第2話 嬉しい楽しい「追放」だ。お役御免だ。

「お前は戦いの役に立たない。クビだ。」と、ドヤ顔で勇者こと王子がわめく。

「わたくしは王国軍後方支援師団から派遣された後方支援担当の戦務魔法師であって、貴方のパーティーのメンバーではありません。このため、貴方に人事権はありませんので、貴方はわたくしを解雇できません。後方支援をお断りになることはできますが。

 なお、後方支援担当が直接戦闘に加われば、食糧や水、矢並びにマジックポーションなどの消耗品の供給や宿営ならびに索敵・哨戒などに支障を来たし、後方支援担当が死傷すれば、それらの提供が停止され、パーティーや部隊は戦闘を継続できず敗退する。これは兵学の基礎中の基礎ですし、ましてやここは魔族の支配地域。後方支援なしには日々の暮らしも成り立たないかと存じます。」と、極力ポーカーフェースを保ちつつ俺は言う。

「うるさい。クビだ。」とバカ王子。

「では、こちらの後方支援中断に関する書類にサインを。」と、言い終わるまで待たずバカ勇者兼バカ王子が、書類をひったくりサインして投げてよこす。

「それでは、さようなら。お元気で。」と、書類を受け取ると俺は瞬時に転移魔法を発動し、王都の原隊に復帰した。

 さぁ、お役御免だ。狭いながらも楽しい我が領地。さっさと除隊して領地に戻り、スローライフを送ろう。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

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追放されてスローライフを送ろうと思ったらスノーライフだった件。 @maruidan5nosuke

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