まるで童話を読んでいるかのような、読んでいくうちに、とても柔らかいイメージが自分の中で広がっていく感じがしました。 老人の優しさや強さ、竜が持つ無邪気さ、それらを感じられる文体があり、二人は明確な言葉で会話していないからこそ感じる絆が読後に残ります。 そうして感じ取った二人の絆に、物語には書かれていない老人の過去や家族を想像させる余地があり、決して長いとはいえない物語であるのに物語の深さを感じ取らされました。
何百年と生き、一つの国の栄枯と人の儚さを胸に刻んできた老人。ふいに現れた懐かしい弟子。そして転がり込んできた幼い竜。それぞれの想いが交錯したところで物語が動き出すーー。あらゆる執着を捨てた老人が最後に心で告げたセリフに、生きることへの光が見えた気がしました。静から動への描写も自然でよかったです。