第19話  今の僕で出来ること。

「葵ちゃん入学おめでとう!」

 あれから月日は流れた、俺は中三、受験生に為って居る来年は高校生に成る予定、姉さんが通った学校を目指している。


 大丈夫かな?、この子…。

 素直な感想、ランドセルの巨大な事、ランドセルが歩いて居るようにしか見えない…。


 小さく生まれたから仕方ないが、小学校に入学するこの歳で身長が1メートル無い、92cmしか無いんだ、だからふつうのランドセルが巨大な物に見えて仕舞う…。


 例の靴だが、未だあの後は一回しか作って居ない、残念だが其れ位ゆっくりに成長して居る。

 これまでの間に有った変わった事と言えば、信じられない事が一つ在った、あんなに小さかったんだから可能なんだが、我が目を疑う事が…。


 一人で散歩に出かける事が在る、御近所の眼が有り心配しないで良いから、最近では一人で公園に行く事も有る、何時もの衛視が付き添って居るのは言う迄も無い。


 歩みはゆっくりなので時間も掛かるし、途中で逢う猫や、仲良く成った犬などその度に歩みも止まる、まぁ見えているのに待てど暮らせどと言う事だ…。


 唯その日は違った、眼を疑う様な速さであの子が移動している?、何が有ったんだ?、俺の見間違いか?、嫌間違ってないあの子で、葵ちゃんで間違ってない、何度目を凝らしても見間違いではない…、何が起こってるんだ?…。


 全身が見えて居る訳では無かったので其れが解らなかった、ブロック塀の上、フェンスに成ってる所から肩から上が見えるだけ、そして角を曲がり此方の正対した、其処で謎は判明した。


 そう在る物に乗って居た、良く見る物だ、今でも通学路の交差点に毎朝いて見守っている、そう通学路を見守っているあの柴犬、犬に乗って駆けて居る…。


「そう来たか…。」

 確かに体は小さいよ、歩くのも遅い、しかも途中でエンコするし…。

 よく見ると後ろに二匹ついて来る、見知った顔だ…。


「ただいま、お兄ちゃん!」

「お帰り、でも今日は如何したの?」

「コロが送って呉れるって言ったの!」

「コロが?」

 見下ろすとなんかどや顔してる気がする。


「ワン!」

 短く返事した、のか?。

「ニャン!」

「ウニャン!」

 返事されたのか?、此方もなんか偉そう…。


「コロさんありがとう!、ミックとクー助もバイバイ!」

 如何見ても一仕事終えた様に、三匹は一度振り返ると来た道を帰って行った。


 そんな事が在った、唯、動物の友達は沢山いる、近所のおばさん、おじさんには可愛がられているが、未だ同年代の子供の友達が居ない、小学校でも同じ様だ本人は気にして居ない様だが。


 この歳の女の子、スカートで通学するのが当たり前、でも脚の事が有りズボンを履いての通学の成る、其れも有り飛んだり跳ねたりが出来ないから体育は見学となる。


 思う所は在ると思う、其れでも表には出さない、本当に強い子とは此の是事を言うのだろう。


 早く友達が出来れば良いんだが、此ればっかりは俺じゃ如何にも出来ない、只、以前より更に懐かれている気がする、叔母さんは仕事が忙しい様で今迄より少し帰りが遅い、姉さんの部屋、俺の部屋からも葵ちゃんの家が見える、灯が灯る迄宿題や勉強している俺とは大違い…。


 少し嬉しい事も有る次に作った靴の事、歩きにくく為ったと言って居て新しい靴を作る時、寸法を取って見た、確か機歩きにくく為る筈左の足がきつく為って居る、そして右足との差が2㎝に為って居た、左脚が右足に少し追い付いて居た。


「お兄ちゃん、歩きにくく為ってるの…。」

「如何したのかな、教えて呉れる?」

「左の方がきついの、後、歩きにくいの?」

「そうか、見せて呉れる?」

「分かった!」

 そう言い靴を脱ごうとした、右足はすんなりと脱ぐことが出来たが左足が脱ぎにくそう、悪いかなとは思ったが、直ぐに又お願いした。


「ゴメンね、又履いて見て呉れるかな?」

「いいよ、履いて見るね。」

 受け答えがしかっり出来ている、ここも此の子がクラスで浮いて仕舞って居る原因なんだろう、同じ学年の子よりしっかりとした受け答え、見た目の幼さとギャップが有り、同じクラスの女子児童に評判が悪い理由なんだろうな…。


「よいしょ!」

 右足側はすんなりと履けたのだが…。


「よいしょ、よいしょ、う~んよいしょ。」

 かなりきつそうだ…。


「よいしょッと、履けたよお兄ちゃん!」

「判ったよ、ゴメンね左足の方を脱がせるね。」

 座らせて左足側だけ靴を脱がせた、かなりきついな?。


「一寸待ってね!」

 右足は問題無い様でサイズも丁度いい様だ、左脚だけ何できついんだ?。


 左足の靴、加工して取り付けた中敷きを取り外す、そして左足に宛がうがやはりそれじゃ緩い様だ、中敷きが悪いのかな?、取り敢えず立たせてみる。


「立って見て呉れる?」

「分かった、立って見るね。」

「歩いてくれる?」

「うん!」

 アレ?、何かおかしい?、揺れない筈の体が揺れている?、然も前と反対側に…。


「こっちに来てくれる?」

「ハイッ!」

 元気な返事だ、此れだから皆に可愛がられるんだな…。


「はい、気を付け!」

「ハイッ!」

 やはり僅かだが右の方が下がってる、加工した中敷きは5㎜の厚み、良い事じゃ無いか!。

 そう左足の成長が遅れてる此の子、其れなのに右が下がってる、少しずつだが左足が追いつき始めた証拠、だから元の侭では右足の方が足りなくなる、そう言う事か歩き辛い訳だ…。


 今日は金曜、明日は午前半日授業、明後日は確か父さんも休みだから道具を借りれる、作業の監督もして貰える、今日の所は…。


 左足側の中敷きのつま先と、踵の当て物を減らして、薄い中敷きに換えた、右足側は大人用の中敷きを挟みで整形し、三枚重ねこれでバランス取れた位かな?。


「如何かな?、歩いて見て呉れるかな、葵ちゃん。」

「楽ちんに為ったよ、ありがとうお兄ちゃん!」

 皆無とは行かないが、改善出来たようだ、と言う事は左右の差が2cm位まで縮んだと言う事か…、良い事だ外から見た見た目も良くなると言う事だ、後、学校内でも上履きを履ける様に成る、そうだ他の子との見た目も変らなく出来る筈だから。


「葵ちゃん、学校の中では何を履いてるのかな?」

「お姉ちゃんに貰ったサンダル履いてるよ?」

「何か言われて無いかな?」

「・・・・・。」

「そうか、解ったよ。」

「お兄ちゃん?」

「今履いてる靴は如何かな?」

「楽ちんになった!」

「良かったね、じゃあお母さんが帰って来るの待ってようね。」

「ハイッ!」

 父さんに頼んで道具を借りて、明後日は二足、外履きと上履きを作ろう今の僕で出来る事を。

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