再愁話:巻き戻る時間

 ――なにきたのか、理解りかい出来できない。ここはどこだろう。しろ空間くうかん。どこをいても、なにい。


 ――いやうそだ。かる。……これは多分たぶんわたし情能力じょうのうりょく暴走ぼうそうだ。


 ――意識いしきはしっかりしているのに、自分じぶん認識にんしきすることは出来ない。移動いどう……という概念がいねんただしいのかからないけど、それはできる。だけど、自分じぶんいまどこにるのかは、からない。


 ――こわい……。わたしはどうなってしまったんだろう……。どうなってしまうんだろう……。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――何日なんにちったんだろう。いや、何週間なんしゅうかん? 何ヶ月間なんかげつかん? 何年間なんねんかん? あれからずっと、移動いどうつづけている。すごくなが時間じかんったような、全然ぜんぜんっていないような、不思議ふしぎ感覚かんかくでずっといた。グレンはどうなったのだろう……。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――さらに時間じかんが過ぎ《す》ていった。ふと、なつかしさにつつまれる。姿すがたえないが、おにいちゃんの気配けはいがする。


 ――きっと多分たぶんわたしのせいでおにいちゃんまでまれたんだろう……。


 ――ごめんなさい。おにいちゃん。


「トリシュナのこえこえたがした……」


 ――っ!? おにいちゃんのこえだ!! 間違まちがいない。はっきりとこえる。


 ――……こんなつもりじゃ、かったの。ただ、グレンをすくいたかっただけだった……。


「こんなつもり?」


 ――会話かいわになっている。本物ほんもののおにいちゃんなのか、わたしさちしいとおもいがつくげた虚像きょぞうなのかはからないけど、それでもずっと一人ひとりつづいていたから、このおにいちゃんの存在感そんざいかんこころそこからすくわれる。


 ――うん。あっ、もちろんおにいちゃんもたすけたかった。

 ――……あのとき、……グレンをこのしたあのとき、おにいちゃんのかおかんだ……。


「それはこのさいどうでもいい。この状態じょうたいはどういうことなんだ?」


 ――わからない……。わたしおしえてしいくらいだよ……。

 ――わかることは、わたし情能力じょうのうりょくのせいでおにいちゃんは、この空間くうかんんたましいとらわれてしまったってこと……。わたしがきっとここへったってこと……。本当ほんとうにごめんなさい……。



 ――…………。



 ――…………。



 ――……あれ? おにいちゃん?

 ――おにいちゃんのこえこえなくなっちゃった……。おにいちゃんの気配けはいえちゃった……。

 ――おにいちゃん…………。


 その瞬間しゅんかんまえにヒビがはいった。


 ――え!? なに!?


 ヒビからどんどんとくずれていき、ずっとしろかっただけの空間くうかん薄墨うすずみあかからオレンジへのグラデーション、ぎん次々つぎつぎいろはいってくる。


 あめよるくろ装束しょうぞくて、短刀たんとうかまえるものじゅうけんった兵士へいしのようなものつえりかざす魔術師まじゅつしのような者達ものたちが、おおきな屋敷やしき攻撃こうげきしていた。屋敷やしきからはメイドふくにつけた者達ものたち応戦おうせんしている。


 ――え、これは……なに!? ……でも、なんっているようなが……する……。


 場面ばめん転換てんかんきる。


 ――あれは……わたし? ……それと、ママ? ……パパ? ……あと、ユウ? これは……これは多分たぶん……。

 これはわたし記憶きおくにはのこっていない。……いやおもせない、封印ふういんされた過去かこ記憶きおく――。


 こうしてていても記憶きおくよみがえることはない。一体いったいわたしになにがあったのだろう――。


 〜第二章へ続く〜

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Endpoint OF Feelings 秋野 瑞稀 @mizuki_akino

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