好きになるはずなんてないのに
闇野ゆかい
第1話暗闇が続いていた先に
髪が靡くほどの風は吹いていなかった。
此処は居心地が良い······けれど、今はそう感じることはなかった。
陽射しの熱を吸収したコンクリートはスカート越しでも熱いと感じるほどだった。
校舎の屋上、転落防止用に設置されている手すりに背中をちょこっとつけ、体育座りの体勢で顔を埋め、膝を抱えていた私。
グスッグスッと泣き続けていた。
ポタポタと零れた涙がコンクリートを黒く染めていく。
なんで······なんで、なの······気に障るようなことなんてしてないのに······
私がナニをしたっていうの······教えてよっっ、誰かぁぁぁ······
私の叫びは誰にも届かない······私には誰も──。
「こぉ~んなとこで、なにしてんすか?せぇ~んぱい。いじめられたんすか······」
扉付近から飄々とした軽い声音でこう訊ねられた。
泣き腫らした顔を見られでもしたら、これ以上にからかわれるだろう。それは避けたい。
顔を上げられずに返事すら返さずにいた私に、声を掛けてきた人物と思われる足音が近づいてきて、私に触れられる距離まで近付くと足を止め屈んだその人。
「泣いてる女子を傷付けるようなことはしませんよ。安心してください。良ければ、放課後に体育館に来てください。気晴らしになると思うので」
さきほどとはうって変わり、私に寄り添うような優しい声音で声を掛けながら頭を撫でてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます