゃ号泣しちゃって、俺に迷惑かけるかもしれないから、ちゃんと覚悟して慰める準備しとけってこと、だよな?


 えー、ってか、夕希ねぇなら絶対いけると思ったのに......。

 やばい、俺が余計な発破をかけちゃったせいで夕希ねぇが失恋......。申し訳がたたなさ過ぎる。


 最強キューピット失格だわ。つれぇ......。


 ............いや、今1番つらいのは夕希ねぇだろ。よしっ、ここは切り替えて夕希ねぇをばっちり慰める準備をして、がっつりおもてなししてあげよう!

 まずは、うまい料理でも作ってあげようかな。




*****




 今、夕希ねぇからの電話があってからおよそ30分が経っている。


 場所は夕希ねぇに言われた通り家の中。というか俺の部屋。


 だけど、正直俺はめちゃくちゃ混乱してる。






 なぜか夕希ねぇだけじゃなく、姉さんと音夜、ハルと時ねぇも一緒にきたことに。


 全員が冷たい視線で俺を睨みつけながら、正座させられている俺を囲むように仁王立ちしていることに。

 誰がどう見ても、明らかに、全員がブチギレていることに。


 全員の額には今にも血管が切れそうなくらい青筋が浮かんでいる。


 ど、どういうことっ!?

 なんでこんな怒ってるの!?


 あ......もしかして......。






「も、もしかして、部外者の俺が夕希ねぇの恋路に首を突っ込んだから、余計なことしたって怒ってる!?」



 と思ったんだけど。え、でも相談してきたの夕希ねぇだしな......。

 とか考えてると、ブチっと全員の血管が破裂した。気がした。





 しばしの沈黙があって、最初に口を開いたのは俺の本当の姉さん、天使舞依あまつかまいだった。


「はぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ。れんくん?前々から恋愛だとか男女の機微が一切わからない子だなぁとは思ってたけどさぁ。今日のは本当に最低なんじゃない?」



 え? 俺が男女の機微がわからないだって?

 はははっ、そんなことあるわけないじゃん。


「いやいや、姉さん。何が最低なのかはわからないけど、俺は恋愛マスターだよ『『『『『どの口が言ってんだ!』』』』』......あ、いや、この口です......」



 弁解しようと思ったら一斉にキレられた。

 いやいや、え?


 それって俺が恋愛マスターじゃないって言ってる?

 みんな見る目なさすぎじゃない?


 いや、確かに今回は夕希ねぇとハルならうまくいくって見誤っちゃったのかもしれないけどさ......。

 ちょっとした失敗くらいは、マスターにでもあると思うんだ......。


「はぁ......。それで? 恋治くんはどうして今日の夕希さんとのデートにボクを呼んだの?」



 2人目の発話者は夕希ねぇの想い人である大黒雪桜ハル


「え? それ俺が言ってもいいやつじゃないかなって思うんだけど......。いや、呼ばれた時点で気づくべきだと思うんだけど『『『『『だまりなさい!』』』』』......ごめんなさい」



 えぇ。正論を言ったらめっちゃ怒られたんだけど。

 これってみんな恋愛偏差値低すぎて、夕希ねぇの気持ちに気づいてないとか、そういうこと?


 なんかの誤解で俺、今こんな裁判みたいな状態になってるの?




 何を言うべきか迷ってまごついていると、この裁判の主宰者、夕希ねぇが重い口を開いた。


「ねぇ......恋治くん。私のこと、そんなに嫌い、だったの?」



 夕希ねぇの言ってることの意味もわからなかったけど、それよりも......。


 さっきまで俯いていて夕希ねぇの顔がわからなかったけど、今こうして対峙して見て、ぎょっとした。

 その表情には悲しさと怒りがいっぱい込められていて、両目からは涙がほろほろと流れていた。


「い、意味がわからないよ! なんで俺が夕希ねぇのこと嫌いなんてことになるの!? めっちゃ好きだよ!?」


「それならなんで!?」


「なっ、なにが!? ほんとに、なんの話なのこれ!?」



 俺の混乱が最高潮に達したころ、音夜がもの凄い怒りの形相をしてドスの効いた声をあげた。

 いつものおとなしくて穏やかな様子からは想像もできない表情と声で言ってきたのは......。


「恋治くん、わからないなんて言わせないよ。今日の姉ちゃんとの初デートに雪桜くんを替え玉にして、姉ちゃんの恋心をおもちゃにして、めちゃくちゃに傷つけただろ!!!!!」



 か、替え玉!? いやいや、本命でしょ!? どゆこと!?


 最高潮を超えた混乱の極地に至った俺に、時ねぇが静かに、でも丁寧な説明を加えてくれた。


「さっき夕希ちゃんから聞いたよ。昨日、恋治くんが夕希ちゃんとお話して付き合うことになったって。長年秘めた、いや、全然秘められてもなかったけど、ようやく恋治くんへの想いが叶ったと思わせておいて、今朝夕希ちゃんがめちゃくちゃ楽しみに待ってたデートをすっぽかしたって。それどころかそこに私の・・ハルくんを替え玉として送り込んで! そうやって夕希ちゃんの想いをぐちゃぐちゃに踏みにじったって!!!!」



 えっ、えっ、えっ......!?


「え、でも、俺は夕希ねぇがハルのことを好きなんだと思って......。それに、ハルが時ねぇのって......。え? なんで? どういうこと?」



 意味不明な俺の頭の中の状態が言葉になって出てきた感じ。


「夕希ねぇが俺のことを好き? 昨日付き合うことになった? 夕希ねぇが楽しみにしてたデートを俺が・・すっぽかした? ハルが替え玉? な、なんで!?」



 俺の狼狽っぷりが周りにも伝わったのか、みんなも極限の怒り状態から混乱した面持ちに変わったように見える。


「どういうことって、それを聞きたいのは私だよぉ」



 夕希ねぇが涙ながらに叫ぶ。


 俺も混乱覚めやらぬ中だけど、とにかく状況を確認しなきゃって思いで、なんとか昨日あった出来事の説明をする。


「えっと......だって昨日は夕希ねぇが相談があるってうちにきて。それで確か『好きな人がいる』って打ち明けられて。俺が夕希ねぇの恋愛をサポートするよって話になって。話を聞いてたら夕希ねぇが好きなのはハルだろうなって思って。それで今日のハルと夕希ねぇのデートをセッティングして......」



 俺のその説明を聞いているうちに、みんなの視線が怒りから呆れに変わっていくのがわかった。


「もぅ! 全然、なにもかも違うから! 私が好きなのは昔っから恋治くんだよ! 『いつも一緒にいる年下の幼馴染が好きなんでしょ』って言ってくれたから。恋治くん気づいてたんだって驚いたけど嬉しくなってたのに! というか雪桜ゆきはるくんは時羽ちゃんとお付き合いしてるから! 皆知ってるから! っていうかやっぱりなんもわかってなかったんじゃん! 嘘つき! ばか! 鈍感! もう本当に最低!!!!」



 夕希ねぇの叫びで俺の中に凄い情報量が流れ込んできた。

 俺はもうキャパオーバーなのに、夕希ねぇはさらに続ける。


「何が『あんなにアプローチされて気づかないわけない』よ! 恋治くんのお部屋に定期的にお泊りしに行ったり、毎日恋治くんのお弁当だけ私が作ったり、キスとかもっとえっちなことも迫ってみたり、舞依ちゃんにお願いして2人っきりにさせてもらったり、いろいろ、本当にいろいろしてきたのに! 気づいてなかったんじゃん!」



 !?!?!?!?!?!?!?


「今日だって、ようやく恋治くんとお付き合いできて初デートだって思ってすっごく楽しみにしてたのに。来てくれたのは雪桜くんで。私、恋治くんにバカにされただけだったのかなってすっごく悲しくなって!!!」



 !?!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?!?


「だから、私もさすがに怒ってみんなに声をかけてこうやって集まってもらって恋治くんを問い詰めて!」



 あ......あぁ......あああああああぁぁぁぁぁ......なるほど、そういう、ことだったんだ。


「そしたらなに!? 恋愛マスター!? 笑わせないでよ! 恋治くんは鈍感だよ! 鈍感っていう言葉だけじゃ全然表しきれないくらい恋愛のことなんにもわかってないよ! 女の子の心も全然理解できる気配もないじゃん!」



 あぁ、あぁ。ごめん、夕希ねぇ。ほんとにごめんなさい。


「ねぇ!? ここまで言われたらさすがにわかった!? 私の気持ち! 私がどれだけ恋治くんのこと好きなのか! わかったのかって聞いてんの!!!!!!!」



 ここまで取り乱して荒い言葉を使う夕希ねぇを始めてみた。

 小さくておっとりしたいつもの夕希ねぇからは想像もできない姿......。


 それくらい俺のこと思ってくれてたんだ。


「......ごめんなさい、夕希ねぇ。すっごくよくわかりました。俺、ほんとに最低だった。なんにもわかってなかったみたい。俺が鈍感だったせいで夕希ねぇのこと、めっちゃ傷つけてた。謝っても許してもらえないかもしれないけど、それでも、本当にごめんなさい。それから、俺のこと好きになってくれてありがとうございます。死ぬほど嬉しいです」



 心からの五体投地をした。

 言葉だけではこの反省の気持ちは表しきれない。


 もちろん土下座でも表しきれるものじゃない。


「みんなにも、ごめん。俺のせいでみんなを巻き込むことになって......」



 頭をあげないまま、他の皆にも謝る。





 刹那にも、数秒にも、数分にも、数時間にも感じられる時間の沈黙。

 それを破ったのはハルだった。


「ま、まぁ、そういうことならボクたちはもういいからさ。気にしないで」



 さっきまでとは違う優しい声で語りかけてくれる。

 顔を上げてみると、他のみんなも気まずそうに頬をかいたり目を反らしたりしながらも、ただ呆れた顔で頷いてくれていて。


 つい涙が溢れてきてしまう。

 泣いて良い資格なんて俺には無いだろうに。


 それでも許してくれた親友たちと姉さんたちに感涙に咽いでいると、姉さんも優しい声で続く。


「うんうん。れんくん、大丈夫。夕希ちゃん以外はもう勘弁してあげると思ってるよ。でもね......?」





 でも? なんだろう、何を言われるんだろう。




「これに懲りたら2度と恋愛マスターなんて名乗らずに、謙虚に夕希ちゃんの想いに寄り添っていこうね?」



 そ......っか。俺は恋愛マスターじゃなかったのか......。

 そうだよな、夕希ねぇの気持ちも、ハルと時ねぇの関係も、何も気づいてなかったんだもんな。俺だけ。


「わかったよ......。これからは恋愛ポンコツダメ男の自覚を持って生きていくよ......」



 痛いほど身にしみました。

 っていうか、何で俺自分のこと恋愛マスターだって思ってたんだろう。全然意味わからない。


 めちゃくちゃ反省しないと......。


「うん、よろしい! それで? 夕希ちゃんへの誠意はどうやって見せるつもり?」



 そう姉さんに言われて、さっきからちょっと目をそらしていた夕希ねぇの方を見る。


 しばらく見つめあったあと、夕希ねぇが口を開いてくれた。




「私のこと、嫌いじゃないの......?」


「嫌いなはずないよ。......今更何いってんだって思うかもしれないけど、好き......だよ」


「......ふーん、へー。......どこが好きなの?」


「えっと、俺のことめっちゃ好きで居てくれたところとか、可愛い表情とか仕草も素敵だと思ってたし、いつも気遣ってくれる優しいところも好きだし、それにおっぱ......も、全部、ずっと好きだったって、気づきました」



 そう、多分、俺はずっと夕希ねぇのこと好きだったんだと思う。

 でも、それがかなわない可能性が恐くて、夕希ねぇの露骨なアプローチにも他意はないって無意識に思い込んで、心を守ろうとしてたんじゃないだろうか。


 その抑圧されてた思いが、今回のことで開放されて、今俺は夕希ねぇのことがどうしようもなく欲しくなってしまってる。


 何年も気づかないで、しかも昨日と今日でめちゃくちゃ傷つけてしまって、もう嫌われたかもしれない。

 付き合ってもらう資格なんてないかもしれない。


 けど、今はとにかく心からの思いを伝えなきゃ失礼だ。


「もし......もしも夕希ねぇが許してくれるなら、俺は夕希ねぇとお付き合い、したい......です」




 また土下座の姿勢でそう言った。

 最低の告白シチュエーションだ。


 本物のキューピットがいたのなら、お腹を抱えて涙が出るほど笑い転げていることだろう。


 でも、そんなの関係ない。とにかく誠意を伝えなきゃ。


 しばらく五体投地を維持していた。

 すると、頭にふわっと優しい手の感触を感じる。


 これは、撫でられてる?


 おそるおそる頭を上げると、目の前にはまた目にいっぱいの涙を浮かべた夕希ねぇが、ものすごい優しい笑顔で俺のことを撫で続けてくれていた。


「えっと、これは、許してくれるってこと、かな?」



 そう問いかけると、夕希ねぇは撫でていた手をおろして目元に流れる涙をぐいっと拭って深呼吸してから、笑顔で話しだした。


「許しません」



 ......え?


「え?」


「だから、許しません」


「ゆ、許してくれないの!? そ、そっか......やっぱりこんなに傷つけちゃって、今更お付き合いなんて、してもらえないよね......」


「いえ、お付き合いはします」



 ふぁっ!?


「お付き合いはさせてもらうよ? 当然だよ、私こんなに恋治くんのこと好きなんだもんっ」


「え、えっと?」


「でもね? 今日のことは許さない。ちゃんと償ってもらうから」



 な、なるほど。俺はまだ何も償えてないもんね。


「どうすれば、償えるかな?」



 考えてもどうすればいいか、恋愛クソ雑魚ポンコツダメ男バカの俺では、なんもわからないよ。


「そーだなぁ」







 夕希ねぇはたっぷり考えたあと、罰を宣告した。


「それじゃあね、2つ、私の言う事聞いてもらおうかな〜」


「なんでも、言うこと聞きます」



 たった2つで許してくれるなんて、やっぱり夕希ねぇは優しい......。

 今は幼馴染の皆も見てるし、その前でちゃんと約束して償おう。





「まず1つ目は、18歳になったら私と結婚すること。このあとすぐ婚姻届を書いて、金庫に保管することね」



 あ......えっ?


「もう1つは、一生私のお尻に敷かれて言うことを聞き続けることね」



 あーっ......あ〜。そういうパターンか〜。


 ドラゴンボールへのお願いを「何個もお願い叶えて」っていうお願いにするみたいなやつね。

 おーけーおーけー。


 それくらい全然覚悟できてる。




「うん、わかったよ夕希ねぇ! むしろこちらからお願いします!」



 俺が元気よくそう答えると、そこにいた皆の空気がだいぶ緩んだ気がした。


 なんか「やれやれ」とか「恋治くんは本当にアホだねぇ」とか「よかったよかった」とか野次馬の声が聞こえる。


 だけど、今回皆のおかげで夕希ねぇが精神を壊さずに俺のもとに来てくれたんだって思うと、ほんと感謝しかない。


 夕希ねぇも、頬に涙の跡を残してはいるけど、今の表情は晴れやかでニコニコしてくれている。


「大好きです。夕希ねぇ」


「うん、私も!」



 2人は幸せなキスをして終了。












 とはならず。


「それじゃあ、最初の命令ね♫ 恋治くん、私に『どうか足を舐めさせてください』ってお願いしてみて?」


「..............................え? そんな奴隷みたいなこと......?」


「うん? 恋治くんはもう私のものなんだから、忠誠の誓いは必要でしょ?」


「あ......はい......」


「なぁに? 私の足をなめるのは嫌なの?」


「いえ、滅相もありません!」




 こうして2人は幸せな忠誠の誓い足と口でのキスをした。

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俺は色恋にめっちゃ敏感だからみなまで聞かなくても年上幼馴染の恋路を完璧にサポートできる 赤茄子橄 @olivie_pomodoro

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