第36話 おしまい
こうして弁護士相談を終えた結果、兄と姉はそのまま実家に住み続けることになりました。
ライフライン関係は全て連絡して、「遺産放棄して、滞納分は払えない」「新しい名義で契約し直して欲しい」と。
母の遺した現金については、「今後ライフライン整えたり、各所に伝達事項したりすんのにお金と手間暇がかかるだろうから」と、兄と姉に丸ごと渡しました。
結局兄が姉に「母さんから、いくら返ってくる予定だった?」と聞けば「9万円」と答えたそうで――これは丸ごと渡さないと禍根が残りそうだと言って、全部渡していましたね。
兄としては、「俺はあとで未支給年金もらえるし余裕」と思っていたはずです……一銭ももらえませんでしたけど(笑)
正直私は共に暮らしていた訳ではありませんし、様々な手続きに関してもノータッチなので……それで「私にもお金くれよ」なんて言えるはずがありません。
――というか、後々面倒なことになりそうなので要りません。
お陰様で私の家は変わりなく、平和そのものです。
また、弁護士さんに相談する際の登記事項証明書で初めて知ったのですが、私達3兄弟、全員「父」の遺産放棄をしていないんですよね。
私の認識的には、「父の遺産は、母が相続した」でした。
しかし実際には「遺産放棄」手続きをしないイコール「単純承認」、つまり「相続」に同意したことになってしまうそうです。
放棄しなかった場合、子には自動的に6分の1の財産が相続されます。
だから実家の家屋――父母がそれぞれ2分の1ずつ所有していると記載されていたのですが、誰も父の遺産放棄をしていないとなると、2分の1の更に6分の1のずつ……12分の1という微々たるものですが、私達兄弟は実家の「所有者」ではなく、「共有者」に当たります。
しかしだからこそ、母の遺産を放棄しても「父の所有する家の共有者」なので、家が競売にかけられていても問題なく住めるのだそうです。
遺産放棄というのは、遺産の存在を知った日から起算して、3か月以内に終えなければなりません。
父が亡くなったのはもう4、5年前ですから、今更放棄できないんですよね……。
父宛ての郵便は見当たらなかったので、借金が残っているとは考えづらいですけれど……少し怖いです。
ちなみに母の放棄は、ついこの間、兄弟全員で済ませました。
あとは各所へ「母は亡くなりました。もう督促送って来ないでねー子供達は全員遺産放棄しましたー」と連絡するのみ。
ちなみに、家裁の方から「○○様が亡くなられました、あなたは遺産放棄しますか? しませんか?」なんて確認連絡は来ませんので、注意してください。
自分の意志で家裁まで行って、放棄手続きをしなければなりません。
子が全員放棄したとなると、確か親の兄弟、そして親の親にも相続権が移ります。
もしあなたが遺産放棄する! となった際には、親御さんのご兄弟にもしっかり連絡してあげてくださいね。あなたから見た祖父母にも!
そうでないと、あなたが遺産放棄したなんて知らない伯父さん伯母さん祖父母たちが、いつの間にやら莫大な負の財産を相続してしまっていた――なんて事件が起こりかねません。
法的に、「そんなの知らなかった」では済まないのです。
少なくとも故人が亡くなったことを知っていて、葬儀まで参列したとなると「遺産の存在を知っている」ことになりますから!
そうして自らの意志で相続放棄の手続きをしなければ、自動的に「相続の意志あり」となります。
俺たちは放棄したから、これで安心だぜー! ではなく、せめて第二親等までは連絡してあげてください。
まあ、家族のどの辺りまで相続権があるという詳細は、実際に家庭裁判所で案内を聞くのが一番良いです。餅は餅屋にお任せ。私なんて所詮、素人ですから。
――とまあ、今の卯月家というか……私の状況はこんな感じですね。
母の死は色々な意味で強烈でしたが、弁護士さんのお話を聞いている内に段々と吹っ切れて、今はもう悲しみよりも「本当に、大変な置き土産を遺してくれたなあ……」という呆れと疲労が強いです。
あれだけ凹んでいた兄も、今では「一時期凹んだけど、やっぱり、ふざけんなと思うわ」と言えるくらいには回復 (?)しました。
姉も同様で、よく「なんでこんな面倒な死に方を~」と嘆きのメールを送って来ます。
彼らに至っては、ライフラインにしろ借金にしろ母に「支払いするから、お金貸して!」と騙され続けてきた訳ですからねえ。
余計に腹立たしいでしょう。「俺らはちゃんと支払ったつもりで居た」と。実際お金がどこに消えていたのかは――本人が居ないんじゃあ、確認しようがありません。
こんな親不孝というか、罰当たりなエッセイを書きましたが――気付けば明日は、母の月命日ですね! しっかり手を合わせようと思います。
執筆中、コメント欄で色々な家庭問題、心理や、それぞれが抱える問題などを目にして、不謹慎ながら「やっぱり他人の人生って、ある種ファンタジーだよなあ」と実感しました。
いやいや、実際に起こっていることですから、もちろんリアル、ノンフィクションなんですけれど――。
本当に色んな生き方、考え方、目線や価値観の違いがあって、「楽しいな」「勉強になるな」と思う訳です。
何せ中卒ですから、学ぶのが大好きなのです! 脳の記憶容量も、高校に行って勉強していない分、空き気味です(笑)
全編通して、なかなかに重たい内容だったかと存じますが、少しでもこう……卯月が笑って生きてるぐらいだから、自分もなんとかなるだろー! なんて、笑ってくださると幸いです。
今まさに家庭問題、借金で苦労されている方々には、ほんの少しでも勇気を与えられたら良いのですが……。
ついでに、ブラック企業に捕まっていっぱいいっぱいの方にも!
死ぬくらいなら逃げましょう! 逃げた先で何が起きたとしても、たぶん死んで終わらせるよりは楽しいんじゃないでしょうか?
まあ、楽なのは自死に違いありませんけれどね。でも意外と、「助けて」と声を上げれば手助けしてくれる人って多いんです。
それは友人かも知れないし、家族かも知れないし、何かの専門家かも知れません。
何度か指摘されましたが、恐らく私の家庭運は最悪に近いでしょう。
ただその代わり、家の外で出会う人の運には、かなり恵まれております。これだけは胸を張って言えます。
今一緒に住んでいる方については、一生このままかも知れないし、どこかのタイミングで別れるか、運が良ければ結婚するか――先の事は分かりません。お相手が口にする通り、まだまだ若いのでね!
入籍しなくても今のところ困っていませんが、重病や事故で緊急手術が必要になった時、他人のままでは同意書にサインできませんもんね……。
いずれ機を見て、「どうする、やっぱり結婚する?」と訊ねようと思います(笑)
私は散々姉のことをサイコパスと評しましたが、私自身も負けず劣らず精神病質気味です←
だから、こんな卯月とお付き合いくださる皆々様には、頭が上がりません。
それは、このネット小説界隈でも同様!
いつも私の物語を読んで下さり、感想まで下さり、本当に感謝感謝です。
これからも元気いっぱい、ちゃらんぽらんに執筆活動を続けていきますので、今後ともよろしくお願いいたします!
――では、またどこかの物語で!
卯月ましろの説明書~毒親の呪いと自己破産を乗り越えて~ 卯月ましろ@低浮上 @uzukimashiro
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