好きになるはずなんてないのに

闇野ゆかい

第1話暗闇が続いていた先に

髪が靡くほどの風は吹いていなかった。


此処は居心地が良い······けれど、今はそう感じることはなかった。


陽射しの熱を吸収したコンクリートはスカート越しでも熱いと感じるほどだった。

校舎の屋上、転落防止用に設置されている手すりに背中をちょこっとつけ、体育座りの体勢で顔を埋め、膝を抱えていた私。

グスッグスッと泣き続けていた。

ポタポタと零れた涙がコンクリートを黒く染めていく。


なんで······なんで、なの······気に障るようなことなんてしてないのに······


私がナニをしたっていうの······教えてよっっ、誰かぁぁぁ······


私の叫びは誰にも届かない······私には誰も──。


「こぉ~んなとこで、なにしてんすか?せぇ~んぱい。いじめられたんすか······」


扉付近から飄々とした軽い声音でこう訊ねられた。


泣き腫らした顔を見られでもしたら、これ以上にからかわれるだろう。それは避けたい。


顔を上げられずに返事すら返さずにいた私に、声を掛けてきた人物と思われる足音が近づいてきて、私に触れられる距離まで近付くと足を止め屈んだその人。

「泣いてる女子を傷付けるようなことはしませんよ。安心してください。良ければ、放課後に体育館に来てください。気晴らしになると思うので」

さきほどとはうって変わり、私に寄り添うような優しい声音で声を掛けながら頭を撫でてくれた。

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