第2話流れられない痛み
「サオリ、さん……話あんだけど、来てくれる?」
放課後になり、椅子から腰を浮かせた私に冷淡な声が声を掛けてきた。
「……っと、——あっ……」
「何?何か言った、サオリさん?」
「……え、……ぅも」
「あっそ。じゃ、行こっか。サオリさん」
手荒く私の手首をひっ掴み、教室の外へと私を引っ張っていく多塚舞衣。
抵抗しようにも身体に力が入らない。
もう死にたい、この世から消えてなくなりたい、こんなに辛いことが続くなら……
顔も上げられない、瞼が上がらない、声を出せない……
だって、彼女の——多塚の顔を見たら、生きて帰れそうにないから。
廊下のつきあたりに着いたらしく、彼女が足を止め、私を壁に突き飛ばした。
彼女に突き飛ばされた私は、壁に激しく衝突して身体中に痛みが走り、床に倒れて呻く。
「ぁぁっ、ぃたぁ……あぁぅ、ぅう……」
彼女と彼女の取り巻きの女子が罵声を浴びせてくる。
その際に、頬に彼女から何度も平手打ちをうける。
彼女らのストレスの捌け口にされ、身体はボロボロで疲労困憊になり精神面は既に崩壊しかけている。
身体のところどころに刻まれた青痣は増え続ける一方だ。
制服で隠れる箇所を集中して狙うので、タチが悪い。
クラスメイトや教師らは、見て見ぬふりで手を差し伸ばそうともしない。
多塚が率いる女子グループは教師に噛み付くほどの凶暴で有名な連中らだ。
多塚以外は、一人だと非行に走れない典型的な臆病者の腰抜けだ。
多塚の容赦のない蹴りが腹を抉っていく。
意識が徐々に薄れて、朦朧としてくる。口内に鉄の味が広がりつつあった。
もうぅ、わた、しはぁ……
そこで、意識が途切れた。
好きになるはずなんてないのに 闇野ゆかい @kouyann
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