第7話 休題 優しい日(愚かしいほど短め)

 俺が目を覚ますと、頬にベタベタと触ってくる感触が、俺の脳に伝わってくる。こんなことをするのは目の前に一人しかいない。


 「おはよう、明日香。」


 「あ、お、おはよう…。」


 俺が挨拶をすると明日香は目に見えて落ち込む。そんなに触ってたかったのか?


 シュンとした明日香の頬を撫でながら、俺は言う。


 「触りたいのならいくらでも触って良いぞ。俺は明日香のものだ。」


 「そ、そうか……ならお言葉に甘えて…。」


 そう言うと明日香は、俺の頬をさわさわといった感じで、触り始めた。


 気持ちいい。明日香に触られてると頭が真っ白になって、無心になれる。


 そういえば時間は、っと。

 俺が時計を見ると時刻は、12時を回っていた。学校が平常通りなら、今頃4時間目だろう。


 「学校、今日は休みだな。」


 「そうだな。あんなことをしたのに休むなんて、私たちは不良だな。」


 「その割にはにやけてるけど?」


 「わかるだろ。好きな人と一緒になれたんだ。幼馴染としてではなくて、恋人としてだ。」


 俺も同じだ。ずっと好きだった明日香と一緒になれた。生きてきた中で、何よりもうれしいことだ。


 「よし!体洗って、換気して、ご飯食べよう!寝てたとはいえ、腹減ったわ。」


 「そうだな。私は後でいいから、リクは先に入ってきてくれ。」


 「明日香はどうすんの?」


 「もう少し、余韻に浸っていたい。」


 「分かった。」


 そう言うと俺は、風呂場に向かっていった。


 昨日の明日香は一言でいうなら、誰よりもかわいかった。そして気持ちよかった。

 自分に嗜虐思考が少しだけあって、自分にはドン引きしてるが…。


 まあ、なんだかんだ休み休みし続けて、二人が寝入ったのは朝方の4時だった。これでは適正時間に起きれまい。学校へ欠席の連絡をしていないが、良いだろう。


 誰も気にしてねえだろ。


 そんなことを考えつつ、俺が寝室に戻ると、明日香が顔を赤らめながら掛布団を抱きしめていた。


 「明日香ー、上がったぞー」


 「うひゃあ!わ、分かった。すぐに入る。」


 奇声を上げた明日香は、そのままスタスタと浴室に入っていった。


 俺は、明日香が入っている間に昨日コンビニで買ってきた、惣菜や弁当を机の上に並べて置いた。


 ちなみに、コンビニで「こういう時くらいカップラーメンでもいいんじゃない?」って言ったら

 「リクには健康でいて欲しいから、コンビニの弁当でも、野菜とかはちゃんと食べて欲しい。」

 と言われたので、すぐさまカップラーメンを棚に戻し、弁当棚のところでサラダや野菜の惣菜を持ってきた。


 配膳が終わって、ぼーっとしていると、後ろから優しく抱き着かれる。


 「好きだ、リク」


 「ひう…!」


 耳元でそういう事を囁かれるとむずかゆくて仕方ないよ。


 「明日香、不意打ちはちょっと…。」


 そう言って振り返ると―――


 「そう……か、それなら成功だな…。」


 顔を真っ赤にしている明日香がいた。


 「恥ずかしいならするなよ。」


 「いつもリクが好きって言ってくれるから、私も言いたくて…。」


 「明日香みたいな美人がやると、一瞬で心を奪われるから、やるなら二人きりの時にして。」


 「わ、分かった…。また、二人きりの時に…。」


 そう言いながら、明日香も席に着席して、昼ご飯を食べ始める。

 最近は色々あったが、この時だけは心が休まったような気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アルケミスト・レクイエム 波多見錘 @hatamisui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ